CASE STUDY


語学教育の老舗アルクが新人マーケター中心のBraze運用を通し、語学学習アプリの有料転換率を伸長
1.5倍 有料サービスの売上

課題


顧客管理がサービス別に行われていた関係上、学習者の履歴が追えず、パーソナライズされた学習提案や有料サービスへの誘導が困難でした。また、サービス別のマーケティングは、ノウハウ共有が難しく、社内に知見が共有されにくいという課題にもつながっていました。

戦略


まず取り組んだのは、それぞれ特色を持つ複数の語学学習アプリおよびWebサービスのユーザー情報の統合でした。学習者とのリアルタイムコミュニケーションを重視し、基盤にはBrazeを採用。さらに新卒採用者を中心に専門チームを立ち上げ、コンテンツの垣根を越えたマーケティングを行うことにしました。

成果


ファネルに基づくカスタマージャーニーが描けるようになったことで、有料ユーザー数が確実に伸長。また無料アプリをインストール後、即座にパーソナライズされたコミュニケーションが行えるようになったことで、その後の日別アクティブユーザー数の減少も大幅に改善されました。

アルクの事業概要を教えてください。

 1969年の創業以来、55年にわたり語学教育と共に歩んできたアルクの名前を聞いて思い浮かべるイメージは、おそらく世代によって異なるはずです。ある方は累計570万部を発行した「キクタン」シリーズ、またある方は、1982年から2022年の間に延べ120万人以上が受講した通信講座「1000時間ヒアリングマラソン」を連想するかもしれません。創業以来、「使うための語学」を提唱し続け、日本の語学教育をリードする存在であり続けてきたと自負しています。

一方で現在、語学教育は書籍ベースの従来の学習法だけでなく、アプリなどのデジタル学習が選択される比率も高まっています。当社は2020年に経営陣が入れ替わりましたが、現体制が打ち出す「もっと語学教育を身近に」、「もっと語学教育でワクワクしてほしい」」という考えのもと、当社はこれまで同様、定評ある語学教育コンテンツの開発を推進する一方で、デジタル領域における新たな挑戦にも積極的に取り組んでいます。

デジタル領域の取り組みを具体的に教えてください。

その一例が2023年7月に配信を開始した、ディズニー初の大人向け英語学習アプリ 「ディズニー ファンタスピーク」です。こちらは基本無料で、ビギナー層の英語学習習慣化のサポートが主な役割です。また、語学学習アプリ「booco(ブーコ)」は、アルクの人気書籍がスマホで読め、音声コンテンツがダウンロードできるサービスです。ベストセラーシリーズ「キクタン」をはじめ、120万人以上の受講者が利用した通信講座「1000時間ヒアリングマラソン」にも対応しています。さらに、AIが効率的なTOEIC対策をサポートする「Santaアルク」は、就職やキャリアアップを目的とした学習者に好評です。

近年、語学学習教材の選択肢はとても幅広いのですが、必ずしも良質なコンテンツばかりではないのが現実です。特にビギナー層の方の場合、コンテンツの質を判断するのは難しく、その答えは一定期間学習を続けた後に実力がついたかどうかで判断するほかありません。それだけに、定評ある当社の語学学習コンテンツに基づくアルクのアプリの魅力を、語学学習者の皆様に的確に伝えていくことは重要な課題の一つと考えています。

Edtech事業部 部長 木島 聖斗氏


語学学習アプリのマーケティングにおいて重視するポイントは?

 語学学習者一人ひとりにどのような「ベネフィット」を提供できるかという点が、最も大切になると考えています。「ディズニー ファンタスピーク」や「booco」はあくまでその手段に過ぎません。アプリが提供する語学学習コンテンツと、「就職・転職活動に役立てたい」「海外に移住したい」など、学習者のライフスタイルを、線として繋いで捉えていくことが大切になるのではないでしょうか。

ライフスタイルまで目を向けたマーケティングを実践する上で直面した課題を教えてください。

 特に大きかったのは、これまでサービスごとに顧客情報を管理してきたため、サービス間の顧客情報の連携が図られてこなかった点でした。boocoをインストールするユーザーの目的は多種多様です。中にはTOEICスコア向上を目指す方もいらっしゃいますが、各サービスの連携が図られていないため「Santaアルク」への効果的な誘導が図られていなかったことはその一例です。またマーケティング施策を各プロダクト担当者が独自に行う状況のせいで、ナレッジやノウハウの全社的な共有が困難になっていました。学習者一人ひとりにベネフィットを提供する上で、こうした環境を全面的に見直す必要があると判断しました。


新マーケティング基盤としてBrazeを選択した理由は?


