既存顧客との関係強化、新規顧客の獲得、他社との差別化など、「ロイヤルティプログラム」は計り知れないメリットを秘めた施策です。
この記事では、ロイヤルティプログラムの意味や種類、メリット、実施する際のポイントや注意点、成功事例をご紹介します。
1. ロイヤルティプログラムとは
ロイヤルティプログラムとは、購買金額や利用頻度の多い優良顧客(ロイヤルカスタマー)に対して、特別な報酬や特典を与えるマーケティング施策のことです。
例えば、以下の取り組みが代表例として挙げられます。
年間の購買金額から決まる会員ランク制度と優待
優良顧客のみを招待する試遊イベント
優良顧客のみが参加できるシークレットセール
1. ロイヤルティの意味
前提として、ビジネスにおけるロイヤルティという用語は、「loyalty」と「royalty」の2つの英単語を指すことがあります。
loyaltyは「忠実」「義理」「誠実」の意味を持つ英単語。転じて、ビジネスシーンでは顧客が抱く忠誠心や愛着を指してよく使われます。
一方のroyaltyは、著作権や特許権などの「使用料」を表す言葉です。ロイヤルティプログラムのロイヤルティは、前者の「loyalty」にあたります。
2. ロイヤルティプログラムの目的
ロイヤルティプログラムの目的は、特典によって自社に対する愛情や親しみを深めてもらい、顧客をファンに育て上げることにあります。自社製品を継続して利用する価値を提供し、顧客の囲い込みを目指す施策です。
また、ロイヤルティプログラムは優良顧客に特典を与える施策ですが、「自分もあの特典を受けてみたい」と既存顧客の購買単価・頻度を向上させたり、新規顧客を呼び寄せたりする効果もあります。
3. 顧客ロイヤルティとは
顧客ロイヤルティとは、顧客が自社や製品に持つ愛着と信頼のことです。例えば、「化粧品は必ず○○(自社)のもの」などと、競合の存在が目に入らないほどに忠誠心(loyalty)がある状態を顧客ロイヤルティが高いと表現します。
ロイヤルティプログラムは、多くの顧客に対してこの顧客ロイヤルティを高めることを目指す取り組みです。
顧客ロイヤルティの重要性やメリットについては以下の記事もご確認ください。
>>顧客ロイヤルティの重要性とは?向上させるメリットや顧客満足度との違いについて解説
2. ロイヤルティプログラムの種類
ロイヤルティプログラムとは「優良顧客に与える特別な報酬や特典全般」を指し、その形式にはさまざまな種類があります。ここでは代表的な種類をご紹介します。
1. ポイント型
ポイント型とは、自社製品の購買金額に応じてポイントを付与する形式です。獲得したポイントは「1ポイント=1円相当」で利用できるなど、今後の購買に役立つ形が一般的です。
次の会員ランク・階級型と連動させ、上位ランクになるとポイントの還元率が向上したり、特定ランクへの到達報酬としてポイントを配ったりする仕組みもよく見られます。
2. 会員ランク・階級型
会員ランク・階級型とは、購買金額や頻度などから顧客をグループ分けする形式です。「年間で○○万円以上利用するとプラチナ会員」のように、特別感のあるランクを設置し、上位ランクには相応の特典を与えます。
3. 有料型
有料型とは、新たに一定の金額を支払うことで特典を受けられるロイヤルティプログラムです。
例えばECサイトであれば、「年会費1万円を支払って有料会員になると常に配送料が無料になり、限定アウトレットセールにも参加できる」といった仕組みが該当します。
4. ミッション主導型・社会貢献型
ミッション主導型・社会貢献型とは、自社製品の購買や利用を通じて顧客が社会的に意義のある活動に貢献できるロイヤルティプログラムです。「売上の1%が自然に優しい梱包素材の研究開発に利用されます」「10回ご利用いただくごとに、当社から○円を発展途上国に寄付します」などと、顧客が自社製品を購買・利用するだけで道徳的な貢献ができる形式を指します。
5. 無料特典型
無料特典型とは、優良顧客限定で新商品の試供品やサンプルをプレゼントするなど、名前の通りに無料で特典を与える方式です。他の型と比較して特別感があり、顧客ロイヤルティを大きく高める効果が期待できます。
ロイヤルティプログラムにはこのほかにもさまざまな種類があります。自社の顧客やビジネスモデルに適した種類を選択することが大切です。
3. ロイヤルティプログラムのメリット
続いて、ロイヤルティプログラムのメリットをご紹介します。
1. LTV(顧客生涯価値)の向上に繋がる
ロイヤルティプログラムはLTV(顧客生涯価値)の向上に寄与します。顧客の離脱を防ぎ、購買金額・頻度の改善を目指すことで、顧客が生涯を通じて自社にもたらす利益が拡大するためです。
LTVの重要性やLTVを高めるためのポイントは以下の記事で解説しています。
>>LTVの重要性や顧客の定着化を図るために−計算方法や高めるためのポイント
2. コストをかけずに効果が期待できる
ロイヤルティプログラムの実施には、必ずしも高額なコストは求められません。例えば、本来は不良在庫となるアイテムを優良顧客に配布するだけでも、それは無料型のロイヤルティプログラムとなります。
