データプライバシーおよびセキュリティ
メールマーケティング担当者がAppleのメールプライバシー保護機能に対応するための方法9選
メール関連のお仕事をされている方であれば、Apple社がIOS15でプライバシーに関するアップデートを行うこと、そして、それがメールマーケティングにどのような影響を与えるかを耳にされたと思います。このアップデートでは、メールに含まれるトラッキング・ピクセルの表示方法に変更が加えられる予定です。
トラッキング・ピクセルとは、メールの下部に配置された1x1の不可視画像のことで、その読み込みを検知して、メッセージの開封状況や受信者の情報を収集することができます。
Appleが発表した内容によると、ユーザーがメッセージを開封する前にバックグラウンドで画像を事前にダウンロードし、プロキシを使用して受信者の詳細を隠すことができるようになるようです。これにより、開封数がAppleメールユーザーによって自動的に記録されるため、今後のメール送信者の開封数は増加する可能性があります。
マーケティング担当者は、このことがメールの評価基準にどのような影響を与えるのか、配信能力に悪影響を及ぼす可能性はないのかと心配することでしょう。しかし、慌てる前にいくつか注目すべきポイントがあります。
1.開封率はユーザーのエンゲージメントを測定するための情報として、完全に信頼できるものではない
実は、以前からトラッキング・ピクセルをダウンロードせずにメールを開くこともあり得ました。これは、Gmailがサイズに応じてメッセージを切り取る場合や、画像がデフォルトでオフになっている場合、またはメッセージがスパムフォルダに入っている場合などに起こります。
一方、ユーザーが実際には開封していないにもかかわらず、メールの開封が報告されることもあります。例えば、受信者が受信箱を閲覧する際にメッセージを閲覧し、削除し、自動的に次のメッセージを閲覧した場合、メッセージを開封したことになります。この場合は意図的に開封したわけではないのに、開封したものとしてカウントされます。
また、一部のメールクライアントは画像を事前に取り込んでしまうため、受信者が何もしていないのに開封した、と報告されることがあります。
開封は、ユーザーのエンゲージメントを示すための1つの可能性に過ぎないのです。また、メールボックスプロバイダーは無数の要因に基づいてエンゲージメントを判断するため、開封されたトラッキング・ピクセルは、送信者とそのESPのみが使用すること、受信トレイの配置には影響しないことも知っておくべきでしょう。
2.開封率のチェック以外にも、ユーザーのエンゲージメントを追跡するための方法が存在する
プライバシーアップデート後も、クリック数やコンバージョン数は引き続き確認でき、これらの指標は購読者の興味を示すより強い指標となります。
メールの開封率はメールプログラムの「vanity metrics (虚栄の指標)」です。それに惑わされることなく、改めてメールマーケティングの目標を再設定することをおすすめします。
メールの開封率がメールプログラムの成功の真の尺度であったことは、まずないと言ってよいでしょう。だからこそ、何が重要なのか、どうすればその目標を達成できるのかに焦点を当てる絶好の機会なのです。
メールをクリックしてウェブサイトに移動してもらいたいのであれば、より適切なCTA(行動喚起)を作りましょう。購入してもらいたいのであれば、「メールを開封した」という行動だけでなく、パーソナライズされた情報に基づいて、より関連性の高い提案をすることが必要です。
クリック数などのポジティブな指標に加えて、スパム報告にも注意してください。受信者がメールをスパムとして報告することは、何か問題が起きていることを示す非常に強いサインであり、メールボックスプロバイダーが特に重視するものでもあります。
3.購読プロセスを利用して、ユーザー情報を自主的に収集する
潜在顧客がメールを通じて提供してくれる情報には非常に大きな価値があります。そこで、登録の際には、単にメールアドレスを聞くだけではなく、どのようなテーマに興味があるのか、どのくらいの頻度でメールを受け取りたいのか、興味がなくなった時の通知方法などを選択してもらいましょう。
Appleの新しいアップデートにより、透明性はこれまで以上に重要になりました。ユーザーが自分のプライバシーを重視している場合、自分が好きなブランドからの適切なメッセージを受け取るためには、必要な情報を提供してくれるはずです。
そのうえで今後も開封率を重視したいと考える方は、Appleのメール以外でメッセージを確認し、プライバシー保護機能をオフにしてもらうようユーザーに依頼してください。
4.より多くのコンバージョンを促すために工夫する
配信する際重要なのは、魅力的で関連性の高いコンテンツを、本当に必要としている人に送ること。メールに興味のない人を特定し、定期的に削除することは、スパムフォルダに入れられることを避けるための主要な方法なのです。
これまでは、メールの開封率でユーザーをセグメント化し、一定期間メールを開封していない削除を削除することが推奨されてきました。同様に、ユーザーの中で最もエンゲージメントの高い人を特定してターゲットにすることも重要なポイントとされてきました。
しかし「開封率」に対する信頼性が低下している現在、クリック数はユーザーのエンゲージメントを示すよりも信頼できる指標となります。商品の販売を目的としたメールキャンペーンでは、商品ページへのクリックが開封の代わりとなります。
