休眠顧客は、事業において継続的な売上を確保するために重要な、マーケターがぜひ意識しておきたい顧客層です。
この記事では、休眠顧客の意味や関連用語との違い、アプローチするメリットと方法、成功のポイントなどをご紹介します。
1. 休眠顧客とは
休眠顧客とは、過去に自社製品の購買やサービスの利用があったにも関わらず、現在は距離が離れている顧客のことです。商談は行われたものの成約に至らず、最近はやり取りがない見込み顧客を含むケースもあります。
休眠顧客は自社製品に興味を抱いた過去を持つ相手であり、アプローチ次第で購買を期待しやすいのが特徴です。SNSの拡大など、顧客が製品やサービスに触れるタッチポイントが増え、新規顧客の獲得が難化するなか、休眠顧客の存在にあらためて注目が集まっています。
2. 休眠顧客に関連する用語
休眠顧客には、以下のような似た言葉がいくつかあります。
用語 | 概要 |
優良顧客 | 購買回数・頻度・金額などが優れており、自社に多くの売上をもたらしてくれる顧客のこと。 |
顕在顧客 | 自分自身のニーズも(自社の)製品のことも認識しており、両者が結びついている見込み顧客のこと。 |
潜在顧客 | まだ自分のニーズを知らないか(自社の)製品を認識していない、もしくは両方知っているが両者が結びついていない見込み顧客のこと。 |
見込み顧客 | これから顧客になり得る幅広い人々のこと。顕在顧客と潜在顧客からなる。 |
離反顧客 | 強い不満や疑問があり自社から積極的に離れた顧客のこと。休眠顧客よりも再獲得へのハードルが高い(信頼回復が必要)。 |
一般顧客 | 上記の○○顧客に該当しない一般的な顧客のこと。 |
なお、休眠顧客を一般顧客に引き上げる作業を「掘り起こし」と呼びます。その重要性や方法は後述します。
3. 休眠顧客になる原因
では、なぜ休眠顧客が生まれるのか、よくある原因を見ていきましょう。
1. サービスや商品に満足できていない
もっともよくある原因は、顧客が自社のサービスや商品に満足できなかったからです。購買前に期待していたクオリティに届かず、ニーズを満たせなかった場合、リピート購入の可能性は低くなってしまいます。製品の質と比べて価格面の満足度が低い時にも同様です。
2. サービスや商品の利用が必要なくなった
質や価格には満足しているが、ライフスタイルや環境の変化によって利用の必要がなくなり、休眠顧客となるケースもあります。例えばベビー用品などは、子どもの成長に合わせて需要が変化します。子どもが小さいときには必要だったが、成長したことで利用しなくなったといったことが考えられます。
3. サービス・商品の存在を忘れてしまっている
数え切れないほどのアイテムが市場に登場する今日では、単純に自社サービス・商品の存在を忘れて休眠顧客となるケースもあります。このような相手は、簡単なリマインドの連絡によって「久しぶりに試してみよう」と再購買を行ってくれる場合もあります。
4. 購入前の比較検討に時間がかかり過ぎた
高額な製品やBtoBビジネスでよくある休眠顧客化の原因は、購入前の比較検討に時間がかかり過ぎることです。どれが一番良いのかと迷っている間に購買熱が冷めてしまったり、ニーズが消失したり、面倒になって諦めたりといったケースが該当します。
4. 休眠顧客の掘り起こしを行う重要性やメリット
では、なぜ休眠顧客の掘り起こしを行うべきなのか、その重要性とメリットをご紹介します。
1. 新規顧客の開拓に比べて低コストでできる
「1:5の法則(新規顧客からの売上獲得は既存顧客と比べて5倍のコストがかかる)」で知られるように、新規顧客獲得の難易度が増していることはマーケターにとって常識となりつつあります。
その点、自社に興味を持った過去があり、既に顧客情報が手元にあることも多い休眠顧客の掘り起こしは、新規顧客の獲得と比べて低コストで済むと考えられます。
