1. APPUとは
ARPUとは、サービスにおけるユーザー一人あたりの平均売上を算出する指標です。Average Revenue Per Userの略で、「アープ」あるいは「エーアールピーユー」と読みます。
ARPUは、同じユーザーから継続的に売上が発生するサービスの収益指標として主に活躍します。特定期間のARPUの増減からキャンペーンや施策の効果を測定したり、想定ユーザー数と組み合わせて将来の売上を予測したり、サービスの現状と未来を分析したりできます。
元々、通信キャリアの月額課金モデルの評価に活用されていましたが、最近ではその利便性の高さから、SaaSビジネス、SNS、スマートフォンアプリなどの収益指標としても広がりを見せています。
2. ARPUが重要視される理由
ARPUが重要視される理由には、新規顧客獲得の困難化により多くの企業が既存顧客からの売上を増やす方向にシフトしていることが挙げられます。
新規顧客獲得には既存顧客維持の5倍のコストがかかるとする「1:5の法則」からもわかるように、サービスのユーザー数を増やし続けるためには莫大なコストが必要です。AIの進化によりビジネスが高速化する中、今後はますます多くの業界でサービスが飽和状態となり、この傾向は強まると予想されます。
ARPUによりサービスの収益状況を把握すれば、既存顧客からの売上の現状を知った上で今後取るべき改善策を検討でき、サービスの飽和状態から抜け出すことが期待できます。
3. ARPPU・ARPA・LTVとの違い
ARPUと共に押さえておきたい用語に、「ARPPU」「ARPA」「LTV」があります。ARPUとそれぞれの用語の違いを解説します。
3.1. ARPPUとの違い
ARPPUとは、あるサービスにおける課金ユーザー一人あたりの平均売上を示す指標です。Average Revenue Per Paid Userの略で、読み方は「エーアールピーピーユー」と呼ばれます。
ARPUが無料利用者を含む全ユーザーを対象とするのに対して、ARPPUは課金者の中だけで計算しているのが違いです。
3.2. ARPAとの違い
ARPAとは、あるサービスにおけるアカウント一つあたりの平均売上を表す指標です。Average Revenue Per Accountの略であり、読み方は「アーパ」あるいは「アルパ」です。
ARPUが1ユーザーあたりであるのに対して、ARPAは1アカウントあたりの平均売上を意味します。携帯電話の2台持ちのような、一人が複数の契約を行う可能性があるビジネスモデルの評価で重宝します。
3.3. LTVとの違い
LTVとは、ある顧客が自社と取引を始めて終了するまでの間にどれだけの利益をもたらしてくれるかを示す指標です。Life Time Valueの略で、日本語では「顧客生涯価値」と訳されます。
LTVはARPUと同じくユーザー一人あたりの利益を測るものですが、ARPUが特定の期間の分析をするのに対して、LTVは顧客の生涯全体の価値を見つめている点に違いがあります。
LTVも既存顧客との関係維持・改善に重要な指標です。詳細は以下の記事をご覧ください。
>>LTVの重要性や顧客の定着化を図るために−計算方法や高めるためのポイント
最後に、ARPU、ARPPU、ARPA、LTVの違いをあらためて表にまとめました。
【ARPU、ARPPU、ARPA、LTVの違い】
用語 | 特徴 |
ARPU (Average Revenue Per User) | 無課金者を含むユーザー一人あたりの平均売上 |
ARPPU (Average Revenue Per Paid User) | 課金ユーザー一人あたりの平均売上 |
ARPA (Average Revenue Per Account) | アカウント一つあたりの平均売上 |
LTV (Life Time Value) | あるユーザーが自社との取引を開始してから終えるまでにもたらしてくれる利益 |
4. ARPUの計算式
ARPUの計算は、既に売上が確定している過去の数値であれば「売上÷ユーザー数」で求められます。
例えば、売上が200万円でユーザー数が2,000人なら、ARPUは「2,000,000÷2,000=1,000」となります。
一方、将来のARPUを計算するためには、ビジネスモデルごとに異なる計算式が必要です。
4.1. ユーザー課金モデル
利用者がサービスに対してお金を支払うユーザー課金モデルの場合、ARPUは「ARPPU×課金ユーザー率(PUR:Paid User Rate)」で計算できます。
また、ARPPUは「(課金ユーザーの)平均購入単価×平均購入数×平均購入頻度」で求められます。
- ユーザー課金モデルのARPU計算式:ARPPU×課金ユーザー率(PUR:Paid User Rate)
- ARPPUの計算式:(課金ユーザーの)平均購入単価×平均購入数×平均購入頻
少し複雑なので、例を見ていきましょう。以下の条件のサービスについて、ARPPU→ARPUと計算するとします。
課金ユーザーの割合(PUR):20%
課金ユーザーの平均購入単価(1商品あたりの値段):2,000円
課金ユーザーの(1購買機会あたりの)平均購入数:2点
課金ユーザーの(1ヵ月あたりの)平均購入頻度:3回
ARPPUは「2,000円×2点×3回=1万2,000円」。すなわち、本サービスの課金ユーザーからは1ヵ月につき一人あたり1万2,000円の売上を期待できる計算となります。
ARPUは「1万2,000円×20%=2,400円」。無課金ユーザーも含めた利用者全体では、1ヵ月につき一人あたり2,400円の売上を期待できる計算です。
4.2. 広告表示課金モデル
