スマートフォンが世間に浸透するとともに身近なものとなった「プッシュ通知」。しかし、いざその特徴や仕組みを説明しようとしても、よくわからないという方が多いのではないでしょうか。
この記事では、プッシュ通知の特徴や種類、仕組み、ビジネスにおけるメリット、押さえておくべき注意点、配信に活用できるツールなどをご紹介します。
1. プッシュ通知とは
プッシュ通知とは、パソコンやスマートフォンなどのデバイスに向けてメッセージを送信できる機能です。代表例として、私たちが毎日見かける、スマートフォンのロック画面に並ぶ短文のメッセージが挙げられます。
通常プッシュ通知は、その通知をタップするだけで指定のサイトやアプリを直接開けるため、ユーザーの利便性が高いのが特徴です。企業視点でも、リアルタイムに情報送信ができるなどのメリットがあり、現代のマーケティングに欠かせない機能として注目されています。
【関連用語】プッシュ通知についてはこちら
2.プッシュ通知の仕組み
プッシュ通知は、利用端末や環境により、それぞれ異なる仕組みで配信されています。ここでは、その中の代表的な例をご紹介します。
1. iPhoneのプッシュ通知の仕組み
iPhoneでは「APNs(Apple Push Notification Service)」と呼ばれる仕組みによりプッシュ通知を配信しています。
ユーザーがiPhoneまたは各アプリ上でiPhoneへの通知を許可する設定をしておくと、サーバーに「トークン」と呼ばれるデバイス識別用の情報が送信・登録されます。そのうえで、事業者がサーバーに通知配信のリクエストを送ると、このトークンを元に個別のデバイスへプッシュ通知が届く仕組みです。
2. Androidのプッシュ通知の仕組み
Androidのプッシュ通知もiPhoneと原理が似ていますが、こちらは「FCM(Firebase Cloud Messaging)」と呼ばれる仕組みを採用しています。
ユーザーがAndroidデバイスから通知を許可すると、サーバーに「ID」と呼ばれるデバイス識別用の情報が送信・登録されます。それにより、事業者のリクエストに応じて、このIDを元に各デバイスへプッシュ通知が届きます。
なおAndroidは、従来は「GCM(Google Cloud Messaging)」と呼ばれる仕組みを採用していました。こちらは2018 年4月にサポートが終了し、FCMへの移行が進められています。
3. API(ブラウザ)のプッシュ通知の仕組み
ブラウザからのプッシュ通知では、端末を問わず「API(Application Programming Interface)」と呼ばれる複数のプログラムやアプリケーションを繋ぐ仕組みが採用されることもあります。
ネットサーフィン中に表示される「○○(サイトやドメイン名)が通知の許可を求めています」のような通知が、APIによるプッシュ通知の一例です。サイト訪問者に対して「通知の可否」を問い、許可された場合には識別情報がサーバーに送られ、以後はその情報を元にプッシュ通知が配信されます。
4. PWAのプッシュ通知の仕組み
PWA(Progressive Web Apps)とは、Webサイトをアプリのように動かせる仕組みです。Webサイトでありながらアドレスバー(URLバー)なしでフルスクリーン表示ができるなど、本物のアプリのように動作します。
PWA上でプッシュ通知を送る際には、「Notification API」や「Push API」などのAPIを利用する形が一般的です。他の仕組みと同様、ユーザーの許可を取得したうえで通知を送信します。
3. プッシュ通知の種類
プッシュ通知は「○○プッシュ通知」と細分化して語られることがあります。ここでは、使用されやすい4つの分類をご紹介します。
1. リモートプッシュ通知
リモートプッシュ通知は、インターネットを通じてサーバーからデバイスにメッセージを送る通知です。リアルタイムに情報を通知できるのが魅力で、セール情報を伝えるなど、マーケティングでも頻繁に利用されます。ネットに接続していないデバイスには通知を送れない点がデメリットです。
