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顧客起点マーケティングで持続的なビジネス成長へ〜Get Real with Braze イベントレポート〜

Team Braze 作成者: Team Braze 2023/12/19

2023年11月29日、主にB2C企業の経営者、マーケティング責任者の方々をお招きしたエクスクルーシブイベント「Get Real with Braze Tokyo」が東京・虎ノ門で開催されました。Get Real with Brazeは、テクノロジーとクリエイティブを融合させ、社会や会社のありようを変えたいと想う人と人をつなぐネットワーキングプログラムです。今回は「顧客起点マーケティングとビジネス成長」をテーマに、顧客起点マーケティングを提唱し、アドバイザリー・コンサルティング業務を実践すると共に出版メディア等で積極的な情報発信を行うStrategy Partners代表取締役の西口 一希氏をお招きしました。当日のイベント内容をレポートします。

多様性に適用できるマーケティングを実現するBraze

イベント冒頭のご挨拶で、Braze マーケティング本部長の柿野 拓が掲げたのは「ニッポンのマーケティングを変えよう」という強いメッセージでした。柿野は「ルール変更やテクノロジーの進化が個性の多様化を生み出し、界隈消費、エシカル消費、パルス型消費など従来のマーケティング手法ではニーズを捉えきれなくなっている。」と述べ、具体的な例として「自分は洋服はファーストファッションが中心で、車は持たずにシェアカーを利用しています。いわばミニマリストと呼ばれるタイプのペルソナで、40代の私の購買行動は10代の若者のそれと変わりません。まさに「消齢化」という現象で、旧来のマーケティング手法でいうSTP、デモグラで切るということができません。変わり続ける顧客の情報をリアルタイムに捉え続け、即応できるテクノロジーと人々を熱狂させるクリエイティビティーとアイデアの組み合わせが新時代のマーケティングに必要。顧客起点に考え、施策を展開したいと考える企業を私たちは支援し続ける」と述べました。

Braze マーケティング本部長 柿野 拓
Braze マーケティング本部長 柿野 拓

顧客理解の実態-見失われている3つのポイント

次に特別講演として、P&G、ロート製薬、ロクシタンジャポンなど、これまでB2B、B2C含め19業種ものマーケティング領域で活躍するStrategy Partners代表取締役の西口 一希氏が登壇しました。西口氏は、まずは顧客理解以前に、日本企業の多くが、自社がターゲットとするマーケット全体の顧客数の定義や、課題の定量的な把握が進んでいないという調査結果を指摘、企業の市場や顧客への理解が未だ進んでいない現状に言及しました。西口氏が特に理解が進んでいない領域として以下の3つのポイントを紹介しました。

Strategy Partners代表取締役 西口 一希 氏
Strategy Partners代表取締役 西口 一希 氏

1つは顧客の心理状態への理解の低さです。特にコンバージョン率の数字のみを注視するようなデジタルマーケティングの領域でその傾向が強く、といいます。行動には必ず理由や背景が存在しますが、その顧客の心理的な要因を見きれていない、インサイトを深めていないということです。

2つ目が価値観やニーズの多様性への理解です。合計値や平均単価などで捉えてしまう。利益や売上の8割を構成するロイヤルユーザーは全体の約2割ほどで、どの企業でもパレートの法則が成り立ちます。この層だけでも、粗く分析しても5~10にセグメントで構成されている、と西口氏が指摘します。「うちのロイヤル顧客は〇〇です」と断言している企業があれば、それは多様性にまで目が及んでいない可能性があります。

そして最後が顧客の変化、その変化のスピードは増し続けています。将来の購買行動の変化は、1年前の消費行動を振り返ってわかりません。にもかかわらず、多くの企業が施策立案や意思決定に1年前、2年前のデータを使っているのが実情で、アプローチや考え方を根本的に見直す必要がある、と西口氏は指摘します。

上記3つ視点を強化しつつ、「顧客理解」を深めつつ、マーケティングとビジネス全体を考えていく、この視点が重要である、と語ります。

顧客心理を捉えていない問題点の実例として、西口氏が挙げたのは2つのクリエイティブを比較して効果があった方を採用する、いわゆるデジタルマーケティングのABテストです。

デジタルマーケティングの世界では、ABテストを繰り返し、勝った方に投資を集中させれば最善の結果に繋がる、と考えがちですが、実際は半年程度で売上は頭打ちになることが一般的です。その原因は、Aでコンバージョンした or しなかった顧客、あるいはBでコンバージョンした or しなかった顧客の心理状態にまで理解が及ばず、C案、D案という本当のニーズを捉えた新たな価値提供の機会を創出できていないてから、と語ります。

また、多様性いう観点では、企業の多くは潜在顧客を特定せずに、マスアプローチしています。STPをやりきれていないということもありますが、その前提として切るべき顧客層を正しくセグメントするための調査やデータ、あるいは考え方などが浸透しておらず、結果的にマスマーケという手法になり、投資対効果も得られないという状況が続いています。

テクノロジーの進化、ルールの変更、感情の起伏、これらは突発的にそして連続的に起こります。今日来場した皆さんも参加前と参加後では興味も変わるはずで、重要なポイントは「その感情が発生したその瞬間に対応する」ということです。

LTV向上には「利益が出る」2割のロイヤル顧客にフォーカス

次に西口氏は人口は減少傾向にあり、市場拡大が難しい中、如何にシェアを上げていくか、単価をあげるか、リピートの頻度をあげるかに焦点を当てざるを得なくなっている、と説明しました。