無料アプリなど、広告の表示で収益を得ているサービスでは、ARPUの計算式は「ユーザー一人あたりの広告表示の回数×広告単価」となります。広告単価にはCPM(Cost Per Mille:広告1,000回表示あたりの料金)を採用し、1,000で割って1表示あたりの費用を求めます。
- 広告表示課金モデルのARPU計算式:ユーザー一人あたりの広告表示の回数×広告単価
例えば、1日につきユーザー一人に平均5回の広告が表示され、CPMが500円である場合は「5回×500円÷1000=2.5円」となり、1日あたりのARPUは2.5円のサービスであると計算できます。
4.3. 広告クリック課金モデル
広告がクリックされると売上が発生するサービスでは、「1クリックあたりの売上(CPC)×クリック率(CTR)」の計算式でARPUが求められます。
- 広告クリック課金モデルのARPU計算式:1クリックあたりの売上(CPC)×クリック率(CTR)
例えば、1日に全ユーザー合計で20万回の広告が表示され、そのうち3,000回クリックされているサービスの場合。
クリック率(CTR)は「3,000回÷20万回=0.015」、すなわち1.5%となります。1クリックごとの売上(CPC)が60円だとすると、1日あたりのARPUは「60円×1.5%=0.9円」です。
5. ARPUを向上させるためのポイント
続いて、自社サービスのARPUを向上させるためのポイントをご紹介します。
5.1. 価格設定を見直す
サービスの月額料金や商品単価はARPUの数値と密接に関係します。課金ユーザーの割合が少ない場合には価格を下げて購買を増やし、反対に十分な課金ユーザーを確保できているなら価格を上げて顧客単価を増加させるなど、値上げ・値下げどちらも考えられます。
しかし、このような値段設定の見直しは、計画通りの効果が出るとは限りません。ユーザーの増加によるサーバー代の高騰や解約の急増などのリスクもあり、ほかの施策と並行しながら慎重に実施する必要があります。
5.2. 顧客ロイヤルティ・顧客満足度を高める
ARPUは既存顧客との関係強化により向上させられます。顧客との関係強化を行うことで、自社サービスの固定ファンからは「○○はすべて△△で買う」「○○を買う場合は△△で揃える」など、高額かつ継続的な購買を期待できるためです。
ユーザーを自社の固定ファンにするためには、顧客ロイヤルティ(自社やサービスに抱く愛着)や顧客満足度といった指標を活用し、サービスの改善を進めていく必要があります。
顧客ロイヤルティや顧客満足度の重要性、その測定と向上に役立つ指標「NPS」については、以下の関連記事もあわせてご覧ください。
>>顧客ロイヤルティの重要性とは?向上させるメリットや顧客満足度との違いについて解説
>>NPS®(ネット・プロモーター・スコア)を活用するには-顧客満足度との違いやメリットも解説
5.3. ユーザーニーズを把握し情報更新・機能改善を行う
顧客ロイヤルティや顧客満足度を高めるためには、ユーザーニーズの把握とそれに応じた情報更新・機能改善を行う必要があります。ユーザーニーズの把握には、定期的なアンケートの実施、アプリストアのレビューやSNSの口コミの調査などの手法が役立ちます。
5.4. ユーザーサポート・カスタマーサクセスの強化を行う
購入後のアフターフォロー、つまり、充実したユーザーサポートによるカスタマーサクセスの手助けも、ARPUの向上に繋がる施策です。
具体的には、以下のような取り組みにより一度購入に至ったユーザーを逃さないようにする工夫が求められます。
24時間対応のお問い合わせ窓口の設置
公式サイトやアプリ内のヘルプの充実
購入の1週間後に「お困りごとはないですか」とメールや電話で確認
5.5. 無料ユーザーと有料ユーザーで差別化を図る
ARPU向上のためには、ユーザー全体における課金(有料)者の割合増加も大切です。無料ユーザーに「課金したい」と思ってもらえるよう、無料版と有料版で体験に差を付けましょう。
例えば、画像や文章の作成サービスであれば「無料では日に10回まで、有料では無制限で出力可能」。動画配信サービスなら「無料は広告つき、有料なら広告なし」とするなど、無料でもサービスの魅力は実感できるが有料でより快適に利用できる、といった差別化が有効です。
5.6. アップセルやクロスセルを実施する
アップセルとは、「ユーザーが購入した商品やサービスについて新たに上位版の購入を勧めること」、クロスセルは、「ユーザーが購入検討中の商品・サービスと一緒に使える品物を勧めること」、あるいは「検討中の品物の類似品を勧めること」です。どちらも、購入金額の増加、ひいてはARPUの向上に繋がる施策です。
アップセルやクロスセルを効果的に実施するためにはユーザーの属性や購買履歴といった顧客データの活用が求められます。
6. ARPUの最大化にはBrazeを活用しよう
ARPUを最大化するためには、顧客データの活用やユーザーとの適切なコミュニケーションが求められます。その手段として、顧客体験の向上をサポートするITソリューション「Braze」の活用をご検討ください。
Brazeは、直感的に操作しやすいシンプルなUIが特徴。プログラミング知識のないマーケターも自分のひらめきと顧客データをもとにキャンペーンを作成し、アップセル・クロスセル・カスタマーサクセスの強化といったARPUを高めるためのアクションをお手伝いします。
7. まとめ
ARPUとは、サービスにおけるユーザー一人あたりの平均売上のことです。ARPPUやARPAとの併用・使い分けにより、サービスの収益状況を把握し、既存顧客との関係強化に向けた手がかりにできます。
ARPUの最大化のためには、ここでご紹介したさまざまな対策を施すほか、「Braze」のようなITソリューションの導入が効果的です。ぜひこの機会に「Braze」の導入をご検討ください。