LTV(Life Time Value)は「顧客生涯価値」とも呼ばれ、マーケティング活動には欠かせない指標として昨今注目を集めています。
この記事では、LTVの意味や重要性について解説します。あわせて、計算方法やLTVを高める方法についてもご紹介します。
1. LTV(ライフタイムバリュー)とは
LTV(Lifetime Value)とは、顧客一人(BtoBの場合は一社)が特定の企業やブランドで取引を開始してから終わるまでの期間(顧客がブランドと生涯において関わる期間)でどれだけの利益をもたらすかを算出したものです。
一般的にライフサイクルが長ければLTVは向上するため、ロイヤリティの高い顧客ほどLTVは高まります。一度購入して終わってしまうのではなく、顧客との関係を良好に長く保つことができれば、ブランドの価値はより高く認識され、利益はおのずと向上することになります。
2. LTVはなぜ重要?注目されるようになった背景
LTVが重要視される背景には、市場やビジネスモデル、顧客とのコミュニケーションの変化など、さまざまな理由があります。
1. サブスクリプション型ビジネスの増加
多くのビジネスモデルが売り切り型からサブスクリプション型にシフトしていることは、LTVが注目される要因の一つです。
サブスクリプションで収益を上げるためには、顧客を増やすことに加えて、既存の顧客に繰り返し購入してもらうことが重要です。この点にLTVを高める施策が求められています。
2. 消費者行動の多様化による手法の変化
顧客のニーズが多様化し、商品やサービスにアクセスするチャネルも複雑化している現在。マーケティングの手法も、マスマーケティングから顧客一人ひとりに合った最適なコミュニケーションを行うOne to Oneマーケティングへと変化しています。LTVは、そのOne to Oneマーケティングを評価する有効な指標となります。
One to Oneマーケティングについては以下の記事でより詳しく解説しています。
>>One to Oneマーケティングで得られる効果とは?さまざまな手法やメリット、課題まで徹底解説
3. 新規顧客の獲得が困難になった
商品が飽和する成熟市場において新規顧客を獲得することは容易ではありません。新規顧客を獲得するためのマーケティングコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかるともいわれています。そうしたなか、少ないマーケティングコストで良質な顧客の定着化を図るにあたりLTVの最大化を目標として掲げる企業が増えています。
3. LTVの計算方法
では、LTVはどのようにして算出すれば良いのでしょうか。その計算式と具体例をご紹介します。
LTVの計算式
LTVを計算する方法はビジネスモデルによって複数ありますが、例えば以下のような計算式でLTVを求めることができます。
- LTV=平均購買単価 × 収益率 × 購買頻度 × 継続期間
- LTV=平均購買単価 × 収益率 × 継続年数
サブスクリプション型のサービスでは、次の計算式も活用されます。
- LTV=平均購買単価 × 粗利 ÷ 解約率
計算式を使った例
実際に計算式を使って例を紹介します。
例1) 3ヶ月で使い切る5,000円のサプリメント(収益率40% )を3年間継続購入する場合、LTVは2万4,000円となります。 LTV=平均購買単価 × 収益率 × 購買頻度 × 継続期間 5,000 円×40%×(12 / 3回)× 3年= 2万4,000円 |
例2) 1万円で購入したソフトウェア(収益率60%)を次のバージョンが出る2年後まで使う場合、LTVは6,000円になります。 LTV=平均購買単価 × 収益率 × 継続年数 1万円x60%x2年=1万2,000円 |
例3) 平均購買単価2,000円の音楽配信サービス(粗利70%)の解約率(チャーンレート)が10%の場合、LTVは1万4,000円になります。 LTV=平均購買単価×粗利÷解約率 2,000 円/月x 70%/10%= 1万4,000円 |
なお、以上の計算式では顧客獲得や維持に必要なコストは考慮されていません。LTVからコストをマイナスした値を指標とすることもあります。
4. LTVと合わせて知っておくべき指標
続いて、LTVと関連するマーケティング指標についてご紹介します。
1. CAC
CAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得単価)とは、新規顧客を一人獲得するために必要なコストのことです。新規顧客獲得コスト合計÷新規顧客獲得数で求められます。
新規顧客獲得コストには、マーケティングや営業における広告費・人件費など、新規顧客を獲得するのに必要としたすべてのコストを含みます。
2. CPA
CACと似た用語にCPA(Cost Par Acquisition:顧客獲得単価)があります。CPAも新規顧客一人を獲得するために必要なコストを意味しますが、主にインターネット広告での指標として使われます。
3. ARPU /ARPA
ARPU(Average Revenue Per User)とは、1ユーザーあたりの平均売上金額を示します。
一方、ARPA(Average Revenue Per Account)は1顧客あたりの平均売上金額のことです。
ARPUはB to C、ARPAは複数ユーザー分をまとめて企業1社が契約するB to Bにおいて、主にSaaSビジネスの指標として使用されています。
4. MQL
