顧客が購買体験を通して得られる価値としてのCXは、顧客の感情に訴求するものであることから、計測や評価が難しいとの声も聞かれます。CX向上を成功させるには、目標を共有し、取り組み状況を可視化して、客観的に評価できるKPIを持つことが鍵となります。
ここでは、CX向上においてKPIを設定する上でのポイントや注意点について解説します。
1. KPIとは
KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)とは、目標に対する達成度を測るための数値指標です。会社全体としての大きな目標だけではなく、部門やチームにおける日常業務の評価においても活用できます。
CXの向上に取り組むためにも、適切なKPIを設定し、評価と実施を繰り返していくことが重要です。
1.1. KPIの目的や必要性
CXの向上プロセスにおいては、KPIの設定と管理が欠かせません。
KPIの目的は、目標達成までのプロセスが適切に実施されているかを評価することです。最終目的を達成するまでのプロセスを評価する中間指標としてKPIを設定します。
そのためKPIは、測定・分析・評価をタイムリーに行うことが求められます。このまま進めていけば最終目標が達成できるのかどうかを確認し、場合によっては軌道修正を行います。
【関連用語】主要業績評価指標(KPI)についてはこちら
2. CXとは
CX(Customer Experience/顧客体験)とは、購買行動において顧客に提供できる価値のことです。商品やサービスの購入時だけではなく、購入前の検討段階から購入後に利用するまでの長い期間において、顧客に価値を感じ続けてもらうことが重要です。
CX向上のためのポイントや成功への道筋については、こちらの記事でも解説しています。
>顧客中心時代の CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?向上のためのポイントや成功への道筋について
2.1. CX向上の重要性
CX向上が重視される背景には、製品やサービスなど「モノの価値」だけでは他社との差別化が難しい実情があります。そこで、CXを高め、顧客に自社やブランドのファンになってもらい、継続利用やリピート購入を促すための取り組みが重視されているのです。
3. CXを向上させるためのKPI(指標)
CXを向上させるために有効なKPIとしてどのようなものがあるのかを見ていきましょう。
CX向上に有効なKPI一覧
名称 | 概要 |
顧客解約率 | 顧客数全体に対する解約の割合 |
顧客維持率 | 既存の顧客が一定期間に取引を継続している割合 |
CSAT | 製品やサービスに対する顧客の満足度 |
LTV | 取引を開始してから終了するまでの間に顧客がもたらす利益 |
アクティブユーザー数 | 特定の期間内にサービスを利用したユーザー数 |
オンボーディング完了率 | 商品やサービスを理解し使いこなせる状態に定着した割合 |
NPS | 製品やサービスを家族や友人などに勧めたい度合い |
eNPS | 従業員の自社に対する愛着度 |
平均解決時間 | 一件の問い合わせについて解決までに費やした時間 |
SNSや口コミ | CXを探るうえで重要な情報源。ただし大量で数値化しにくい |
3.1. 顧客解約率
顧客解約率(チャーンレート)は、顧客数全体に対する解約(退会/離脱)割合のことです。一定期間内に解約した顧客数/期間当初の顧客総数×100%で算出します。
特にサブスクリプションサービスの場合、顧客解約率はCXだけでなく収益に直結する重要な指標となります。
3.2. 顧客維持率(リテンションレート)
顧客維持率(リテンションレート)とは、既存の顧客が一定期間に取引を継続している割合のことです。
新規顧客を開拓するよりも、既存の顧客の売上を維持するほうが営業コストは低くすみます。顧客維持率を高く維持できれば、企業を成長軌道に乗せやすいといえます。
3.3. CSAT(顧客満足度)
CSAT(Customer Satisfaction Score)とは、製品やサービスに対する顧客の満足度を示す指標です。
満足度は顧客の感情に根差した指標で、一般的には「非常に満足」「満足」「普通」「不満」「非常に不満」などの複数段階に分け、アンケートを通して数値化します。
3.4. LTV(顧客生涯価値)
LTV(顧客生涯価値/Life Time Value)とは、特定の企業やブランドと取引を開始してから終了するまでの間に顧客がもたらす利益のことです。
顧客との関係を良好に長く保つことができれば、取引期間は長くなり、LTVが向上します。
LTV(顧客生涯価値)については、こちらの記事で詳しく解説しています。
>LTVの重要性や顧客の定着化を図るために -計算方法や高めるポイントについても紹介
3.5. アクティブユーザー数
アクティブユーザー数(AU)とは、特定の期間内にWebサイトやアプリなど、サービスを利用したユーザーの数のことです。
日、週、月など測定する期間によって、「DAU(Daily AU)」「WAU(Weekly AU)」「MAU(Monthly AU)」といった指標があります。登録しただけで利用していないユーザーを除き、実際に利用実績のあるユーザー数を表す指標です。
3.6. オンボーディング完了率
オンボーディング完了率とは、顧客が商品やサービスを理解して使いこなせる状態(=オンボーディング完了)に定着した割合のことです。
オンボーディング完了率が低い状態は、多くの顧客が自社の製品・サービスを使っていない状態が続いていることを表しており、解約のリスクが高まります。
3.7. NPS(ネット・プロモーター・スコア)
NPS(Net Promoter Score)とは、製品やサービスを家族や友人などに勧めたい度合いを数値化した指標です。
