皆さん、こんにちは。Brazeの佐藤です。今回のブログでは、昨年に引き続きカンヌライオンズ受賞作品から見えるインサイトやトレンドをご紹介します。新たな取り組みへのヒントやインスピレーションを得ていただける内容となれば嬉しいです。
ところで、皆さんはカンヌライオンズをご存知ですか?
正式名称は「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」。毎年6月に南仏カンヌで行われる、世界最大級の広告とクリエイティブの祭典です。以前は「カンヌ国際広告祭」として知られていましたが、2011年から現在の名称に変更されました。これは広告業界の枠を超え、社会課題やクリエイティブの幅広い分野を評価するイベントへと進化したことを反映しています。
カンヌライオンズでは、全30部門でグランプリが競われており、その中にはMobile部門やCreative Commerce部門といった、デジタルマーケティングに携わる方々にも馴染み深いカテゴリーが含まれています。このことからも、カンヌライオンズが単なる”広告祭”ではない点や、テクノロジーの存在感が年々高まっている点を感じられるのではないでしょうか。
また、BrazeもFestival Partnersとしてイベントへ参加しており、今年のカンヌ現地には、大きな看板に
“Don’t let great ideas die in a deck.”
“素晴らしいアイデアをスライドの中で寝かせたままにしないで.”
といったメッセージを掲げさせて頂きました。
さて、そんなカンヌライオンズですが、近年、どのようなトレンドが見られるのでしょうか?
特に2024年は、去年に引き続き、“ユーモア”がキーワードとも言われていますが、私が有識者の方とお話しする限りでは感想は様々。皆さんも動画を見ながら、自分自身の感想や、インスピレーションを得て頂ければと思います。
“OREO Calls” 全米熱狂のバスケトーナメントをユーモアでハイジャック
“マーチ・マッドネス”とは、直訳すると、“三月の熱狂”。これは“全米大学体育協会バスケットボールトーナメント”を指しています。
番狂せも多い一発勝負のトーナメントで、米国で非常に人気のあるイベントと言われています。日本で言う甲子園の大学バスケ版のようなイメージでしょうか。
そんなトーナメント期間中にOREOが仕掛けたキャンペーンは、スマホでバスケットボールゲーム中の審判をスキャンすると、審判の判定動作に合わせてクーポンを入手できるというもの。これはOREOの白黒ストライプが審判のユニフォームに似ていることから着想を得て実施された取り組みです。
実は、OREOはこれまでも、自身をバーコードに見立てたキャンペーンを実施していたりと、似たようなキャンペーンを展開してきましたが、この作品のポイントは、クスッと笑わせてくれるようなキャンペーンを、“マーチ・マッドネス”という全米熱狂のタイミングにぶつけることで、話題をかっさらっていった点にあります。
こうした世の中のモメンタムを活用したキャンペーンは、OREO Callsに限らず、様々なところで話題となっています。
例えば、今年のカンヌライオンズでチタニウムを受賞したキャンペーン“Doordash-All-The-Ads”は、クイックコマースサービス Doordashがスーパーボール期間中のCMをハックして話題に。
また、昨年Mobile部門でグランプリに輝いた、南米のデリバリーサービス Pedidos Yaによるキャンペーン “World Cup Delivery”は、アルゼンチンのワールドカップ優勝の盛り上がりをうまく活用した取り組みでした。
皆に注目されるビッグイベントのモメンタム、勢いをどのように利用できるだろうか?
こうした視点を持つことでマーケターも自社の取り組み効果を最大化できるかもしれません。
“Adoptable” AIを活用してやり切ったブランドパーパス起点のプロモーション
ペットフードブランド”Pedigree“のパーパスは、“to find every dog a loving home / 全ての犬に愛すべきお家を見つけてあげること”。
それには、ペットフードの提供を通じて犬に愛される家を増やすだけではなく、そもそも帰る場所のない犬、保護犬がいなくなることが不可欠です。
そうした取り組みをやり切るには、犬の里親になる人(Dog Adopter)を増やすことが必要ですが、Pedigreeはペットフードブランドである以上、ペットフードを販売して売上を立てることが最重要である点は言うまでもありません。
どうすればパーパスと事業成長を両立できるだろうか?