2. 見込み顧客の獲得や育成に繋がる
休眠顧客の掘り起こしでは、今すぐ購買をしてくれる相手以外にも、今後の利用を期待できる見込み顧客の獲得も行えます。したがって、市場が飽和状態にあると感じており、新規の見込み顧客の獲得が進んでいない際にも有効です。
また、休眠顧客は解決したい課題(休眠に至った原因)が明確なケースも多く、成約に向けて育成を進めやすいといった長所もあります。
3. サービスや商品の改善に繋がる
休眠顧客となった原因は、そのまま自社サービスや商品の欠点であるとも考えられます。休眠の原因を明らかにし、その解決策を検討していく掘り起こしのプロセスは、自社プロダクトの質を改善していくために役立ちます。
4. 継続的な売上に繋がる
どれほど優れた製品も、新規顧客の開拓だけで収益を確保し続けるのは現実的ではありません。市場内の顧客数には限界があり、いつかは頭打ちとなります。今は離れている休眠顧客にも目を向ければ、持続可能で継続的な売上の獲得に繋がり、安定した経営基盤が築けます。
5. 休眠顧客を掘り起こす方法
続いて、休眠顧客を掘り起こす具体的な方法・手段を確認していきましょう。
1. メール
メールはオーソドックスな休眠顧客の掘り起こし手段の一つです。各顧客の休眠理由に合わせて適切なコンテンツを作成し、メールとして送信することで、多くのレスポンスを期待できます。
メールマーケティングで意識すべきポイントや作業の流れは以下の記事で解説しています。
>>【2022年版】顧客思考のメールマーケティング手法とは?メリット・デメリットについても紹介
2. DM
DM(ダイレクトメール)は、郵便物やFAXなどのオフラインによる休眠顧客の掘り起こし方法です。伝統的な手法であり、実物が届くため相手の印象に残りやすい魅力があります。例えば、しばらく利用のない顧客に「誕生月限定割引クーポン」の付いたハガキを出すなどの形が身近な例です。
3. 電話
即効性の高い掘り起こし手法となるのが電話です。利用を中断した理由を伺い、その解決策を提示できれば、「親身に対応してくれる企業だ」と好感を抱いてもらえるでしょう。一方、相手の性格や架電の頻度によっては不快に思われるリスクもあるため、柔軟な運用が求められます。
4. アプリ
自社アプリで休眠顧客を掘り起こしたい時には、デバイスへの通知の活用が有効です。「初回限定クーポンの復活」や「○○サービス(新機能)の登場!」などと通知を送ることで、もう一度アプリを開くよう促します。ただし、原則として、まだアプリをアンインストールしていない休眠顧客や通知をオンにしている顧客にしかアプローチできないことは覚えておきましょう。
5. LINE
今やメールを凌ぐ連絡ツールとなったLINEも、休眠顧客の掘り起こしに向いています。割引クーポンの情報はもちろん、新製品や新機能の登場などをカジュアルにお知らせできます。「リッチメニュー(トーク画面の下部に表示できる広告)」のようなクリック率の良い宣伝機能を活用するのも効果的です。
6. イベント・展示会
大規模な休眠顧客の掘り起こし方法として、リアルイベントや展示会を開催し、そこに招待する方法もあります。画期的な新情報を発表したり、魅力的な新商品を試用してもらったりと、自社製品への熱を呼び戻す特別な機会となるはずです。ただし、このような招待に応じてもらうための訴求力の高いメールやDMの用意は必要で、他の手法との組み合わせが求められます。
6. 休眠顧客にアプローチするためのポイント
ここまでの内容を踏まえた上で、休眠顧客に質の高いアプローチをするためのポイントを確認してみましょう。
1. 休眠顧客となった理由の分析からはじめる
休眠顧客の掘り起こしでもっとも重要となるのが、休眠の理由を知ることです。そこには休眠からの復帰を促すためのヒントがあり、再購買の可能性を測るための手がかりにもなります。