2. ローカルプッシュ通知
ローカルプッシュ通知は、インターネットに接続していないデバイスでも利用できる通知です。端末内のアプリによりサーバーを介さず実行されるのが特徴で、例えばカレンダーアプリによる予定のリマインダー、目覚ましアプリによる起床時間のアラートなどが該当します。
3.リッチプッシュ通知
リッチプッシュ通知は、画像・音声・動画といった文字以外の要素も配信できる通知です。従来よりも色々な情報を送れるプッシュ通知だからリッチなプッシュ通知、と捉えると理解しやすいかもしれません。多数の情報を一度に配信できるため、顧客へのより自由なアプローチが実現します。
4. Webプッシュ通知
Webプッシュ通知は、プッシュ通知の中でもWebブラウザを介して送られるものを指します。前述の「API(ブラウザ)のプッシュ通知の仕組み」でご紹介したものです。
誤解されることもありますが、Webプッシュ通知では、一度許可を取得した後はユーザーがサイトを閉じていても通知を送れます。
詳細は以下の記事も併せてご確認ください。>
Webプッシュ通知の仕組みとは?通知のポイントやメリットについて解説
4. プッシュ通知のメリット
1. 最新の情報を提供できる
プッシュ通知はリアルタイムに情報を配信できます。例えば、ユーザーが今日のランチは何にしようかと考えるであろうお昼の時間をめがけて「本日新登場のおすすめ料理」を宣伝するなど、フットワークの軽いアプローチを実現できます。明日から臨時セールを行うなど、今すぐにでも顧客に知ってほしい情報を伝えることも可能です。
2. 継続して利用してもらえる
プッシュ通知でユーザーの役に立つ情報を定期的に送信することで、自社製品やサービスに対するユーザーの興味を繋ぎ止め、離脱を防ぎやすくなります。
また、プッシュ通知は一つのメッセージあたりの文章量が少ないことから、メルマガなど他の宣伝方法と比べて配信までの手間が最小限で済みます。そのため、継続的に施策を実行しやすいという宣伝側視点のメリットもあります。
3. 再来訪に繋がる
プッシュ通知は一度離れた顧客の再獲得にも役立ちます。アプリやサイトを開いていないユーザーにも送信できる仕組みを使い、顧客の好奇心をくすぐる文言を送信することで、アプリへの復帰や店舗への再来訪を期待できるためです。
送信する情報には、「(顧客の過去の購入履歴から判断した)おすすめ新商品」や「受け取ってすぐに使える割引クーポン」などが考えられます。
4. 集客や販売促進に繋げられる
最新情報のお届け、定期的な情報配信、休眠ユーザーへのアプローチ。ここまでにご紹介した3つのメリットにより、プッシュ通知は集客・販売促進に効果を発揮します。
また、クロスチャネルメッセージング(プッシュ通知、Eメール、アプリ内メッセージなどを組み合わせ顧客への最適なアプローチ方法を探る手法)に成功した場合、コンバージョン数を大きく増加させることも期待できます。
5. 顧客ロイヤリティの向上に繋がる
プッシュ通知はユーザー視点で見ても魅力のある仕組みです。「最新の割引情報をサイトやアプリを開かずに知ることができる」「気になる時にはワンタップで詳細を確認できる」など、手軽さに優れています。
また、プッシュ通知で優れた情報を送り続けることで、「顧客ロイヤリティ(顧客が自社ブランドや製品に対して抱く信頼や愛着)」の向上も期待できます。
顧客ロイヤリティを高めることの重要性やメリットは、以下の記事にて解説しています。
顧客ロイヤルティの重要性とは?向上させるメリットや顧客満足度との違いについて解説
5. プッシュ通知の注意点やポイント
プッシュ通知はメリットの多い仕組みですが、その効果を最大限に発揮するためには、注意しておくべきポイントもあります。
1. 通知頻度や内容を考える
手軽に情報を送りやすいのがプッシュ通知の魅力の一つですが、通知頻度や内容には細心の注意を払う必要があります。何度も同じ内容が送られてきたり、頻繁に通知が届いたりすると、ユーザーが不快に感じてしまう可能性もあります。最適な通知頻度は業種やターゲットによってさまざまですが、月に1回程度など想像以上に控えめにしたほうが良いケースもあります。
