CASE STUDY


ECサイト運営のTUKURUが顧客セグメント別施策を実施し、離反顧客復帰率150%増を実現
55% イベントセールの売上増

課題


多様なニーズを持つ約180万のECサイト会員数を抱えているにも関わらず、画一的なマーケティング施策のみに終始していました。その結果、割引クーポンがなくとも購入してくれていたであろう顧客群にもクーポンを配布してしまい、利益の目減りが発生していました。またマルチチャネルでのアプローチもできていませんでした。

戦略


特に注力したのがBtoB向けの「販売促進」。顧客をセグメント分けし、キャンバス機能でシナリオを設定。離反顧客へは割引クーポンを配信し、常連顧客には提案型の商品案内を行うなど、顧客群に応じた有効なアプローチをマルチチャネルで実施しました。またハロウィンイベントセール時には、ユーザー行動に応じたプロモーション施策も展開しました。

成果


顧客セグメントに応じた、パーソナライズされた施策の実施により、離反顧客の復帰率は前年比150%増。また、ハロウィンイベントセールの売上額は前年比55%増、購入者数は前年比30.4%増に向上しました。そのほか、BrazeのLINE配信のベータ版を使い、LINE販促費の最適化にも取り組んでいます。

TUKURU(ツクル)の事業の概要を教えてください。

 製菓・製パン材料やラッピング資材などを取り扱う、一般消費者向けECサイト「cotta(コッタ)」および法人向けECサイト「cotta business(コッタビジネス)」を運営しています。両ECサイト合わせた月間PV数は3,000万PV弱で、会員数は個人が約171万人、法人はスモールビジネス事業者を中心に約9万社に上ります(2024年10月現在)。

当社のサービスの特長は、通常では問屋が卸さない小ロットで商品を提供している点です。また、取扱商品は3万点を越え、別注サービスにも対応しています。コロナ禍以降にオンラインショップを立ち上げてお菓子・パン作りを楽しむ個人や、コンビニやチェーン店に負けないオリジナリティの高い商品を販売したい法人のニーズに応えています。

なお、当社の親会社は東証グロース市場上場の株式会社cottaです。当社は約40名でECサイトの運営・マーケティング活動全般を担当しているのに対し、親会社はECサイトの物流管理やコールセンター業務などを担っています。

株式会社cotta 株式会社TUKURU 取締役 黒須 則彦氏
株式会社cotta 株式会社TUKURU 取締役 黒須 則彦氏


Braze導入前、マーケティング活動においてどのような課題を抱えていましたか?

当社は個人・法人合わせて約180万のECサイト会員を抱えています。多様なニーズを持つ会員が180万もいる一方で、これまでのマーケティング活動は「500円割引クーポンを会員全員へ配布する」といった、画一的な施策のみに終始していました。つまり、顧客セグメントに基づいたマーケティング施策を展開できていなかったのです。そのため、結果的に例え割引がなくとも商品を購入したであろう顧客群へも割引クーポンを配布していたことになり、粗利の毀損が発生していました。

従来使用していたCRMツールは、メール以外のチャネルでユーザー接点を得るためには機能拡張が必要であり、少なくないコストが発生する仕組みでした。加えて、操作性が複雑で、使いこなすためには一定のスキルが求められました。ツール自体のコストと運用コストの両面で、当社にとって負担の大きいCRMツールだったと言えます。そこで、マーケティング活動の幅を広げるため、当社に最適なツールの見直し・導入が必要だと判断しました。


従来使用していたCRMツールからBrazeへの移行はスムーズにできたのでしょうか。

従来使用していたCRMツールからBrazeへの以降は約3カ月と、非常にスムーズでした。ベンダーを介さず、Braze社と当社の担当者間で直接やり取りできたため、業務負荷も最小限に抑えられました。データ連係の不備もありませんでしたね。導入後も、MAツールを使った経験がなかった担当者がすぐにBrazeを使いこなせるようになるなど、移行・導入・導入後の運用、どの工程においてもスムーズに進めることができました。

Brazeをどのように使われていますか。

主にBtoB向けに「プロモーション」「販売促進」「オンボーディング」の3つの用途で使用しています。このうち特に注力しているのが「販売促進」です。約9万社の法人会員を細かくセグメント化し、各セグメントの顧客群へメールやプッシュ通知、ポップアップなどマルチチャネルで効果的な販促メッセージを発信しています。

例えば、サイト未訪問顧客やサイト閲覧のみの顧客に対しては、キャンバス機能でメール開封の有無やサイト来訪履歴などの要素でシナリオを分岐させ、しつこくない程度に割引クーポンを配布したり、「あなたは大切なお客様です」といった特別感を演出したコンテンツカードを表示させたりしています。ポイントはシナリオを細かく分岐させ、とにかく当社からのメッセージをユーザーにリーチさせることです。こうした離反防止策により、2023年の離反顧客の復帰率は前年比130%増に向上しました。

株式会社TUKURU 法人マーケティング部 マネージャー 斉藤 みなみ氏
株式会社TUKURU 法人マーケティング部 マネージャー 斉藤 みなみ氏


Brazeを活用した具体的な施策とその成果を教えてください。

2023年のハロウィンセールでは、Brazeを用いてプロモーション施策を展開しました。具体的には、メールや紙媒体、ポップアップなどマルチチャネルでユーザー接点を創出し、ユーザーの行動に応じてアプローチを変化させていきました。

