PdM(プロダクトマネージャー)は、PM(プロジェクトマネージャー)やPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)などの類似職種と混同されやすい仕事です。
この記事ではPdMの役割と重要性、関連職種との違い、一般的な業務内容や必要とされる知識とスキル、キャリアパスや将来性までご紹介します。
1. PdM(プロダクトマネージャー)とは?
PdM(プロダクトマネージャー)とは、自社のプロダクトの開発から販売までを統括するリーダーのことです。ビジネス・開発の両サイドの視点が要求される高度な役職で、転職サイトでは年収1,000万円を超える求人も散見されます。
まずは、PdMの役割となぜ必要とされているのかを見ていきましょう。
1.1. PdMの役割
PdMの役割は幅広く、プロダクトの発足から収益化の成功にまで責任を持ちます。多種多様な業務に携わるのが特徴で、以下はほんの一例です。
【PdMの役割の一例】
事前の市場調査、顧客ニーズの分析
市場に求められているプロダクトの構想、企画立案
要件定義、開発プロセスの設計・統括(開発サイド)
マーケット戦略の立案・実行(ビジネスサイド)
製品の提供結果の測定、改善策の提示
上記全般における、リソースの管理
上記全般における、目標達成に役立つツールの選定・導入
「どのようなプロダクトを作るべきなのか」から実際に利益を挙げるところまで、そのすべてがPdMの統括する業務です。
無理のない開発プロセスを定め、自社製品が市場を席巻するための戦略を立案し、必要に応じてそれらの過程をサポートできる適切なツールの選定まで自ら行います。
1.2. PdMの必要性
PdMの必要性は「部門の垣根を越え、全社一丸となった形でプロダクトを成功させられること」にあります。
開発サイドにもビジネスサイドにも携わるPdMは、両者の橋渡しとなる役割を持てます。PdMのリーダーシップにより、「開発が市場ニーズを軽視した製品を作る」「営業が実現困難な要求を開発に出す」といった多くの企業が悩む問題を避けることが可能です。
また、近年は「アジャイル開発」などの短期間で開発→提供を繰り返す手法も浸透してきました。社内外の豊富な情報を把握し、次の一手を素早く指示できるPdMの存在感が増しています。
2. PM・PMMとの違い
そんなPdMには、混同されがちな役職として「PM(プロジェクトマネージャー)」と「PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)」があります。それぞれの違いを見ていきましょう。
2.1. PM(プロジェクトマネージャー)との違い
PMとは、あるプロジェクトの計画から成功までを導く責任者です。プロジェクトに関する計画立案や進捗管理、リソースの配分などを担います。
PdMとPMはよく似ていますが、担当範囲と主な視点に違いがあります。
【PdM(プロダクトマネージャー)とPM(プロジェクトマネージャー)の違い】
PdM(プロダクトマネージャー) | PM(プロジェクトマネージャー) | |
担当範囲 | プロダクト全体 | ある特定のプロジェクト |
主な視点 | 社内、社外どちらも(市場動向の確認など外部も注視) | 基本的に社内を重視(進捗確認など社内のチームに目を向ける) |
また、一つの指針として、PdMは「なぜ、どのような製品を作るのか(why、what)」、PMは「いつまでに、どうやって製品を作るのか(when、how)」を担う点が、区別される点ともいえるでしょう。
ただし、PdMとPMが同一の役職として募集されることもあるなど、企業によってその扱いは異なるのが実情です。
2.2. PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)との違い
一方のPMMは、プロダクトのマーケティングに関する側面を統括する立場です。営業やプロモーションなど収益面の責任者として活動します。
PdMとPMMの違いは、PdMは開発・ビジネスの両サイドに関わるのに対して、PMMは開発には関わらない点です。
もともと、PMMはPdMの負担軽減のために誕生した仕事だといわれています。すなわち「PdMのビジネスサイドの役割を独立させた職種がPMM」です。
ここまでをまとめると、PdM・PM・PMMの特徴と違いは以下の通りです。
【PdM・PM・PMMの特徴】
名称 | 特徴 |
PdM(プロダクトマネージャー) | プロダクトの責任者。開発・ビジネスの両サイドを統括し、取引先との交渉など社外業務も多い。 |
PM(プロジェクトマネージャー) | プロジェクトの責任者。開発を順調に進めるなど、主に社内の業務を担う。 |
PMM(プロダクトマーケティングマネージャー) | PdMからビジネスサイドの業務を独立させた役割。営業やプロモーションなど主にプロダクトの収益面に責任を持つ。 |
3. PdMの業務内容
続いて、PdMの一般的な業務内容を見ていきましょう。
3.1. プロダクトの戦略・企画立案
PdMの最初の業務は、これからはじめるプロダクトの戦略・企画の立案です。市場トレンドや自社の現状に関する分析(例:SWOT分析など)から新規プロダクトを考案し、必要なロードマップを定めます。
