アプリのオンボーディングはユーザーの離脱を防ぐために重要です。また、その理解には具体的なデザイン例の確認が役立ちます。
この記事では、アプリのオンボーディングの意味と重要性、デザイン例や実施のポイント、解決策となるITソリューションをご紹介します。
1. オンボーディングの意味
オンボーディングとは、組織やコミュニティに新たな仲間を迎え入れ順応させることを意味する用語です。英語の「on-board(乗り物に乗る人)」が由来とされており、船舶や飛行機の新人乗組員が研修を通じてクルーの一員となるように、新人が集団に馴染むまでのプロセスを指します。
ビジネスにおけるオンボーディングの意味は、分野によって多少の違いがあります。例えば人事分野では新入社員を自社に馴染ませることを意味しますが、カスタマーサクセス分野では、新規顧客が自社製品を使いこなせるように導くこと(自社ユーザーの仲間に迎え入れること)を表します。
2. アプリにおけるオンボーディングの意味
アプリにおけるオンボーディングの意味は、主に新規ユーザーが自社アプリを使いこなせるようにチュートリアルや初期解説、動機付けを行うことです。転じて、ユーザーがアプリの魅力を体感しやすい枠組みを作り、継続利用を促すための取り組みを指します。
例えば、アプリのインストール直後に始まる使い方のレッスンや、初回購入で使える割引クーポンの表示などがその代表例です。「自社アプリという乗り物からユーザーが降りてしまわないための施策」とイメージすると分かりやすいかもしれません。
3. アプリのオンボーディングの重要性
アプリのオンボーディングが重要視される理由には、ユーザーに自社アプリの価値を伝えられること、定着率を向上できること、コストを削減できることの3点が挙げられます。
1. ユーザーにアプリの価値を知ってもらえる
アプリのオンボーディングでは、ユーザーが自社アプリの魅力を速やかに体感できる仕組みを提供します。それにより、「インストール数は多いが新規ユーザーの大半がほとんど機能を試さないままに去り、アプリの価値を知ってもらえない」といった課題を解決できます。
2. ユーザーの離脱防止・定着率の向上に繋がる
継続的に利用するユーザーを増やすことは、アプリからの収益を安定して確保するための必須課題です。自社アプリの魅力を速やかに伝えることは、ユーザーの離脱防止と定着率の向上に結びつきます。
また、ユーザーの離脱率や定着率は、アプリ評価の重要指標の一つとして浸透しています。オンボーディングによる離脱率や定着率の改善は、自社アプリの価値を磨き上げていくための作業とも言い換えられます。
3. コストを抑えられる
アプリのオンボーディングでユーザーの定着率を高めることは、集客コストの節約にも寄与します。
「1:5の法則(新規顧客からの売上獲得は既存顧客と比べて5倍のコストがかかるとする法則)」で語られるように、新規顧客向けの販売施策には莫大なコストが必要であり、その負担はアプリ運営成功の大きな障害となります。オンボーディングで新規ユーザーを逃さない仕組みを作り、集客コストの節約と広告費用対効果の向上を目指すことで、予算面を理由としたアプリ運営の頓挫を防ぎやすくなります。
4. オンボーディングのUIデザイン例
ひと口に「アプリのオンボーディング」といっても、その実践方法はさまざまです。ここでは、アプリのオンボーディングで活用されるUIデザイン例をメリット・デメリットと共に見ていきましょう。
1. ウォークスルー型
ウォークスルー型とは、アプリの起動直後にスライドを表示して基本的な使い方や魅力を簡単に紹介する方式です。アプリのオンボーディングの代表例ともいえる手法で、「次へ」や「スキップ」などのボタンを押すまでスライドが消えず、自分のペースで確認できる形がよく採用されています。
【メリット】
ユーザーに対して確実に情報を提供できる
【デメリット】
強制的に表示されるためユーザーが不快に感じる恐れがある
2. コーチマーク型
コーチマーク型は、画面全体を暗くして説明したいアイコンやボタンのみを吹き出し付きで光らせるなど、画面内の要素を解説するための方式です。主に今の画面で行えるアクションを説明する目的で使用します。
【メリット】
どこを操作するべきなのかをひと目で分かるように伝えられる
【デメリット】
画面内に存在しない要素の説明はできない
表示が大がかりなためユーザーがストレスを感じる可能性がある
3. ツールチップ型
ツールチップ型は、画面内の説明したい要素に対して吹き出しを表示し、簡単な解説を行う方式です。コーチマーク型とよく似ていますが、コーチマーク型が画面全体を暗くするなど大がかりなのに対して、ツールチップ型はさり気なく情報を表示する形が一般的です。
【メリット】
どこを操作するべきなのかさり気なく解説できる
コーチマーク型よりもユーザーにストレスを与えにくい
【デメリット】
画面内に存在しない要素の説明はできない
4. パーソナライズ型
パーソナライズ型は、アプリの起動直後に多数のジャンルやカテゴリーを表示し、ユーザー自身に興味のあるものを選択してもらうデザインです。ニュースアプリや音楽配信アプリでよく活用されており、選択内容を元にユーザーが興味を抱きやすいコンテンツを表示することで、ユーザーの離脱を防ぎます。
