顧客を大切にすることはビジネスの基本ですが、その具体策を検討し、実現していくために役立つのが「顧客起点」の思想です。
この記事では、顧客起点とは何か、重要性や顧客視点との違い、実行に向けた企業課題と成功のポイント、解決策となるツールをご紹介します。
1. 顧客起点とは
顧客起点とは、自社製品にまつわる顧客の現実をデータとして測定し、そこからビジネスの方向性を組み立てていく考え方です。
製品の利用シーン、購買の場、カスタマーサポートなど、自社と関わる様々な場面における顧客の実態を分析し、サービスの改善に役立てる取り組みを指します。
2. 顧客起点の重要性
顧客の現実を捉える顧客起点は、既存顧客の顧客単価上昇や顧客ロイヤルティ(自社や製品に対する愛着)の向上など、企業が今取り組みたい課題の解決に役立ちます。
ビジネスにおいて、顧客を第一に考えることは目新しい思想ではありません。今、顧客起点があらためて注目される理由には、多くの業界で新規顧客獲得のハードルが上がっていることが挙げられます。
ITツールやAIの進化を受けてビジネスの高速化が進む中、一昔前のように特定の市場で一社独占を狙うのは難しくなりました。ブルーオーシャンの市場に優れたサービスを投入できたとしても、すぐに後発の類似品が登場するためです。そのため、新規顧客の獲得競争は激しさを増す一方であり、企業は既存顧客重視へと方針転換を迫られています。
顧客の現実を捉える顧客起点は、既存顧客の顧客単価上昇や顧客ロイヤルティ(自社や製品に対する愛着)の向上など、企業が今取り組みたい課題の解決に役立ちます。
3. 顧客視点との違い
顧客起点と似た用語に「顧客視点」があります。顧客起点と顧客視点の違いは、客観性の有無です。
顧客起点では、顧客の行動をデータとして測定し、そこから統計的な事実を明らかにして事業改善に役立てます。
一方、顧客視点では企業が顧客の気持ちを想像しながら取り組みを進めます。顧客起点と比べると客観性で劣り、担当者の主観や固定概念に左右されがちです。
ただし、顧客起点を「顧客視点を中心に据えたビジネスモデル」と捉えている企業もあるなど、この違いは絶対的なルールではありません。何を指しているのか、使い手や文脈から判断する必要があります。
4. 顧客起点における企業課題
既存顧客の重要性が高まる中で、顧客起点は多くの企業が意識したい考え方です。しかし、実務における顧客起点の成功には課題もあります。
4.1. 多様化するニーズに対応し続けるのが難しい
顧客起点では顧客の現実からニーズを見出して自社製品の改善を進めますが、実際には多様化する顧客ニーズのすべてを満たすことは困難です。
顧客ニーズを満たそうとサービスを無理に拡大した結果、ランニングコストが膨らんで維持が難しくなったり、利幅が縮小したりと自社の利益を損なうケースもあります。
4.2. 顧客のニーズを改善に繋げられていない
顧客ニーズの把握が、必ずしも製品の改善に直接結びつかない点にも注意が必要です。要望自体は納得感のある内容であったとしても、それを改善するための具体案を提出できなければ、次のアクションは生まれません。ニーズを元に、工数や費用も考慮した現実的な計画を生み出せる仕組み作りが求められます。
4.3. 経営者層まで情報が共有できていない
現場と経営者層の意思疎通の問題も、顧客起点なビジネスの実現に立ち塞がりやすい課題です。現場で顧客ニーズを把握し、その改善計画まで考案できたとしても、経営者層からは取り組みの必要性が感じられず、行き詰まってしまうことがあります。
5. 顧客起点でのマーケティングを成功させるポイントや注意点
上記の企業課題を踏まえた上で、ここでは顧客起点のマーケティングを成功させるためのポイントと注意点をご紹介します。
5.1. 顧客のニーズを元に改善まで繋げる仕組み作りをする
顧客ニーズは把握するだけでは意味がなく、製品の改善にまで結びつけることが大切です。少なくとも以下の要素を意識して、ニーズが改善に繋がる仕組み作りを進めましょう。
- 継続的なニーズの収集体制を整える(例:定期アンケートの実施)
- ニーズを優先度や緊急度で順位付けする(例:当該ニーズが原因と考えられる解約ユーザー数の観点から、最優先課題とするなど)
- 改善計画は短期・中期・長期に分けたロードマップを考案する
- KPIを設定し、数値で計画の進行状況を把握する
5.2. 会社全体に情報を共有できる体制を整える
ビジネス施策の成功には全社一丸となった取り組みが重要です。顧客起点のマーケティングの実現においても、現場だけでなく経営者層まで含めた取り組みを進められる情報共有体制が求められます。
具体的な方法としては、社内SNSなどのコミュニケーションツールの導入や定例会議の実施、「クロスファンクショナルチーム(各課から高度な人材を集め部門を横断して問題解決に当たる集団)」の立ち上げなどがあります。
5.3. 9segsやN1分析を活用する
顧客起点のマーケティングを行う際には、まずは顧客を「顧客ピラミッド」で分類し、重要性を視覚化する形が一般的です。顧客ピラミッドとは、ロイヤル顧客を頂点、自社サービスを知らない顧客を最下層として、熱心な顧客ほど上に来るようピラミッド上に分類するセグメント方式を指します。
顧客ピラミッドを活用する際に役立つのが「9segs」と「N1分析」です。9segsとは、顧客を以下の5グループに分類し、さらに未認知顧客以外を次回の購入に積極的か消極的かで分けるフレームワークです。
ロイヤル顧客:頻繁に購買をしている顧客