3. リピート率の向上に繋がる
前述の通り、ロイヤルティプログラムの主要な目的は、優良顧客に対して自社への愛着を高めて囲い込みを進めることです。その具体的な達成指標の一つにリピート率があります。ロイヤルティプログラムへの取り組みは、そのままリピート率向上の取り組みと同じだといえます。
4. 新規顧客の獲得に繋がる
優れたロイヤルティプログラムは口コミ効果を生み出し、新規顧客層に向けたアピールにもなります。例えば、ロイヤルティプログラムを受けた優良顧客がSNSでその内容を投稿し、多くの方に拡散されれば、広告費用のかからない優れた集客施策として機能します。
5. 競合他社との差別化が図れる
ビジネスの成功に欠かせない競合他社との差別化を図れる点も、ロイヤルティプログラムの魅力です。「ほかの場所では受けられない自社ならではの特典(例:オリジナルイベントへの招待や独自グッズの配布など)」を提供できれば、熾烈な価格競争からも抜け出すことができるでしょう。
4. ロイヤルティプログラムのポイントや注意点
ロイヤルティプログラムを成功させるためには、押さえておくべきポイントや注意点があります。
1. 顧客のニーズを把握する
ロイヤルティプログラムの根底にある思想は、優良顧客の自社への愛着や信頼を深めることです。まずは、「なぜ優良顧客は自社の製品を利用してくれているのか」「現在、優良顧客が不満に思っているものは何か」といった顧客ニーズを明確にし、それを解決できる内容を検討する必要があります。
2. ビジネスモデルに合わせたプログラムを選択する
自社のビジネスモデルに合わせてロイヤルティプログラムの種類を選ぶことも重要です。例として、自然環境や人権の保護を使命と掲げる企業がポイント型や会員ランク・階級型のロイヤルティプログラムで積極的な購買を煽っては、顧客から不信感が生まれます。このような企業の場合は、ミッション主導型・社会貢献型のロイヤルティプログラムが適しているでしょう。
3. 良質な顧客体験の提供が重要
ロイヤルティプログラムで提供する特典は、優良顧客に「今まで利用してきて良かった」と感じてもらえる優れた顧客体験でなければいけません。
例えば、高級路線のブランドが安価に見えるグッズを特典としてしまえば、自社から離脱する契機となるおそれがあります。
4. 手軽に参加できるような仕組みにする
ロイヤルティプログラムのなかには、多くの方が参加してこそ価値が生まれるものもあります。代表例となるのは、会員ランク・階級型です。多くの顧客が下位ランクにいることで、上位ランクに到達した優良顧客が特別感を得られます。
このような施策では、プログラム自体には手軽に参加でき、購買金額や頻度次第で特典に差が生まれるシステムが求められます。
5. プログラムを知ってもらうための宣伝が大切
ロイヤルティプログラムの特典内容は、一部の優良顧客に限らず多くの方に知ってもらえるように宣伝をしましょう。特典内容に惹かれた既存顧客がロイヤルカスタマーに育つ、新規顧客の獲得に繋がる、といったメリットを得やすくなります。
6. 効果検証を行い分析・改善をする
ロイヤルティプログラムは一度提供して終わりではなく、絶えず改善していく必要があります。アンケートやデータ分析ツールを活用して提供した特典に対する顧客の実際の反応を確認し、より優れた体験を与えられるよう磨き上げていきましょう。
5. ロイヤルティプログラムの事例紹介
最後に、ロイヤルティプログラムの成功事例をご紹介します。自社の取り組みを進める際の参考にしてみてください。
事例1
米国の大手アウトドア用品ブランドでは、売上の1%を環境保護団体に寄付するミッション主導型・社会貢献型のロイヤルティプログラムを実践しています。
同社は1970年代の創業後、1980年代にこの活動を始め、これまでに1億4000万ドル以上に相当する現金・現物の寄付を実施。現在では、同ブランドの売上高は世界全体で1,300億円といわれており、数え切れないほどの顧客を抱えています。
事例2
オーストラリア最大のカフェチェーンでは、Brazeを活用したロイヤルティプログラムにより、優良会員からの売上を35%増加させました。
この事例で特に活躍したのは、Brazeの「コンテンツカード」と呼ばれる機能です。コンテンツカードとは、ターゲットに合わせた多彩なコンテンツをアプリやウェブサイトに直接埋め込みる機能のこと。
同社は自社アプリ内にコンテンツカードを採用し、優良会員向けに適切な割引クーポンを配布することで、顧客の購買意欲の促進に成功しています。
>>The Coffee Club、クロスチャネルアプローチでロイヤルティ会員の売上が35%増加、アプリ評価も向上
6. まとめ
ロイヤルティプログラムとは、優良顧客に特別な報酬や特典を与える施策のことです。優良顧客を対象としているにもかかわらず、顧客全体の購買単価・頻度の上昇や新規顧客の獲得にも結びつく優れた施策として知られています。
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