なぜスタートアップはBrazeを選ぶのか? アソビュー、トリビュー、NearMeの活用事例と導入効果
本コンテンツは、2022年9月30日にMarkezineに掲載済みの記事の転載となります。
岡田 果子[著] / 高山 透[写] / MarkeZine編集部[編]
短期間で大きなビジネスグロースを追求するスタートアップ企業において、マーケティングのスピード感は大きな鍵を握る。アソビュー、トリビュー、NearMe(以下、ニアミー)の3社は、顧客エンゲージメントツール「Braze」の導入で、スピードとインパクトを両立したマーケティングを実践しているという。本記事では3社のマーケティング担当者とBrazeの初期導入支援の担当者を交え、Brazeの導入効果のほか、スピーディな施策展開と顧客エンゲージメント向上の秘訣を聞いた。
Braze活用で成長を加速したスタートアップ3社
MarkeZine編集部(以下、MZ):まずは、皆様が所属する企業の事業概要と、その中で担われているミッションについて伺えますか。
真弓(ニアミー):当社では移動の課題解決にフォーカスし、タクシーを使った移動のシェアサービス「スマートシャトル」を提供しています。私のミッションは、事業開発とマーケティングの責任者として事業グロースを追求することです。
大西(トリビュー):当社は美容医療の口コミ・予約サービス「トリビュー」を運営しています。美容医療とは美容領域の自由診療のことです。ユーザーは美容外科・美容皮膚科・審美歯科の分野において「体験者の口コミ検索」「施術検索」「価格比較」「クリニック検索」「オンライン相談・予約」をトリビュー上で完結できます。私は2021年に1人目のマーケティング担当者として入社し、事業グロースや新規顧客獲得のマーケティング、PRなど複数の役割を担っています。
岡村(アソビュー):当社は週末の便利でお得な遊び予約サイト「アソビュー!」や、観光・レジャー・文化施設様向けDX推進SaaS「ウラカタ」シリーズを展開しています。全国約9,000店舗の事業者と提携し、国内の遊び・体験プログラムを約600ジャンル・約26,000プラン紹介している点がアソビュー!の特徴です。私はアソビュー!のマーケティング担当者として、主に新規会員の獲得施策や既存会員向けのCRM施策を行っています。
太田(Braze):私は統合型カスタマーエンゲージメントプラットフォーム「Braze」の初期導入支援担当者として、お客様が実現されたい施策をヒアリングしながらプラットフォームの導入とオンボーディングをサポートしています。
グロースマーケティングにおけるCRMの重要性
MZ:スタートアップ企業では、大きな成長を短期間で実現することが求められると思います。そんなスタートアップ企業でマーケティング業務を担われる皆様に、CRMの重要性をお聞きしたいです。
真弓(ニアミー):事業グロースのためには、ユーザーに高い頻度でサービスを利用いただく必要があります。高頻度で利用してくださるファンになっていただくためには、1to1のコミュニケーションが不可欠。CRMは非常に重要と言えます。当社の事業は移動のサービスなので、ユーザーが動いた“適切なタイミング”で最適なコミュニケーションを取ることがCRMの大きなポイントです。
大西(トリビュー):当社の事業をグロースさせるにあたり、肝となるのはクリニックへの送客です。ユーザーの獲得だけでなく、クリニックでの予約・施術までつなげるために、CRMは重要だと考えています。以前は新規獲得に力を入れていたのですが、CRMに注力してからリピーターによる予約率が2倍に増え、全体での予約率も2.5倍に。CRMの重要性を数字でも実感しているところです。
岡村(アソビュー):私たちのようなスタートアップ企業は、限られたリソースで早い成長が求められます。当社でも初期フェーズは新規顧客の獲得施策に注力していましたが、ここ数年は継続的にサービスを利用いただくためのリピート施策を強化しており、CRMの重要性を感じています。