MQL(Marketing Qualified Lead)は、マーケティング部門によって確度が高いと選別されたリード(見込み客)を指します。マーケティング部門がリードナーチャリング活動を行って選別したMQLは、商談可能なリードとして営業部門に引き渡されます。
5. SQL
SQL(Sales Qualified Lead)とは、営業部門によって確度が高いと選別されたリードのことです。営業部門が電話や訪問などの営業活動を通して得た結果をもとに、受注の見込みが高いリードをSQLとして選別します。
6. ユニットエコノミクス
ユニットエコノミクスとは、単位(ユニット)あたりの採算性を意味する指標です。一般的には、1顧客を1単位として顧客ごとに得られる収益をその顧客獲得コストで割って算出します。「LTV÷CAC」の計算式で求められます。
7. チャーンレート /リテンションレート
チャーンレート(顧客解約率)とは、顧客が取引を解約する割合を示す指標です。また、リテンションレート(顧客維持率)とは、一定期間に取引を継続している顧客がどれだけいるかを示す指標です。解約率とは相対する関係にあります。
LTVの最大化においてチャーンレートやリテンションレートが重要なのは、新規顧客獲得よりも既存顧客維持の方がコスト面で有利であるからです。
5. LTVを高める方法
LTVの計算式から、LTVを高めるためには解約率以外の各要素を高めれば良いことが分かります。そこで、LTV計算式の各要素を高める具体的な方法を挙げていきます。
平均購買単価をあげる
まず、平均購買単価を上げる必要があります。その方法としては下記が考えられます。
- 商品単価を上げる
- クロスセルを促進する
- アップセルを促進する
単純な方法としては商品の値上げが考えられますが、商品の値上げには顧客が離脱するリスクもあります。そこで「クロスセル」や「アップセル」を促します。
関連購買を意味するクロスセルの方法としては、セット販売や関連商品のレコメンデーションなどがあります。まとめ買いを促したりセット商品を提供したりすることで、平均購買単価アップを狙うことができます。
アップセルは購買単価を上げることを意味し、より上位品などに切り替えてもらう、複数の商品バリエーションを用意するなどの方法があります。
新機能を搭載した上位モデルや充実したサービスを提供する上位プランへの移行を促すことで、平均購買単価を上げるための有効な策となります。
購買頻度をアップさせる
購買頻度をアップさせるには以下の2つが考えられます。
- 使い切りタイミングでのリマインドメールの送信
- 適正なタイミングで配送する定期便
購買頻度を上げるためには、商品を適切な使用サイクルで使い切ってもらいリピートしてもらう必要があります。ちょうど商品を使い終わるタイミングでリマインドのメールを送り、リピートオーダーを促します。
また、購買頻度をアップさせる方法には、定期便配送のように適正なタイミングで商品を自動発送する方法もあります。家庭内在庫にならないよう購入時に正しい使用量を案内すると正しい使用サイクルで使い切ってもらえるほか、顧客満足度向上にも繋がります。 購買・契約期間の最大化をする
LTVを高めるためには、購買・契約期間を最大化させる必要があります。
購買期間や契約期間を最大化させるためには、ブランドへのロイヤリティを高める必要があります。リマインドメールに加えて、顧客の気持ちをつなぐためにメルマガなどで常にコミュニケーションを取っておく方法もあります。
メルマガには、自社の商品の売り込みだけでなく、商品の使い方や関連情報などを盛り込みます。顧客にとって読む価値のある情報提供が重要です。
コストを抑える
LTVを高めるためには、収益率の向上のために原価やコストを抑えることも重要です。その方法としては下記があります。
- 複数社からの相見積もり
- 2社購買
メーカーなどモノづくり企業では、商品を製造するための部品を調達する際、複数メーカーの相見積もりによって価格を競わせることがあります。
また、同じ資材を2社から購入する2社購買を採用し、2社に競わせることで仕入れコストを抑える方法を取ることがあります。逆に、1社購買にまとめてボリュームディスカウントを交渉することもあります。
6. LTVを最大化させるメリット
LTVを最大化させるための取り組みは、多くのメリットを享受できる好循環を作り出します。
コストの削減ができる
新規顧客の獲得には、既存顧客維持の約5倍のコストがかかると考えられています。既存顧客のLTVが最大化できれば、顧客獲得に要するコストを低減させることができます。
ブランド力の向上つながる
LTV最大化のためには、顧客満足度を向上させる良質なブランド体験や価値を提供していくことが必要です。この取り組みはブランド力を向上させることにも繋がります。
ブランド力が向上すれば、既存顧客からの紹介や口コミによって新規顧客を獲得することも期待できるでしょう。
リピート客の増加が見込める
顧客の商品やブランド・企業に対するエンゲージメントが高まれば、顧客自らが継続的に価値を見出せるようになります。すると顧客は離脱せずに定着し、リピート購入が増えることになります。
収益の安定化が図れる
リピート客が増加することで、営業活動における費用対効果が向上します。
さらに、企業にとって継続的で安定した収益をもたらします。
企業成長に繋がる
顧客一人ひとりの購買行動や好みにマッチした効果的なマーケティング戦略を実践することによって、LTVの最大化は実現できます。
したがってLTV最大化の取り組みは、収益の安定化のみならず、複雑化する顧客ニーズや変化に富んだ環境に対応可能な企業への成長を促してくれるでしょう。
