顧客と接するチャネルや機会は増えるだけでなく、近年より複雑化しています。そうした中、顧客接点の強化はあらゆる企業・業界にとって急務となっています。
この記事では、顧客接点の強化がもたらす効果やメリット、顧客接点強化により成果を上げた事例などをご紹介します。
顧客接点(タッチポイント)とは
顧客接点(タッチポイント)とは、顧客と接するチャネルや機会のことです。接客や問い合わせ窓口などの直接的な接点だけではなく、テレビCMやチラシ、WebサイトやSNSなど、間接的な接点も含まれます。
顧客接点には、主に「購入前」「購入時」「購入後」の3段階のフェーズがあり、オンライン・オフラインに関わらず生まれますが、最近ではスマホの普及によるマルチデバイス化やSNSの普及、新型コロナウイルスの感染拡大による購買行動の変化などにより、オフラインからオンラインへの移行スピードが加速しています。このため、あらゆる業種で顧客接点の持ち方やコミュニケーション方法の見直しが迫られています。
顧客接点が重要視されるようになった背景
なぜ、今日ここまで顧客接点が重要視されるようになったのでしょうか。
かつての情報は、テレビCMやラジオ、新聞などを利用した一方通行のコミュニケーションが主流でした。しかし、インターネットやSNSの普及により顧客が自ら商品の情報を取りに行くことが可能となりました。その結果、ECサイトやSNSなどの販売チャネルが増加し、それを既存ユーザーが口コミとして情報を発信するなど、検索から購買までの顧客接点が飛躍的に多様化しました。そうした顧客の購買行動の変化と多様化が、タッチポイント強化の重要性を高めているのです。
顧客接点(タッチポイント)強化のメリット
では、顧客接点(タッチポイント)を強化することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
顧客満足度の向上
顧客接点は、自社のブランドや商品を認知・購入してもらうための大切なポイントです。満足度の高い体験は、新規ユーザーの獲得だけではなくリピーターやロイヤルユーザーの育成につながります。特に「自分のことを理解している」と感じるブランドに対し、ユーザーは再購入の意欲を高く持つようになります。企業側は、過去の購買履歴やクレーム、問い合わせなどのデータを蓄積しておくことで、顧客の要望に寄り添った対応が可能となり、顧客満足度の向上につなげることができるようになります。
ブランドの認知拡大
顧客接点の増加や強化は、ブランドの認知拡大につながります。例えば、購入チャネルに実店舗だけでなくECチャネルを加えるだけで、居住地に縛られない顧客獲得が可能となります。SNSなどを活用すれば、これまで接点が持てなかった顧客へのアプローチもできるようになります。
顧客接点(タッチポイント)強化をおこなう前に確認すること
顧客接点(タッチポイント)は、ただやみくもに強化すれば良いものではありません。強化をおこなう前には以下の3点を確認しましょう。
運用・管理体制の構築
顧客接点の強化をおこなう際には、チャネルを横断した施策展開やメッセージングをしますが、こうした取り組みでタッチポイント強化を実現させるには、運用・管理体制を整えておく必要があります。システム要件などのIT部門だけではなく、各チャネルをつなぐコミュニケーションプランナーを設置するなど、マーケティング部門の組織を見直したほうが良い場合もあります。
また、ブランドを複数抱える企業においては、ブランドを横断した体験設計を共通化させることで効率良く顧客接点が強化される場合もあります。デジタルマーケティング領域を強みとするCOEなど、管轄する部門を設置することも有効です。そのためには、デジタルマーケティング領域を理解している人材の確保や育成が必要となります。
ナレッジ共有体制の整備
顧客接点を強化するためには特定のチャネルで独自の施策を展開するのではなく、一貫したマーケティング戦略を施すことが必要です。クロスチャネル・オムニチャネルで展開することになるため、情報やナレッジは社内で常に共有できる体制に整備しておくことが必須となります。
顧客管理データをまとめておく
顧客情報を複数の部署で管理している企業も多くありますが、これを一元化することもタッチポイント強化には重要です。ECサイト上の行動データやお客様センターへのお問い合わせ履歴など、一見関係ないように見える顧客データも、シームレスなブランド体験には重要な要素です。
顧客接点(タッチポイント)を強化するためのポイント
では、顧客接点(タッチポイント)を強化するためには具体的にどのようなことに注力すれば良いのでしょうか。そのポイントを3つご紹介します。
目標を明確化しておく
顧客接点を強化するためには、まず目標を明確にしておくことが重要です。「顧客からの問い合わせを増やしたい」「新規顧客やコンバージョン、購入を増やしたい」「エンゲージメントを高めてLTVを高めたい」など、目標が違えば当然見るべき指標も変わります。
この目標が明確でないとKGIやKPIが正しく設定できず、指標を見誤ることもあります。顧客との理想の関係やゴールを明確にし、関連部署と認識を合わせておきましょう。
ユーザー理解を深めることが大事
顧客接点において重要なのはユーザー理解です。ユーザー理解を深めるためには、これまでの顧客接点から顧客の属性や購買履歴などを分析する必要があります。顧客属性にマッチした商品やサービスが提案できるとブランドへの好感度が増し、満足度向上につながります。
チャネル連携が重要
顧客接点は、その数や頻度を増やすだけでは強化したことにはなりません。ユーザーを正しく理解し適切なタイミングで商品やサービスに関するメッセージを発信する必要があります。そのためには、チャネルごとに独立したコミュニケーションをおこなうのではなく、クロスチャネル・オムニチャネルで一貫したマーケティングを展開することが必要です。
顧客接点強化の事例を紹介
最後に、実際に顧客接点強化に取り組み成功した事例を3つご紹介します。
ユニクロ
自社アプリによるタッチポイント強化で購入顧客との関係性を深め、リピーターやロイヤルユーザーへと育成することに成功している事例としてまず挙げられるのがユニクロです。ユニクロは自社アプリを活用し、セール情報とコーディネートの提案を織り交ぜながら商品の魅力を発信。顧客の囲い込みに成功しています。
良品計画
良品計画も自社アプリ「MUJI passport」の活用で顧客との接点強化に成功しています。購入時だけでなく来店前の商品チェックでもマイルが貯まる仕組みになっているため、ユーザー自身が楽しみながら商品を検索することが可能です。また、口コミや改善アイディアの投稿などでもマイルが貯まるため、ブランドのエンゲージメント強化にもつながっています。
バーガーキング(US)
バーガーキング(US)はBrazeのモバイルアプリ導入によりタッチポイントを増やし、エンゲージメント強化に成功しています。月間アクティブユーザー数(MAU)を50%強増加することに成功した「ワッパー Detour(寄り道)」キャンペーンでは、競合であるマクドナルドの半径600フィート(約183m)以内でアプリを開くと1セント(約1円)でワッパーを購入できるクーポンが配信されるという内容のものでした。自社アプリを重要なタッチポイントとし、消費者一人ひとりに最適化したメッセージでブランドのエンゲージメントを高めることに成功した事例です。
US事例:バーガーキングUSがBrazeを活用して、 月間アクティブユーザー数(MAU)を50%強増加
まとめ
顧客の購買行動が多様化している現代において、顧客接点の強化はあらゆる企業・業界に必須となっています。顧客接点の強化を図るには、その効果を理解したうえで顧客データの整備をおこない、行動に対する理解を深めることが重要です。
この記事でご紹介した内容を参考に、オムニチャネルで一気通貫した施策やコミュニケーションを展開・実現しましょう。