アソビュー!では遊園地や水族館といった定番おでかけスポットだけでなく、カラオケなどのエンタメを含めた多様な商品を扱っています。また、とっておきの旅行やレジャーから週末のおでかけまで、ゲストの求める遊びも様々です。事業グロースのためには、商品とゲストをいかに適切にマッチングするかが鍵となります。
リアルタイム性と圧倒的なコストパフォーマンスの高さが導入の決め手
MZ:Brazeを導入した背景について教えてください。
岡村(アソビュー):先に述べた通り「遊び」と一言でいっても種類や形態は様々です。多様なゲストの遊びのパターンに応じた施策を展開するにあたり、自社のリソースだけでは難しいと判断し、ツールの導入を検討し始めました。
岡村(アソビュー):ただ、約700万人の会員に向けてリアルタイムに情報を発信できるツールはそう多くありません。その点Brazeは瞬時に情報を出し分けられるリアルタイム性を備え、スケーラビリティもあるため導入に至りました。Brazeの導入前はメルマガの配信に数時間をかけていましたが、導入後は数秒で届けられるようになったんです。
大西(トリビュー):ユーザーに満足のいく美容医療体験をしていただくためには、ユーザーのジャーニーに沿ったパーソナライズが重要だと考えました。そのためにはアプリやWeb、メールなど複数のタッチポイントにおけるコミュニケーションを一元管理できなければなりません。
Brazeでは、複数チャネルのコミュニケーションを一括して分析できます。ジャーニーを描くためのログデータ分析や、ユーザーアンケートも実施しやすい。ユーザーの動きに応じたコミュニケーションも、リアルタイムのトリガー機能で実現できるため、以前使っていたツールから乗り換える形で導入しました。
真弓(ニアミー):当社の導入経緯は少し特殊で、Braze代表の菊地さんと当社の代表が知り合いだったんです。代表から直接「面白そうなツールがある」と提案されたものの、半年ほど比較検討。圧倒的にコストパフォーマンスが良かったのがBrazeでした。当社は移動の商材を扱っていることから、リアルタイムで正確なコミュニケーションがマストです。Brazeは機能面にも安心できたため、導入を決めました。
2週間のスピード実装や10%の口コミ増を達成
MZ:Brazeを活用して取り組んだ施策と、その成果についてお話しください。
真弓(ニアミー):Brazeさんの主催イベント「Forge Japan 2022」において、最寄り駅からイベント会場までの移動手段としてスマートシャトルを提供しました。リアルタイムのジオロケーションデータを活用し、アプリを入れた人が乗り場に近づくと「乗り場はこちらです」と案内が出る仕組みです。企画から2週間というハイスピードで実装できたのは、Brazeさんのサポートのおかげです。
大西(トリビュー):当社ではユーザーを5つに分け、各セグメントに合わせたコミュニケーションを実施しているのですが、施策の高速PDCAにBrazeを活用しています。Brazeの導入直後は70本のシナリオを用意して施策を実施。1週間で検証を行い、数字を見ながら改善を重ねました。
コミュニケーション施策は「配信数を増やせば効果が出る」という単純なものではありません。我々はBrazeを活用して口コミを促す施策の配信数を従来の4%まで押さえたにもかかわらず、口コミは10%増加。「ユーザーのアクションに応じた配信でこんなに結果が変わるのか」と驚きました。
岡村(アソビュー):当社がBrazeを導入したのは2022年7月1日でした。7月16~18日の3連休の行楽シーズンに間に合わせるため、導入からわずか2週間で稼働まで進みました。ゲストがおでかけスポットを閲覧後、予約の実行に至らず離脱してしまう、いわゆる“カゴ落ち”現象への打ち手として「検討中ですか?」といったフォローメールを配信し、3連休だけで数千件の予約を生み出すことができました。