ただ、単に情報提供を目的としたメールキャンペーンの場合は、ウェブサイト(または他の場所)へ誘導する「詳細を見る」リンクを貼ることが重要です。それにより、ユーザーが購入や詳細情報の提供を必要としていなかったとしても、高いエンゲージメントを示す行動を取るよう、仕向けることができます。
開封数ではなくクリック数でユーザーをセグメント化することで、エンゲージメントをより明確に把握でき、健全な配信に向けたセグメント化を促進できるのです
5.メッセージ内でのフィードバックオプションを活用する
メッセージ内にユーザーがワンクリックで意見を言えるようにする(サムアップ・サムダウンの評価システムや、感情を表現するアイコンなど)ことで、エンゲージメントの把握だけでなく、コンテンツ決定にも役立ちます。
回答に関連するクリック数も明らかになるほか、満足しているユーザーとブランドとの関係性を強化し、マイナスの評価を下したユーザーには別の情報を提供するメッセージングストリームを作成することもできます。
6.アプリやサイトのエンゲージメントをメール固有の指標で表す時、特にオプトインプロセスが曖昧な場合には慎重な判断が必要
購読者のエンゲージメントを判断するために、ウェブサイトへの訪問、購入、アプリの使用など、外部での行動についての情報を考慮する方は多いでしょう。しかし、これらは必ずしもメール受信への関心を示しているわけではありません。
例えブランドを高評価していたとしても、マーケティングメールには興味がない、ということは十分にあり得ます。
マーケティングメールを送信するために正式に許可を得ているユーザーは、ウェブサイトの利用規約への同意や、アプリでのアカウント登録などのように、「購読」を他のプロセスの一部と見なしているユーザーよりも良い結果を得る傾向があります。
自動的にメーリングリストに登録され、アプリ内でアクティブであるにもかかわらずキャンペーンをクリックしないユーザーは、他の場所でのエンゲージメントにかかわらず、エンゲージメントされていないユーザーであると考えるべきです。
メールはすべてのユーザーに適したチャネルではありません。他のチャネルでのメッセージを好む人にメールを送信してしまうと(または全く送信しないと)、ブランドの評判にマイナスの影響を与える可能性があります。
7.プリファレンスセンターでユーザーに情報を提供してもらう
開封率を指標と見なさない場合、これまで以上に力を入れてユーザーの興味を測る必要があります。特に、販売やクリック以外を目的としたメールを送信していない場合はなおさらです。
今後もできるだけユーザーを維持するために、受信するメールの種類や頻度を細かく管理できるプリファレンスセンターが重要になります。
メール内に、ユーザーがプリファレンスセンターへの情報提供を誘導するリンクの挿入を検討してください。この場合、プリファレンスセンターへのリンクは、メールのフッターにある「配信停止」リンクの近くに設けるのが一般的ですが、より誘導を強化したい場合は、定期的にメール配信オプションのメニューをお知らせすることも検討してみてください。
8.ユーザーに事情を説明し、今のうちにメールの力を活用する
Appleのセキュリティアップデートは秋まで予定されていないため、対策を講じるにはまだ数ヶ月間の猶予が残されています。
必ず効果があるとは言い切れませんが、これまで築き上げてきたユーザーとの関係を利用して、効果的なメール配信に影響を与える可能性のあるセキュリティアップデートについて通知する絶好のチャンスと言えるでしょう。
キャンペーンや別のチャネル(アプリ内メッセージやプッシュ通知など)を通じて、セキュリティアップデートに対応するための計画をユーザーに通知することで、ブランドへの信頼感や現状への理解が深まる可能性があります。
ユーザーのデータが使用されているという状況を不安視させず、ユーザーの好みに基づいた情報を提供することで、ユーザーのプライバシーを尊重しながらブランド体験をより価値のあるものにできるのです。
9.ポイント、割引、早期アクセスなどでエンゲージメントを促す
ユーザーは、過去に要求されたことのないデータを提供することに抵抗があるかもしれません。そのため、メールによるアンケートに答えてもらったり、特別なリンクをクリックしてもらったりしたユーザーは、ポイント・割引・早期アクセスなどの特典が受けられるようにし、なるべく不安を取り除いてあげましょう。
収集したデータは、今後のアウトリーチに役立ちます。また、メールによるエンゲージメントは、メールボックスプロバイダーからのポジティブな評価にも役立ちます。
まとめ
Appleのセキュリティアップデートが、メールマーケティングに新たな問題をもたらす可能性が高いのは事実です。しかし、現在使用しているメールのベストプラクティスも同様に重要です。
結局のところ、メールの配信は、必要なメールを望む人々に届けることが重要です。今回のセキュリティアップデートは、「必要なメールを望む人々」の特定に役立てるチャンスです。ユーザーを細かく分類することで、リソースの無駄遣い減少や、ROI(費用対効果)向上など、メールの送信者もメリットを得られるでしょう。
*本コンテンツはこちらの原文を翻訳・リライトしたものです。
アリソン・グーティー
Brazeの配信エキスパートチームの一員。靴、イヤリング、枕の収集が趣味で、座右の銘は"too much is never enough....except when it comes to send email "。