新たな基盤構築にあたり、最も重視したのは、これまで各プロダクトの担当者個人に蓄積されていた知見を、チームとしてスムーズに共有できるようにする仕組みづくりでした。その観点から複数製品を比較検討した上で最終的に選定したのがBrazeでした。特にリアルタイムでデータが得られ、即座にコミュニケーションが図れる点を高く評価しています。そのほかLINEやShopifyなど外部ツールとのAPI連携がスムーズに行える柔軟性も複数のサービスを運営しているアルクにとって魅力的な点の一つでした。


導入/運用におけるBrazeの印象を教えてください。

導入は2023年3月にboocoから順次行いました。私自身こうしたツール導入を主導的に行う経験がなかったのですが、Braze担当者の手厚いサポートもあり、導入自体はとてもスムーズに進んだと感じています。以前はマーケティング部隊が存在しなかったこともあり、2023年の新卒採用者から7名のメンバーをEdtech事業部で預かり、マーケティングチームを新たに立ち上げ、同年春から実運用を開始しています。自身のタスクに追われ、新人スタッフの教育にまでなかなか手が回らないなか、強く感じたのはBrazeのGUIの優秀性でした。直感的に操作できるため、業務を通して知見が積み上げられ、今やBrazeに関して、私よりも新人スタッフの方が詳しくなっています。オンボーディングの充実も含め、こうした面でもBrazeを選んで良かったと思っています。

入社後、マーケティングチームでBrazeを運用する芳賀さんと後藤さんにその印象をお聞きしたいと思います。運用を学ぶ上で、どのような苦労がありましたか?

エンジニアに相談する必要もなく、直感的な操作でさまざまな施策が実行できるため、ツールとしてのBrazeの運用に関しては特に難しさを感じたことはありません。しかし有効な施策を打つには、マーケティング能力に加え、社内外の様々な知識が必要です。そういう意味ではやはり難しさも多かったと思います。

もちろんやりがいも感じています。最初に担当したのはプッシュ通知を送るという施策でしたが、自分が考えた文章がアプリを通して多くの人に届いていることが実感でき、本当にワクワクしました。

EdTech事業部 マーケティングチーム 後藤 ゆめ氏


Brazeの運用で意識しているポイントを教えてください。

学習アプリのマーケティングは有料ユーザーを増やすことが最終的なゴールになります。そのため当初は課金フェーズを強く意識し、Brazeのキャンバスや複数のアプリ内メッセージ、A/Bテストなどいろいろ施策を試してきたのですが、次第に無料アプリをインストールしたユーザーをどうすれば有料プランに導けるかを強く意識するようになりました。課金をゴールにしたファネルを想定し、どの段階で離脱が生じているかを分析した上で、それぞれのタイミングに応じたメッセージの配信やプッシュ通知を増やす取り組みはその一例です。学習者のジャーニーを意識した施策を打つことで、次第に成果が現れはじめていることを感じています。

EdTech事業部 マーケティングチーム 芳賀 鈴花氏
Braze キャンバスの使用例

導入効果を教えてください。


例えばboocoの場合、1カ月平均で3.5万ほどのアプリDL数があり、有料転換率は以前の0.7%から1.1~1.44%に伸びています。数字としてはわずかですが、母数の大きさもあり1カ月の売上額は1.5倍に伸長しています。

また当社ははじめからからDL1週間後のDAU(デイリー・アクティブ・ユーザー)の定着率を重視しています。特にBrazeで施策を実施する前の課題はインストール翌日の継続率が改善されないことでした。以前はインストール翌日の定着率が、30%前半だったのに対し、ここ数か月のデータでは、41%に推移し、約17%改善しています。その結果、施策実施前よりもboocoで学習を継続するユーザー数を改善することができました。

語学学習の目的は、TOEIC受験や会話能力の向上、自己研鑽など様々です。以前は、学習者がどんな目的でアプリをDLしたかを把握することは難しかったのですが、今はユーザーデータを活用することでパーソナライズされた形で最適なアプリが提案できるようになりました。Braze導入により、我々の顧客像が具体的に見えるようになったことの意義は大きいと思います。


今後の展開を教えてください。

当社のWebベースサービスで最も知名度が高いのは、英和・和英対訳データベース「英辞郎」をオンラインで無料利用できる「英辞郎 on the WEB」かもしれません。今後は「英辞郎 on the WEB」を起点としたアプリ誘導も行いたいと考えています。またアルクの売上で一番大きな割合を占めているのは、実は今も書籍です。導入から1年余りが過ぎ、書籍を起点にデジタルに導く文脈はある程度確立できました。Brazeを活用し、オフラインの書店で販売されるアルクの書籍まで含め、当社のプラットフォーム活用の最大化を図ることがこれからの課題になると考えています。

Brazeは、アンケートやカスタマージャーニーの形成も直感的な操作で行えます。優れたGUIが新人スタッフ中心のチームが成果を挙げることができた理由の一つでした。


木島 聖斗氏

Edtech事業部 部長

アルクの成果

ファネルの段階に応じたコミュニケーションにより、有料転換率を確実に向上。分かりやすいGUIで新人でも無理なくマーケティング業務が行えた点も成果の一つでした。

1.5倍 有料サービスの売上
17% インストール翌日のDAU定着率