スタートアップ企業においては、導入したツールの費用対効果をいかに早く出すかがポイントです。本音としてはジオロケーションを使ったかっこいい施策にもトライしたかったですが、ここは一旦泥臭く、最小工数での成果を目指しました。現在はページを見たユーザーへのメール配信機能や、メルマガの配信機能もBrazeへと移管を進めています。
マーケターは本分に集中!効率的なオンボーディング
MZ:新しいツールを導入する際は、社内への浸透もハードルになるかと思います。Brazeの浸透やオンボーディングはどう進められたのでしょうか。
大西(トリビュー):当社では、Brazeを活用することで従来のインセンティブ施策が不要になるなど、コストが目に見えて削減できたのです。明白な導入効果が社内メンバーの巻き込みやすさにつながったと感じています。
岡村(アソビュー):オンボーディングに際しては、オンボーディングプログラムをカスタマイズし、開始日が確定していたカゴ落ちフォロー施策を実現するための立ち上げを、太田さんに手厚くサポートいただけた点が大きかったです。
また導入に際し、最初からデザインリードやエンジニアマネージャーを巻き込んだ点もポイントかもしれません。彼らがBrazeを「おもちゃのように楽しく使えるツール」と捉えてくれたおかげで、社内にポジティブな雰囲気を醸成できました。現在は社員から「私にもアカウントをください」と言われるほどです(笑)。
真弓(ニアミー):Brazeの導入当初は「プロダクトの開発で手一杯なのに、マーケティングで新ツールを導入?」という消極的な雰囲気を感じていたものの、一度その便利さや効果の高さを社内のメンバーが味わえば「このツール良いよね」と風向きが変わりました。
MZ:太田さんは多くのスタートアップ企業に向けてBrazeの導入を支援されたと伺いました。クライアントのサポートにあたり、日ごろから意識されているポイントはありますか。
太田(Braze):スタートアップ企業の施策はとにかくスピードが命。「この商機を逃すわけにはいかない」という緊張感を我々も日々持ちながら、最短で目標を達成するための方法を一緒に考えるよう意識しています。また、マーケティングご担当者様の本分はシナリオ作成やクリエイティブの改善です。ツールの操作ではなく本分に集中していただけるよう、効率的なオンボーディングトレーニングも心掛けています。
大西(トリビュー):Brazeさんのテクニカルサポートは、こちらからの問い合わせに半日~1日で返信してくださるんです。回答内容も的確。サポートのスピード感と丁寧さに助けられています。
パーソナライズ施策の洗練を目指して
MZ:最後に、Brazeの活用と絡めて今後の展望をお聞かせください。
岡村(アソビュー):当社は顧客起点のマーケティングを大事にしています。ツールの使い勝手が良いとつい「Brazeを使って何かやりたい」と考えてしまいがちですが、注力すべきはお客様であるゲストに価値を届け、素敵な思い出をつくっていただくこと。課題意識はあったもののやりきれていなかった施策に、スピード感を持って取り組んでいくのが当面の目標です。ゆくゆくは、マルチチャネル配信やパーソナライズコミュニケーションの強化にも着手したいと考えています。
大西(トリビュー):我々も顧客体験を損なわないコミュニケーションが重要だと考えています。Brazeの「コンテンツカード」や「Liquid(リキッド)」という機能を活用すると、アプリでバナーの出し分けなどが可能になります。それらの機能を活用して、サービス内でユーザーが見たコンテンツに応じたコミュニケーション戦略を設計していきたいですね。
真弓(ニアミー):タクシーをシェアすることで、今までタクシーを使わなかった人たちにも使ってもらえるサービスにしたいです。将来的にはタクシーを第4の公共交通機関にしたいと考えています。その目標を達成するために、Brazeは必須のツールです。複数のプロダクトをまたいだ配信や、ジオロケーションを活用した施策などに役立てていくつもりです。人が移動する目的は様々。一人ひとりのユーザー行動に合わせたコンテンツを配信できるよう、最適化をさらに進めていきたいです。