7. LTVを向上させるためのポイント
LTV向上を効果的に実現するには、いくつかの実践上のポイントを押さえておく必要があります。
顧客データを活用する仕組み・組織作り
まず、顧客データの活用を可能とする仕組みづくりや組織作りが大切です。
LTVを高めるためには、計算式で見た購買単価や購買頻度、継続期間などの各要素の値を高めなければなりません。ここで、顧客のデータを継続的・全社的に収集し一元化して活用する仕組みが求められます。
多くの場合、システム側の仕組みに加えて、社内の組織も変えていく検討が必要となるでしょう。
顧客データの分析から適切な顧客アプローチの把握
顧客の購買履歴、顧客の属性や行動情報などのデータを収集し、一元管理可能な仕組みに集約します。このデータを分析して顧客をスコアリングします。
顧客データの分析結果から、顧客へのアプローチについての適切なタイミングやコミュニケーション方法を把握できるようになります。
データ一元化とマーケティング自動化を促進するツールの導入
LTVを高めるためには、顧客情報を一元管理して分析可能なMAやCRM、CEPなどのマーケティングオートメーションツールの導入が効果的です。各ツールの概要を解説します。
1.MA
MA(マーケティングオートメーション)とは、企業におけるマーケティング活動を自動化・効率化する仕組みのことです。MAツールを活用することで、見込み顧客の発掘(リードジェネレーション)、自社の商品・サービスへの購買意欲向上(リードナーチャリング)が効率的に行えます。
MAについては以下の記事もご参照ください。
>>マーケティングオートメーション(MA)とは?基本機能や導入メリット・選び方を紹介
2.CRM
CRM(Customer Relationship Management顧客関係管理)とは、顧客情報を分析し、顧客との良好な関係を構築するための手法、およびそのツールのことです。CRMツールを活用することで、顧客情報の分析結果をもとにした意思決定が行えるようになります。関連購買のクロスセルや、より高価格な商品の購入を促すアップセルにつなげていくことも可能です。
3.CEP
CEP(カスタマーエンゲージメントプラットフォーム)は、顧客の行動や状況をリアルタイムで把握し、顧客が心地良いと思えるコミュニケーションを実行するための基盤として機能します。
MAとCEPについてさらに知るには、こちらの記事が参考になります。
>>マーケティングオートメーション(MA)とカスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP )の違い・実現可能なこととは
カスタマーエンゲージメントプラットフォームのBrazeでは、アプリ、Web、店頭など複数チャネルから顧客情報や行動データを収集し一元管理できます。Brazeを活用することで、顧客の行動に応じた適切なアプローチが可能となります。
8. LTVを向上させるための施策事例やBrazeの機能を紹介
最後に、LTV向上の具体的な事例や、LTV向上の実現に役立つBrazeの機能をご紹介します。
上位有料プランへの移行率約5倍を実現したNewsPicksの戦術
LTVを大幅に向上させた事例として挙げられるのが、ニュースアプリ「NewsPicks」です。
NewsPicksでは、月額プランと比較すると年割プランのほうが離脱率(チャーンレート)は下がる傾向にありました。月額プランのユーザーをいかに年額プランに移行させるかが、NewsPicksにとっての重要課題でした。
そこで、NewsPicksではBrazeを導入。月額プランのユーザー向けに更新約10日前に年割プランを案内する施策を取ったところ、年額プランへ移行するユーザーがそれまでより3~5倍に増加するという結果を得ました。
>>誰もがパパッと仮説検証、上位有料プランへの移行率約5倍を実現したNewsPicksの戦術
LTVを高めるためのBrazeの機能
Brazeは、顧客の属性・行動・嗜好に合わせリアルタイムにアプローチ可能な、クロスチャネル機能を統合したプラットフォームです。LTVを高めるために有効な機能を数多く備えています。
- 最新データ収集と即時分析機能
多様なチャネルからリアルタイムにデータ収集し即時に分析。結果は詳細なレポートで確認できます。
- ノーコードでのアプローチシナリオ設計機能
Braze Canvasにて、顧客へのアプローチシナリオをノーコードで作成できます。アプローチシナリオには、リアルタイムでの顧客理解やメッセージング、さまざまな頻度やチャネルなどを盛り込めます。さらに、テストしつつ最適化を行い、顧客が適切なタイミング、適切なチャネル、適切なメッセージを受け取れるように自動的に調整できます。
- 顧客との最適なコミュニケーション機能
モバイルやWEBプッシュにより適切なタイミングでの行動喚起、離脱ユーザーの呼び戻しが可能です。アプリやWebサイト上でのインタラクティブなメッセージ配信も実現できます。
また、それぞれの課題に対応できる50のユースケースをまとめた「ひらめきアイデア大全 今すぐ使えるマーケティング施策50選」をぜひ参考にしてみてください。
9. まとめ
LTV向上を目指すことは、顧客のブランドへのエンゲージメントを高め、自社のブランド力の強化にも繋がります。さらに安定的な売上を見込むことができるようになります。
LTV向上の重要性を理解したら、Brazeを活用してLTV向上のためのアクションを起こしましょう。