「ChatGPTをビジネスで活用したいが、何から手を付けるべきか」と悩む方に向けて。ここではChatGPTとはそもそもどういうものか、そのメリットや活用例、知っておくべき注意点、企業が成果を挙げるための重要ポイントをご紹介します。
1. ChatGPTとはそもそもどういうもの?
ChatGPTとは、ユーザーの質問や指示に対して、まるで人間のように文章で返答をするAIチャットボット(文章生成AI)です。米国のOpenAI社が2022年11月に提供を開始したサービスで、わずか2ヶ月後には月間アクティブユーザー数が1億人に到達するなど、世界的に注目を集めています。
ChatGPTのビジネスで重要な特徴は以下の2点です。
日本語で質問や指示を出すだけでも扱えること
(利用規約に従って)生成された回答は自由に商用利用ができること※
(※2023年8月現在 参考「What is ChatGPT? | OpenAI Help Center」)
プログラムミング言語の取得や各種許諾交渉などといった面倒な準備が不要であり、その手軽さと活用の可能性の大きさから多くの企業が導入を進めています。
2. ChatGPTをビジネスで活用するメリット
ChatGPTの活用は、企業に対して計り知れない恩恵を与えてくれます。ここでは、ビジネスシーンでのメリットを3種類に大別してご紹介します。
2.1. 汎用性が高い
ChatGPTは従来のITツールとは比較にならないほどに汎用性が高く、多種多様なテキストでの文章生成を実現します。
フォーマルなビジネスメールはもちろん、親しみのあるSNS投稿文やわくわく感をお届けできる占いの文章なども作成可能です。「自社キャラクターになりきった返答をさせる」といったユニークな使い方もできます。
2.2. 作業の効率化が図れる
ChatGPTを活用することで、企業の業務効率化を図れます。通常、回答の生成は数秒~数十秒で完了するため、例えば定型的な社内文書の作成を任せるだけでも多くのコストを削減可能です。
「各商品のキャッチコピー案を100個出して」といった人力では莫大な労力の必要な作業もあっという間に完了します。
2.3. 顧客満足度の向上に繋がる
ChatGPTの活用は顧客満足度への好影響も生み出します。
代表例として挙げられるのが、近ごろ多くのECサイトで見られる「お問い合わせ用のチャットボット」です。簡単な質問の回答をその場で生成するチャットボットを導入することで、顧客は24時間リアルタイムに不安を解消できるようになります。
3. ChatGPTをビジネスで活用する例
では、ChatGPTのビジネスへの活用例を見ていきましょう。
3.1. 文章の作成や要約
文章の生成や要約は、ChatGPTが特に得意とする作業です。
「以下の顧客・商品の情報を元に、相手の心を打つPR文(150文字)を考えてください」「以下の顧客からの問い合わせを、3つの重要ポイントを抜き出す形で要約してください」などと指示と情報を与えるだけで作業を代行してくれます。
3.2. マニュアル作成
ChatGPTは箇条書きや段落分け、表、(テキストによる)絵や図のアイデア指示を含む文章も生成できます。そのため、マニュアル作成のような高度な書類作業のサポートにも活用可能です。
実践でのポイントとして、「以下の作業について、手順を解説するマニュアルを作成してください。手順はSTEP1、STEP2と順番に詳しく解説し、また必要に応じて含むべき絵や図のアイデアも提示してください」などと、希望の形式を細かく伝えると優れたマニュアルに仕上がります。
3.3. 翻訳
ChatGPTは時間のかかる翻訳作業も一瞬で行えます。「以下の英文を日本語に翻訳してください」などと指示を出すだけで良く、「あわせて重要なポイントを3つ抜き出し解説してください」と要約を同時に行わせることもできます。
また「小学生でも理解しやすい簡単な文章に翻訳してください」などと、翻訳元と翻訳後の文章のレベルを変更する形でもお願いできます。
3.4. 議事録・レポートの作成
ChatGPTが高度な要約をこなせることは、議事録やレポートの作成にも活かせます。
例えば、会議の会話を文字起こししたデータを与え、「以下を議事録の形式でまとめてください。必要な見出しは、作成日・会議名・出席者・議題…」と指示を出せば、わずか数十秒で出力されます。
このようなスピード感が求められる書類の作成をChatGPTに担わせることは、ビジネスにおける特に有効な活用方法の一つです。
3.5. リサーチやデータの収集
基本的にChatGPTには外部へのアクセス機能がないため、リサーチやデータ収集を完全に代行させることはできません。しかし、内容に当たりを付けるための調査の足掛かりとして活用できます。
例えば「○○とは何ですか?重要ポイントの解説を行い、参考にできる書籍やサイトを教えてください」と指示を与えれば、概要と次に参考にすべき資料を素早く把握できます。
ただし、後述する通りChatGPTの回答には嘘や誤りが含まれているケースも多いため、人間の手によるファクトチェックは必須です。