Pedigreeは、保護犬の写真をPedigreeの広告モデルとして採用することで、Pedigree商品の販促を行いながら、保護犬の宣伝もするというアプローチへチャレンジしました。
ただし、実際の保護犬写真をそのまま利用してしまうと、どうしても撮影者によってバラツキが出てしまいますし、気に入った保護犬を見かけたとしても、世界に一匹しかいないその保護犬に実際出会える保証はありません。
そこで、取り組んだのが最新テクノロジー、AIを活用したアプローチ。
プロカメラマンが撮影したような高品質なクリエイティブを大量に制作するとともに、保護犬の所在地に合わせた適切なエリアへ広告を割り当てることで、商品と保護犬の同時PRを実現しました。
実際、応募作品の12%でAIが活用されていたと回答されていたとも言われており、その中でも、AIをパーパスの実現にうまく活用した優れた事例と言えるでしょう。
こうした取り組みを見ると、難易度の高い取り組み、これまで諦めかけていた取り組みも、近年のテクノロジーに目を向けることで、改めて実現可能性を模索することができそうです。
“Samsung ThrowBack Deals” 一味違ったカゴ落ちフォローメッセージ
ブラックフライデー
それは、感謝祭(Thanksgiving Day)の翌日である11月の第四金曜日にあたり、アメリカではこの日に多くのブランドが大規模なセールを行い、消費が大きく伸びることで有名です。
また、その次の月曜日は、感謝祭の週末に実店舗で買い物をしなかった人々がオンラインショッピングを行う傾向が強まり、サイバーマンデーと呼ばれています。
この週は1年で最も消費が伸びる週とも言われていますが、次の週はどうでしょうか?
多くの企業にとって、売上が大幅に減少する週となり、Samsungにとっても例外なくそうでした。
どうしたら翌週も売上を高められるだろうか?
Samsungが着目したのは、いわゆるカゴ落ちフォロー施策。ただし、一味違います。
一般的には、商品をカートにいれてから購買に至らなかったユーザへ、時間を空けすぎずにフォローしますが、実施したのは真逆のアプローチ。Samsungは振り切って2021年にカゴ落ちして購入されなかった商品の最新モデルを2023年に案内しました。しかも、2021年のセール時と同じ価格で。
それだけではありません。
言葉選びに至るまでの細かい点までこだわり抜かれたウィットに富んだものでした。
受信ボックスで埋もれがちなEメールではありますが、差別化がなされていれば、まだまだブランドと消費者の繋がりを感じられる有用なチャネルになり得ます。本キャンペーンは、単なるコンバージョン向上だけでなく、SNS上での拡散までを含めた大きな成果へと繋がっており、Eメールのポテンシャルを感じさせてくれる事例と言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
イベントのモメンタムを活かしつつ、ブランドを連想させるキャンペーン
パーパス×AIで、ブランディングと売上成長を両立
1st Partyデータを起点に、ディテールまでこだわり抜いたコミュニケーション
全く同じような取り組みはできずとも、新しいことを考える際に、こうしたキーワードを起点に考えてみることで、新たな気付きが得られるかもしれません。
最後に、私視点での2024年の感想です。
ユーモアが再評価、と言われる近年ですが、その中でも、ストーリー性やパーパスを重視するこれまでのコアとなる要素は残りながらも、モーメント(瞬間)を捉えて人々の心を動かす、瞬間的に情緒的価値を訴求することの重要性が評価されている印象を受けました。
OREO CallsやWorld Cup Deliveryが好例です。
心揺さぶられる瞬間を、どうすれば更に印象深いものにできるだろうか?そうした視点が、今後はより重要になっていくかもしれません。
来年は、Brazeと皆さんで一緒に、記憶に残る瞬間を創り上げられることを願っています。
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Sato Yosuke
アクセンチュアを経て、2022年5月にBraze入社。ストラテジックビジネスコンサルタントとして、お客様の成功とBrazeの成長を楽しみに働いています。