一般顧客:頻繁ではないが、現在も購買をしている顧客
離反顧客:過去に購買をしていたが、現在は離れてしまった顧客
認知・未購買顧客:自社製品を知っているが、購買したことはない顧客
未認知顧客:自社製品を知らない顧客
上記を上から順番に並べていくだけで、顧客ピラミッドの形が作れます。
一方、「N1分析」とは、一人の顧客を選び出し、インタビューをするなど徹底的な分析を行う手法です。顧客ピラミッドと組み合わせることで、データから導き出した各層のニーズが実態に即しているのかを確認したり、N1分析の結果から新たな分析の切り口を見出したりできます。
「9segs」や「N1分析」でロイヤル顧客や未認知顧客、未購買顧客など、異なる層との違いを明らかにすることで、最善となる施策やコンテンツをどのように行っていくかが明確になってきます。また、顧客ピラミッドを用いる際に注意しておきたいのが、ピラミッドの下層にも目を向けることです。顧客ニーズの分析時にはロイヤル顧客を優先したくなりますが、ビジネスの長期的な成功にはまだ未購買の層へのアプローチも必須の作業となります。
前述の通り、顧客起点は既存顧客との関係強化の観点から注目される考え方です。しかし、新規顧客の獲得を完全に諦めるのではなく、ある程度並行して取り組むことが理想形といえます。
5.4. 顧客ニーズを可視化するツールの導入を検討する
顧客起点は顧客視点と比べて客観的なデータを用いる点に強みがあります。「CRM」「MA」「CEP」などのITツールの導入を検討しましょう。
5.4.1. CRM
CRMはCustomer Relationship Managementの略で、日本語では「顧客管理システム」と呼ばれます。過去の購買や商談の履歴、判明している顧客の属性情報を蓄積するなど、既存顧客との関係強化に活用されるツールです。その詳細は以下で解説しています。
>>カスタマーリレーションシップマネジメントの詳細はこちら
5.4.2. MA
MAはMarketing Automationの略で、日本語ではそのまま「マーケティングオートメーション」と読みます。条件指定でメール配信をするなど、本来はマーケティングの自動化に役立つツールですが、顧客データの一元管理やスコアリング(購買意欲の点数化)の機能を持つものも多くあります。ニーズの把握から顧客ピラミッドの作成まで、顧客起点の取り組みに利用できます。
MAの機能や選び方については以下の記事で解説しています。
>>マーケティングオートメーション(MA)とは?基本機能や導入メリット・選び方を紹介
5.4.3. CEP
CEP(Customer Engagement)は、カスタマエンゲージメントプラットフォームと呼ばれる顧客との信頼関係を築くためのツールです。
CEPはMAと似ていますが、MAがマーケティングの自動化を目的としているのに対して、CEPは顧客一人ひとりにパーソナライズされたコミュニケーションの実現を主題としています。顧客起点の思想からいえば、MAよりもCEPの方が適しているといえるでしょう。
MAとCEPの違いは以下の記事で深掘りしています。
>>マーケティングオートメーション(MA)とカスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP )の違い・実現可能なこととは
6. Brazeで顧客起点マーケティング実現
カスタマエンゲージメントプラットフォーム(CEP)である「Braze」は、顧客起点のマーケティングの実現を力強くサポートします。
6.1. 機能の紹介
Brazeはマーケターの業務を支援するITツールです。数え切れないほどの機能を実装済みで、顧客起点に関する以下のような機能を持ちます。
- 属性や購買履歴など、顧客データの網羅的な収集・一元管理
→客観的なデータからの顧客ニーズの把握
- 収集したデータによる顧客のセグメント化
→顧客ピラミッドの構築
- 条件別のメッセージ送信や広告表示
→顧客ニーズの改善施策に用いる具体的な手段
- 数百万人に数時間でメールを送信できるスケーラビリティ
→改善施策の実現性の向上
Brazeの上記の機能を活用し、実際に顧客起点マーケティングを実現した企業をご紹介します。
6.2. 事例の紹介
アソビュー株式会社様が展開する、遊園地や水族館など休日の娯楽施設での遊びを予約できるサイト「アソビュー」は、リリースから5年が経過した2017年ごろからサービスの成長が鈍化していました。そこで、顧客起点マーケティングによりリピーター客を増やすべくBrazeを導入しました。お出かけスポットに近づいた方へお得な情報を配信したり、情報Aを見た方には商品Bを提案したりと、既存顧客にパーソナライズされたアプローチを実施。また、これまで24時間以上もかかっていた700万人以上の会員へのメール送信も、Brazeで数時間以内に送信できるように改善しました。
結果として、本格的に顧客起点マーケティングに取り組み始めた2018年以降は毎年1.6倍のペースで売上が成長し、今では当時の4~5倍にまで売上規模を伸ばしています。
7. まとめ
顧客起点とは、自社や製品に関する顧客の現実をデータとして捉え、そこから導き出したニーズを元に改善施策を進める考え方です。その実現には、顧客ニーズが可視化できるITツールの導入が近道となります。
まずはBrazeへお問合せください。。顧客起点のマーケティング実現に関する疑問や悩みのご相談もお待ちしております。
>>Brazeへのお問い合わせはこちら