休眠理由を把握する手段には、アンケートの実施や、客観的な数値からの推測が挙げられます(例:初回購入は多いがリピート購入率が著しく低い→製品の質が足りていない、もしくは質に対して価格設定が高いなど)。
2. アプローチ先の優先順位を決める
休眠顧客が復帰する可能性は、休眠の理由によって異なります。単に忘れている、あるいは小さな不満を抱いているのであれば、リマインドの連絡や解決策の提案でもう一度試してもらえるかもしれません。
しかし、ベビー用品のようにライフステージの変化が休眠理由であれば、再購買の可能性は低くなります。休眠理由を参考にし、復帰を期待しやすい顧客を優先してアプローチの順位付けを行いましょう。
3. 休眠理由によってメッセージを使い分ける
掘り起こしのアプローチで送るメッセージの内容は、休眠の理由次第で臨機応変に変えるべきです。以下は休眠の理由と送るべき内容の一例です。
→機能改善や新サービスの登場をお知らせ
→大量購入や年契約で受けられる割引の提案
→「困りごとはありませんか?」などと最新情報と共に連絡
→競合他社と比べた優位性の簡潔な宣伝、期間の短い割引クーポンの付与
→前回購入した製品とは別の新たなプロダクトの提案 |
休眠の理由を意識できていないと、復帰の可能性が減るのはもちろん、忘れているだけの顧客に割引を提供してしまうなどすることで売上も減少してしまいます。
4. 最適なアプローチの方法を見分ける
メッセージ内容の検討に合わせ、アプローチ方法の選択も進めましょう。ご紹介した通り、メール・DM・電話など連絡方法は多数ありますが、状況や顧客の属性によって適切な手段は異なります。
例えば、高齢の方にメールで連絡をすると冷たく感じられる場合がありますし、メールの扱い方がわからない方もいます。また、ITツールを提供する企業がDMを送れば時代遅れだと思われたりするかもしれません。「相手はどう感じるだろうか」といった顧客目線を持つことが大切です。
5. ツールを導入する
最適なメッセージの内容やアプローチの方法を人の力だけで見極めるのは大変です。その解決策として、ITツールの導入をおすすめします。特に、顧客のセグメント化(属性によるグループ化)やアプローチ履歴の時系列管理ができるツールは、休眠顧客一人ひとりに対してパーソナライズされたコミュニケーションを行うのに重宝します。
7. 休眠顧客の掘り起こし事例
最後に、Brazeを用いて休眠顧客の掘り起こしに成功したアンテポスト株式会社の事例をご紹介します。
オンラインクレーンゲームを提供するアンテポストでは、できるだけ多くの顧客にエンゲージメントして収益を獲得しようと、すべての顧客にメールを送信し続けていました。実際、メールを送信すれば売上は上がっていたものの、離脱ユーザー(休眠顧客)の数も増加しており、ブランド価値の低下が懸念されていました。
そこで、解決策として導入した取り組みが、Brazeによる顧客のセグメント化です。「課金履歴はあるが60日ログインしていないユーザー」を休眠顧客として抽出し、その方たちの気持ちをくすぐるカムバックキャンペーンを実施。その結果、休眠ユーザーの7.4%を復帰させることに成功しました。
>>アンテポスト、顧客属性に合わせたきめ細やかなコミュニケーション戦略で課金転換率33%を実現
8. まとめ
休眠顧客とは、過去に購買や接点があったものの現在は離れている顧客のことであり、新規顧客獲得の難易度が上がる今日の市場のなかで、その重要性が指摘されています。
休眠顧客を掘り起こすためには、休眠の理由を明確にし、それぞれに最適な解決策を提案する必要があります。このような顧客のセグメント化を助け、アプローチの具体的な手段となるツールとして大いに力を発揮するのがBrazeです。
休眠顧客の復帰のためのご相談は、ぜひ以下のお問い合わせ窓口からお気軽にご連絡ください。
>>休眠顧客の復帰に関するご相談はこちら