また、ハロウィンセールに関連した特集コンテンツを1~2本にまとめ、ページ閲覧の有無をBrazeに判定させました。その判定結果に応じたシナリオをキャンバス機能で細かく設定し、ユーザーへ確実にコンテンツを届けることを目指しました。

これらの施策により、売上額は前年比55%増、購入者数も前年比30.4%増という結果を出すことができました。このハロウィンセールの成功事例はクリスマスセールや春ギフトセールにも展開し、同様に成功を収めています。

クーポンのポップアップ例

Braze導入によるコスト面の効果はいかがでしょうか。

ツール自体のコストは、従来のCRMツールと比較して10%~20%程度削減できています。また、Brazeは操作性が非常に高く、専任の担当者を置かなくても、誰でも簡単に使いこなせるようになりました。そのため、人件費の削減にもつながっています。さらに、Braze導入前は、複数のツールを組み合わせて利用していましたが、Brazeに統合させました。その結果、ツールに掛かる費用を大幅に削減することができました。

販促費最適化の観点から、Brazeが新たに提供開始した「LINE公式アカウントへの配信」も利用しているそうですね。

これまで当社は、当社LINE公式アカウント登録者の個人会員10万人に対して、販促メッセージを配信していました。LINEメッセージ配信料金は1通あたり2円前後なので、仮に月4回配信すると月額80万円程度のLINE販促費が発生します。しかし、こうしたLINE販促施策が本当に売上に結びついているのか、見えづらい部分がありました。かといって、売上が落ちる危惧もあり配信を止める決断もできませんでした。

そこで、Brazeプラットフォーム上に新たなチャネルとして追加されたLINE公式アカウントへの配信を利用し、LINE販促費が合理的なのか検証を行っています。具体的には、当社LINE公式アカウントからのLINE配信数を減らし、その代わりBrazeからアカウント登録者のLINEへプッシュ通知を送ることで、売上とLINEメッセージ配信数の最適なバランスを見極めています。また、LINE配信がコンバージョンに結びついている顧客群と結びついていない顧客群を判別できるシナリオをキャンバス機能で作成することで、LINE配信をどれだけBrazeのマルチチャネル配信に移行できるのかについても検証中です。

検証は途中ですが、LINE配信が実購買にどの程度繋がっているのか、LINE経由の実売上・LINE経由でセッションがついているが、購入は実は別のセッションでついているなど実態が見えてきました。結果、LINEでしか作れない売上・LINE起点の売上・LINEは見ているがそれ以外でついている売上と細かく分析をかけており、LINE起点でのROAS・ROI算出を行い適切な予算配分を検討しております。


定性的にはどのような変化がありましたか。

マーケティング部としては「正しく販促費を使い、いかに粗利毀損を抑え、ビジネスを大きくするか」という意識が強くなりました。Brazeを導入したことで、顧客セグメント別に最適なマーケティング施策を打てるようになったからです。これまでの画一的な施策ではなく、離反復帰してもらいたい顧客へは割引クーポンをメール配布し、常連顧客へは売上拡大を狙った提案型のアプリ内メッセージを配信する、といった具合です。

そのほか、ユーザーボイスの可視化も進められています。例えば、一定年商以上の顧客に対しては日頃の発注方法等に関するヒアリングを行い、サイトリニューアル時の大方針の参考にさせていただきました。また、購入はしないものの定期的にサイトへ来訪している法人顧客へは、cotta businessの利用状況に関するアンケートを実施。その結果、販売価格に課題があることが判明し、上代(製造メーカーや卸元に設定する小売価格)の見直しの参考とすることができました。


今後のBraze活用の展望を教えてください。

これまでは主に単発的なBtoB向け施策を中心に展開してきましたが、今後はBrazeを用いた定常的な施策も実施し、LTV(顧客生涯価値)の向上を目指します。具体的には、顧客の誕生日や記念日に合わせたクーポン配信や、購入履歴に基づいたおすすめ商品の提案などを自動化し、顧客との長期的な関係構築を築いていきたいですね。また、BtoB向け施策で得られたノウハウを活かし、BtoC向けには、例えば、顧客の趣味嗜好に合わせたコンテンツ配信や、離反防止のためのキャンペーンなどを実施予定です。

さらに、AI活用も視野に入れています。例えば、Brazeのインテリジェントタイミングなどの機能を用いて、マーケティング部が描くカスタマージャーニーに沿った配信内容や配信スケジュールを実現できれば、より高度でパーソナライズされた販促アプローチが可能になると考えています。

Brazeの導入により、顧客セグメント別に最適なマーケティング施策を打てるようになった点は、当社にとって大きな革新です。また私はMAツール使用未経験でしたが、すぐにBrazeの操作に慣れることができました。


斉藤 みなみ氏

株式会社TUKURU 法人マーケティング部 マネージャー

TUKURUの効果

顧客セグメントを細かく分け、キャンバス機能を用いてそれぞれの顧客群へパーソナライズされたマーケティング施策を展開。販促費を有効に使うことで粗利毀損を抑え、売上を伸ばすことができました。

55% イベントセールの売上
150% 離反顧客の復帰率