【メリット】
ユーザーに最適化されたコンテンツを提供しやすくなる
【デメリット】
選択内容から適切なコンテンツを表示できるアルゴリズムが必要
選択肢が多すぎるとユーザーが負担に感じてしまうこともある
5. モーダルダイアログ型
モーダルダイアログ型は、その表示を消すまではほかの要素を操作できなくなるダイアログボックスを用いるデザインです。ユーザーに注意事項を提示したり、魅力的な割引キャンペーンを伝えたりと、特に重要な要素を強力に伝えるための方式です。
【メリット】
強制的かつインパクトのある形でユーザーに情報を伝えられる
【デメリット】
ほかの操作ができなくなることからユーザーに不快感を抱かれやすい
6. 動画型
動画型は、従来であれば画像やスライドで説明していた箇所に動画を採用する方式です。ウォークスルー型のスライドを動画にした形がよく見られます。
【メリット】
画像やスライドよりも多くの情報を伝えられる
【デメリット】
動画を視聴するだけの時間をユーザーから奪ってしまう
質の高い動画を作成するためのコストがかかる
7. 通知・メッセージ型
通知・メッセージ型は、プッシュ通知やアプリ内メッセージにより、ユーザーに今すぐ届けるべき情報(例:使うとしている機能のヘルプ、当該商品の購入に利用できるクーポン)を提示する方式です。
【メリット】
ユーザーに有益な情報をリアルタイムに伝えられる
【デメリット】
「すでに知っている情報が届いた」といったストレスを感じるケースがある
8. エンプティステート型
エンプティステート型は、まだその画面で表示できるコンテンツがない場合に、取るべきアクションを代わりに提示するデザインです。
例えば、ニュースアプリの「よく読むメディア」のページに「何度も閲覧したメディアがここに並びます」と表示するなど、どうすればここにコンテンツが表示されるのかを伝えます。
【メリット】
取るべきアクションを不快感の少ない形で伝えられる
【デメリット】
ユーザーが当該画面を開くまで情報を伝えられない
5. オンボーディング施策を実施する際のポイント
続いて、アプリのオンボーディング施策を成功させるためのポイントを見ていきましょう。
1. チュートリアルはシンプルにする
アプリのオンボーディングでよくある失敗として、「自社アプリの魅力をすべて伝えたい」と思うあまりインストール直後のチュートリアルを複雑化させてしまうケースがあります。
最初から多くの説明を詰め込んでしまうと、新規ユーザーは面倒なアプリだと判断して離脱してしまいます。初期チュートリアルではニーズの高い機能をシンプルに解説し、その後、通知・メッセージ型やエンプティステート型で少しずつほかの機能も伝えましょう。
2. 継続利用しているユーザーの行動を分析する
自社アプリを継続利用中のユーザーの行動を分析し、すぐに離脱してしまった新規ユーザーと何が違うのか比較することも重要です。
例えば、継続利用中のユーザーは熱心に使っている魅力的な機能があるにもかかわらず、すぐに離脱した新規ユーザーにはその機能がほとんど使われなかったとすれば、アプリの初回起動時に当該機能の使い方を紹介することで定着が期待できるでしょう。
3. 効果測定・検証を行う
アプリのオンボーディングを成功させるためには、デジタルアプリというデータを収集しやすい媒体である特性を生かし、施策の実施と効果測定・検証を繰り返すことが近道です。「説明文AとBのどちらを提示した場合のほうが定着率が良いか」など、客観的なデータを元に施策をブラッシュアップすることで、効率良くアプリの改善を進められます。
6. Brazeの活用でオンボーディング施策を成功に導こう
ここまでにご紹介した通り、アプリのオンボーディングにはさまざまな手法・デザインがあり、成功にはデータの活用も求められます。その解決策となるITソリューションとして、Brazeの活用もご検討ください。
Brazeは顧客一人ひとりにパーソナライズされたアプローチが可能なツールです。「アプリをインストールしたがまだ購買をしていない方」を対象に初回購入時のみ使えるクーポンをプッシュ通知するなど、ユーザーとの思い通りのコミュニケーションをサポートします。
ほかにも、アプリ内でユーザーにアンケートを提示して回答データを蓄積。そのデータから趣味嗜好に応じたメッセージを送信するなど、パーソナライズ型のオンボーディング施策を行うことも可能です。充実した機能とサポートから、アプリのオンボーディングにありがちな、「結局どのように施策を進めれば良いのか分からない」といった課題を解決します。
アプリのオンボーディングに関するアイデア施策も公開していますので、ぜひこちらダウンロードください。
>>ひらめきアイデア大全 今すぐ使えるマーケティング施策50選
またBrazeのソリューションやデモ版のお見積りはこちらよりお問い合わせください
7. まとめ
アプリのオンボーディングとは、主に新規ユーザーが自社アプリに定着できるように、チュートリアルや動機付けを行うことです。アプリの重要指標である離脱率や定着率の改善に役立つため、重要な作業として取り組む必要があります。
アプリのオンボーディングについて具体的な施策に取り組みたいとお考えの際は、ぜひBrazeの導入をご検討ください。