新規獲得のコストはリピート購買よりもコストがかかるのは当然、利益が出る売上と、利益がでない売上があるということを理解すべきで、長期的な視点で、売上や利益を左右する継続性の高い顧客を見定めて施策を考えることが重要です。多くの企業は、利益に貢献しない顧客に意識せず投資活動、マーケティング活動が集中させる傾向にあります。

次に、西口氏は1980、90年代小売業の事例としてウォルマートとKマートの出店競争と利益と売上の関係について解説しました。ロイヤル顧客20%に集中、しっかりと利益を中長期的な視点で投資を継続した結果から、いかにロイヤル顧客への戦略が重要であるか、を説明しました。

顧客とマーケットを9つに分解し、施策を考える

ロイヤル顧客2割を見極める手法について議論が移り、未認知からロイヤル顧客を次回購入意向(NPI)でセグメントする「9segs」という手法を紹介しました。
利益に貢献するロイヤル顧客、一般顧客、離反顧客、ブランドを認知しつつも購入に至っていない顧客、ブランド自体を未認知の顧客を分解し、それぞれのセグメントの割合を可視化し、マーケティング施策を考えるという手法です。

それぞれのセグメントの現状を理解により高度なセグメントに移行させていくかのアプローチを考えていくことで、具体的なマーケティング施策(HOW)も効率的に考えられる、というまとめで講演を締めくくりました。

アソビュー社による顧客起点マーケティングの実践背景

最後のパネルディスカッションでは、顧客起点マーケティングを実践し、大きな成果をあげたアソビュー株式会社の宮本 武尊氏と取り組みを支援したM-Force株式会社 長 祐氏もパネリストとして参加。モデレーターは株式会社博報堂マーケティングシステムコンサルティングの大谷 俊裕氏が務めました。

株式会社博報堂マーケティングシステムコンサルティング 大谷 俊裕 氏
株式会社博報堂マーケティングシステムコンサルティング 大谷 俊裕 氏

大谷氏から、西口氏の講演内容を踏まえ、顧客起点マーケティングを実践してきたアソビュー宮本氏に実際の取り組みの実際や変化について問いかけました。休日の遊び予約サイト「アソビュー!」を運営するアソビューは、2012年にリリースしたサービスの成長が、2017年頃に鈍化し始めました。「当時はSEOやSEMといったプロモーションの手法をどう改善していくか、営業部門も独自で活動し、それぞれの部門が部門最適型で個別に活動していた。」と宮本氏は語りました。

WHOをきちんと特定することで、売上を5倍に

その後、アソビューはコロナ禍もあり、会社は存亡の危機を迎え、改めて顧客起点マーケティングを見つめ直し、ロイヤル顧客に注目、最重要なロイヤル顧客へのインタビューセッションと購買分析(N1分析)を展開、徹底的に顧客を理解する取り組みを行いました。

アソビュー株式会社 宮本 武尊 氏
アソビュー株式会社 宮本 武尊 氏

サービス開始してから、主要顧客を20代に設定し、ビジネスを展開してきました。N1分析を繰り返す中で見えてきたのは、小学校高学年以下の子どもがいるファミリー層の重要性でした。特にLTVの観点ではファミリー層の重要性は顕著だったと述べます。「私(宮本氏)と代表でインタビューを実施、顧客理解の解像度をあげてから、部門ごとに少しずつ視点を変えたインタビューを実行していきました。顧客理解の解像度が上がるにつれ、営業、マーケティング、プロダクト開発の優先度が変わり、オペレーションも一変しました。」と宮本氏は述べます。同社は顧客起点マーケティングを開始した2018年から毎年1.6倍の成長を遂げており、2018年比で売上を4〜5倍にすることに成功しています。

この顧客起点マーケティングの実現インフラとして採用されたのが、顧客エンゲージメントプラットフォームであるBrazeです。宮本氏は「フルスクラッチで開発するには膨大なコストがかかる、現時点では、高機能でスケーラビリティーがあり、柔軟性に富んだBraze以外の選択肢はない」とその意義を語りました。

顧客起点マーケティングを成功させるポイント

さらに、ディスカッションは顧客インタビューの規模感、顧客起点マーケティングに対する経営サイドからのコミットメント、実際の打ち手まで話題が広がりました。

N1分析や9Segsを活用し、数多くのクライアント企業の支援している長氏は、「スタートポイントはまずはN1インタビューで顧客理解を始めること。企業が理想的と考える顧客数名から始め、価値観や嗜好性の共通点が見出せれば、ロイヤル顧客を増やせる大きなきっかけを掴めると思います。」と意見を述べました。西口氏は、「とにかくロイヤル顧客が考えること、嗜好性、傾向を徹底的に理解すること、経験上、20名以上が理想だがとにかく始めること、手法やどういう問いかなどを考える前にまず、聞いてみること、実践することで見える世界が変わってくる。」と話しました。

M-Force株式会社 長 祐 氏
M-Force株式会社 長 祐 氏

様々な業界からの参加者による懇親会

パネルディスカッションの後は、ネットワーキングがスタート。経営者の皆様、マーケティング責任者の皆様が、業界を超えた異業種交流、最新情報を共有するまたとない機会になりました。

次回のGet Real with Brazeは来年の春に開催します。これからもより良い社会をマーケティング起点で作りたいと願うビジネスリーダーに魅力的なコンテンツとネットワーキングの場を私たちは提供していきます。


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