2. 通知時間は読まれやすい時間帯を見極める
頻度や内容とともに気を配りたいのが通知の時間帯です。一般的に「平日の18時~23時ごろ」が開封されやすい時間とされていますが、実際には自社のターゲットに合わせて調節する必要があります。
また、深夜や早朝の通知は避けましょう。ユーザーの眠りの妨げとなり、自社へのネガティブな印象が生まれてしまいます。
3. ユーザーに合わせた有益な情報を提供する
プッシュ通知を許可してくれるユーザーは、自社のファンあるいはこれからファンになり得る重要な相手です。通知から有益な情報を知りたがっている反面、質の低い情報を送れば強く落胆されてしまいます。過去の購買履歴や登録情報を分析し、顧客ごとにパーソナライズされた通知を提供することが求められます。
4. 読んでみたいと思われる文章を考える
情報そのものと同じぐらい、それを伝える文章も重要です。例えば、春の終わりに春物服のセールを行う場合、「6月15日~春物服値引き中!詳しくは店頭で」といった文章では、あまり興味は惹かれません。「次の春も先取り!春物30%OFFセール開催中。6月末まで」といったように、どのようなセールを行っているのか内容が読み取りやすい文言や、適切に絵文字も交えるなど、顧客の心をくすぐる必要があります。
6. 最適なプッシュ通知を送るにはBrazeの活用を
前述の通り、プッシュ通知で成果を上げるためには、一人ひとりに合わせた情報を適切な時間帯や頻度で配信する必要があります。その分析と実行の際には、「Braze」の活用をぜひご検討ください。
1. Brazeの機能を紹介
Brazeは、マーケティング施策の実行を支援するITソフトウェアツールです。直感的な操作を可能とするUIを搭載しており、エンジニアの工数をかけることなく、モバイル・Web(ブラウザ)からのプッシュ通知を配信できます。
顧客のこれまでの行動や属性を分析し、通知内容を適切に調節できるのもポイント。海外にも事業を展開している場合、顧客に合わせた言語でプッシュ通知をお届けすることも可能です。
2. 事例1
デジタルネイティブ世代の女性向けにファッション商品を提案する「Pomelo」は、Brazeによりコンバージョン率の向上に成功した企業です。
Pomeloは元々、スタイリッシュなレディース服をお手頃な価格帯で提供し人気を博していましたが、「より一人ひとりに適したプロモーションを行いたい」とBrazeを活用。他社CDPで取得したデータを元に顧客をセグメント化し、各属性に応じて最適な通知を検討しました。結果、コンバージョン数が300%も向上するなど、確かな成果を手にしています。
Pomeloが、Brazeをはじめとするマーケティングソリューションの活用でコンバージョンを300%増加
3. 事例2
ビデオストリーミングサービス「Showmax」は、Brazeによりリテンション率(顧客の維持率)を71%、加入者数を204%も向上させた企業です。視聴者を動画の好みや累計視聴時間、契約方法や視聴デバイスなどによりセグメント化し、前述のクロスチャネルメッセージングを用いてパーソナライズ化された情報を配信。顧客が「自分のための情報だ」と感じやすい仕組みを作り上げることに成功しています。
サービスから離れていた「休眠視聴者」が19%活性化するなど、新規・既存・休眠ユーザーすべてにアプローチできた好例です。
加入者数を204%増加させた Showmax社のセグメンテーション戦略
7. まとめ
この記事では、プッシュ通知について、その仕組みや種類、メリット、注意点をご紹介しました。
プッシュ通知はリアルタイムに情報を送れるなどの強みを持ちますが、一方で配信内容や頻度の最適化が必要不可欠です。闇雲に配信をするのではなく、その特性を理解したうえで配信しましょう。
なお、以下のページからは、プッシュ通知の機能や魅力をより詳細にまとめたレポートをダウンロードしていただけます。
レポートのダウンロードはこちら>プッシュ通知とは? その機能と重要性