3.6. アイデア出し
ChatGPTはアイデア出しが必要なシーンでも役立ちます。「○○について、アイデアを10個出してください。今回の背景は~、理想は~」と指示を出すだけで、数十秒で案が生成されます。
また、AIには人間のような疲労や感情がないため、納得の行くアイデアが生成されるまで何度でもリテイクを要求できるのも嬉しいポイントです。
4. ChatGPTを活用する際の注意点
ChatGPTは様々な形で企業のビジネスを効率化してくれます。しかし、以下の4点には注意しておきましょう。
情報の鮮度
情報の正確性や信頼性
ガイドライン違反
情報漏洩のリスク
4.1. 情報の鮮度
ChatGPTの生成内容は過去のデータ(2021年まで)に基づいています。そのため、2022年以降の知識が必要なタスクでは回答が得られないケースも多く、情報の鮮度でも劣ります。
ただし、2023年5月には、有料版のChatGPTである「ChatGPT Plus」の利用者向けに、Webブラウジング機能(最新の情報も検索して回答に含む機能)のベータ版が提供されました。将来的に改善される可能性は十分あります。
4.2. 情報の正確性や信頼性
実務上で問題となりやすいのが、情報の正確性と信頼性です。ChatGPTの回答にはもっともらしく聞こえる嘘や誤りが含まれていることがあり、この現象は「ハルシネーション」と呼ばれています。
実際にアメリカでは、弁護士がChatGPTで訴訟用の資料作成を行った結果、存在しない判例を引用してしまった事件が起きています。
実在しない用語・地名・人物名などが含まれていないか、生成内容は必ず人の目で確認しましょう。
4.3. ガイドライン違反
ChatGPTは商用利用が可能ですが、OpenAI社が定めたガイドラインや規約は順守しなければいけません。以下は、ChatGPTによる生成や共有などが禁止されているコンテンツの一例です。
【ガイドライン・規約違反となり得るコンテンツの一例】
憎悪(例:特定の人種やグループへのヘイトに繋がる内容)
ハラスメント
暴力
自傷行為
性的
違法行為(例:薬物使用、窃盗、破壊など)
政治(例:選挙等に影響を与える意図を持ち使用されるコンテンツ)
病気
スパム
(出典:OpenAI社「Content policy」より一部引用・試訳)
またChatGPTの生成物を「完全に人の手で制作したコンテンツだと偽ること」も違反となる可能性があります。ガイドラインと規約の内容は事前に把握しておきましょう。
4.4. 情報漏洩のリスク
意外な落とし穴となりやすいのが、情報漏洩のリスクです。
ChatGPTの公式ページには、対話内容はOpenAI社側で確認でき、またその内容をAIのトレーニングに用いる可能性もあると明記されています。
そのため、実はChatGPTの入力・生成内容の完全なプライベートは保たれていません。社外秘情報を安易に与えることは避けた方が安心です。
5. ChatGPTを企業で活用するためには
最後に、企業がChatGPTの活用で成果を挙げるために重要なポイントをご紹介します。
5.1. 活用のルールを構築
特に大切となるのは、ChatGPTの明確な活用ルールを構築することです。
単に「業務にChatGPTを活かして」と指示をするだけでは、現場への浸透は進みません。「業務Aでは指示文Aを与えて、生成結果を次の手順で確認し…」と誰でも同等の作業ができるほどに詳細なルールを作りましょう。
5.2. ネットリテラシーを高める
社員のネットリテラシーの向上もChatGPTの活用に欠かせない準備です。
ChatGPTの生成内容には、嘘や誤りのほかにも「事実だが安易に言及すべきでないもの」も含まれます。
昨今は、人種・性別・宗教・職業・年齢などのパーソナルな要素については細心の注意を払うべき時代です。いわゆる炎上や風評被害を避けるために、生成内容が無用な論争を招くものではないかを判断できるだけのネットリテラシーは欠かせません。
5.3. セキュリティリテラシーを高める
ネットリテラシーと同様に、社員のセキュリティリテラシーを高めることも大切です。情報流出などの重大インシデントを防ぐために、少なくとも以下の事項はすべての社員が理解しておくべきでしょう。
【ChatGPTの活用時に意識すべきセキュリティリテラシー】
ChatGPTに機密情報や社外秘を入力しない
ChatGPTの画面を開いたままでデバイスを放置しない
他サイトやアプリとパスワードを使い回さない
利用の終わった会話データは定期的に削除する
万が一のトラブル時には速やかに上司へ報告する
6. まとめ
この記事ではビジネスでのChatGPTについて、活用例やメリット、知っておくべき注意点、企業が意識したいポイントをご紹介しました。
ChatGPTはビジネスにおける多くの活用可能性を秘めていますが、一方で情報の鮮度や正確さ、流出リスクなどの注意点もあります。企業にはその特徴を理解したうえで、地に足の付いた取り組みを進めることが求められています。
BrazeがどのようにChatGPTを活用しているかは、こちらの記事をご覧ください。