製品やサービスへのロイヤリティ(愛着)を表し、NPS が高い場合はリピート率やサブスクリプションサービスの継続率が高くなります。ロイヤリティの高い顧客が周囲に商品・サービスを勧めてくれれば、営業活動をしなくても新規顧客の獲得が期待できます。
3.8. eNPS(エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア)
eNPS(Employee Net Promoter Score)とは、従業員の自社に対する愛着度を表す指標です。
従業員自身がどれくらい職場に満足しているかのES(Employee Satisfaction 顧客満足度)ではなく、自社への就職を周りにどれくらい勧めるかの視点で捉えます。これにより従業員の自社へのエンゲージメントを把握し、人事施策などへと活かします。
NPSではCXを把握するのに対し、eNPSではEX(Employee Experience/従業員体験)を把握します。CXと合わせてEXにも関心が集まっています。
3.9. 平均解決時間
平均解決時間とは、一件の問い合わせについて解決までに費やした時間のことです。コールセンターなどでよく使われます。
平均解決時間は、単純に短ければ良いというわけではありません。顧客とのコミュニケーションにある程度時間をかけなければならないケースもありえます。CX向上においては、対応人数など自社体制のキャパシティを踏まえ、平均解決時間を適正な値に収めることが重要となります。
3.10. SNSや口コミ
SNSや口コミは、CXを探るうえで重要な情報源となります。一方、大量で数値化しにくい定性的な情報のため、分析が難しい側面もあります。次のような定量的なKPIを設定して分析すると良いでしょう。
- 口コミ数:関心を持つ人の数。直接売上とは結びつかないこともあり、他のKPIと合わせて評価します。
- パフォーマンススコア:利用者による星の数などの点数評価
- おすすめ度:利用者による他の人への推奨度
- センチメントスコア:肯定的なコメントの割合
4. KPIを設定する際のポイントや注意点
CX向上のために効果的なKPIを設定するポイントや注意点についてご紹介します。
4.1. KGIを達成するためのKPI設定をする
KGI(Key Goal Indicator/重要目標達成指標)とは、会社全体のビジネスの最終的な目標を数値で表す指標です。売上高や利益率などがこれに当たります。
KPIは、KGIを実現する過程で進捗度を表す中間指標として設定します。全社的な目標であるKGIを組織→チーム→個人の目標へとブレークダウンし、それぞれのKPIに落とし込んでいきます。KGIを頂点とするツリー構造の構成要素がKPIとなるイメージです。
4.2. 現実的な数値を設定する
KPIは、必ず定量的な数値として設定します。その数値は低すぎず、かといってモチベーションを低下させるほど高すぎず、実現可能性のある数値で「少し高め」に設定するのがポイントです。
4.3. PDCAを回していくことを想定したKPI設定をする
最終目標であるKGIの実現に向けては、各施策のPDCA(P:計画→D:実行→C:評価→A:改善)を繰り返していきます。CX向上施策のPDCAサイクルの中では、そのKPIについても測定や評価、改善を回していきます。KPIを設定する際は、PDCAサイクルにおける定期的な測定方法や評価方法も決めておきましょう。
4.4. 定期的に見直しをする
PDCAサイクルで定期的にKPIを測定・評価することと合わせて、KPI自体が適切かどうかについても評価も行います。
一旦設定したKPIは基本的には変更しない前提ですが、想定以上の環境の変化や極端な進捗度合いの乖離があった場合などは、当初設定したKPIの見直しが必要となることもあります。
4.5. 事業の特性に合わせたKPIを設定する
売り切りかサブスクリプションか、主な販売形態は対面かネット販売かなど、事業の特性にマッチするKPIを選定する必要があります。一つの事業の中でも、購買行動のフェーズや顧客体験の種類によって適切なKPIを選択すると良いでしょう。
4.6. ツールを活用する
CX向上の取り組みにおけるKPI管理には、ツールの活用が有効です。収集した大量のデータを元にKPIを可視化してCX状況を把握し、関係者の間で共有して分析や評価を実施する。こうした活動を定期的に行うためには、CXに関するデータやKPIをリアルタイムに可視化できる環境の整備が重要です。
CX向上プロセスにおけるKPI管理には、CXに必要なツールが統合されたカスタマーエンゲージメントプラットフォームを活用することが有効です。
>Brazeのデータ視覚化機能で顧客エンゲージメントの現状を明確に把握する
5. CX向上にはBrazeの活用を
Brazeは、CXに特化したプラットフォームです。消費者一人ひとりにリアルタイムに寄り添った人間味あふれるコミュニケーションで、自然な収益へ導く価値ある顧客体験を提供します。
世界中のあらゆる業界で1,700以上のトップブランドに採用されており、大きくの企業が洗練されたデジタルコミュニケーションを実現しています。
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6. まとめ
CX向上には、目指すCXに合ったKPIの設定と管理が重要です。
これまで紹介した、KPI(指標)をもとにCX向上を目指しましょう。また、KPIの設定の際には、KGIを達成するためのKPI設定をすることや、現実可能な数値設定、定期的な見直しをすることが重要となります。
ツールでの活用もCXを向上させるためには大切です。カスタマーエンゲージメントプラットフォーム「Braze」を活用して多様なKPIをリアルタイムで評価し、CX向上を確実に実現しましょう。