プロダクトの方向性や仕様、開発のスケジュールはキックオフミーティングなどの関連部門との話し合いを経て調節していきます。
3.2. マーケティング戦略の立案
PdMの仕事は良い製品・サービスを作るだけでなく、十分な利益を挙げてはじめて成功だといえます。
プロモーション施策の考案や販売チャネルの選定、具体的なKPIの決定など、マーケティング戦略の立案を当該部門とともに進めます。
企業体制にもよりますが、人材の割り当てや必要なITツールの選定・導入といった「マーケティング活動を進めるための具体的な道のり」を整えることもPdMの業務範囲です。
3.3. 開発プロセスの指揮・監督
開発プロセスを示した後、スケジュールを円滑に進めるために指揮・監督をするのもPdMの業務です。開発サイドと頻繁にやり取りをし、現場からの要望に応じて人的リソースの配分を変えるなど、遅滞なく開発が進むように調整します。
ときには当初の予定からプロダクトの仕様を一部変更するなど、納期と品質のバランスを取る役割も求められています。
3.4. 製品の効果検証・改善提案
無事に製品が市場に登場した後にも、PdMはその結果を分析し改善策を提案します。「期待したユーザー数や売上に到達したか」「KPIを達成できたか」「できていないのであればどこで躓いているのか」など、お客さまの声や開発・販売現場の意見を参考にしつつ、次のロードマップを導き出していきます。
4. PdMに必要とされる知識やスキル
では、PdMとして活躍するためにはどのような知識・スキルが求められるのでしょうか?
4.1. システムに関する知識
PdMには現実的なプロダクトの仕様や開発プロセスを考案できるだけの、システムに関する知識が必要です。
たとえ優れたアイデアがあろうとも、地に足の付いた形でプロダクトに落とし込めないのであれば、PdMとしては力不足です。可能であれば実際に開発経験を持つことで、技術的なフィードバックを開発部門に与えやすくなります。
4.2. マネジメントスキル
PdMにもっとも必要とされる能力がマネジメントスキルです。プロダクトのスケジュールを遅滞なく進行させるために、タスクの優先順位を決定し、全体のリソース配分を指示しなければいけません。
あわせて、万が一のトラブル時にもう一度プロダクトを軌道に乗せるための、臨機応変な問題解決能力も求められています。
4.3. マーケティングスキル
ビジネスとしてプロダクトを成功させなければならないPdMには、マーケティングのスキルも必須です。
そもそものプロダクトの方向性を見つけるための市場分析力はもちろん、競合他社に負けない販売施策を考案できる力も求められます。少なくとも、当該部門から上がってきた案に適切なアドバイスができるだけの知見は欠かせません。
4.4. コミュニケーションスキル
PdMは社内外のさまざまな相手とやり取りをするのも特徴です。社内の上層部に直談判をしたり、顧客との対話からニーズを引き出したり、ときには取引先との交渉を主導する役割も担います。
開発や営業・マーケティング部門の社員との対話も頻繁にあり、コミュニケーションが得意な方であれば業務を円滑に進めやすくなります。
4.5. デザインスキル
自社の業種や体制によっては、PdMは製品・サービスのUX/UIに関するアドバイスも行います。そのような場合、「現在のUIはユーザー目線で使いやすいだろうか」「どのように調節を加えれば使い勝手が向上するだろうか」と判断できるだけのデザインスキルが求められます。
また、高度なデザインスキルを持つと優れたプレゼン資料を用意できるため、各種交渉がスムーズに進みやすくなるのも魅力です。
5. PdMに資格は必要?
PdMには「医師免許」のような必須資格はありません。しかし、企業によっては特定の資格の取得を求めています。
また、前述のPdMに求められる広汎な知識・スキルを持つ証明としても資格の取得は有効です。
以下は、PdMとして活躍するために役立つ資格の一例です。
【PdMに役立つ資格の一例】
ITストラテジスト試験
システムアーキテクト試験
プロジェクトマネージャ試験
中小企業診断士試験
PMP®(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)試験
ただし、企業の命運をも左右する重要ポストであるPdMは、資格以上に実務経験や実績が重視される傾向にあります。
6. PdMのキャリアパスや将来性
最後に、PdMのキャリアパスと将来性についてご紹介します。
6.1. キャリアパス
通常、PdMは「ジュニアプロダクトマネージャー」→「プロダクトマネージャー」→「シニアプロダクトマネージャー」→「CPO(最高プロダクト責任者)」とキャリアを進めていく形が一般的です。
また、そもそものPdMへの就任には、以下のような部門・職種からの社内昇格がよく見られます。
【PdM(プロダクトマネージャー)への昇格を期待できる部門・職種】
システムエンジニア
マーケター
商品開発
事業企画
プロジェクトマネージャー
6.2. 将来性
ここまでにご紹介した通り、PdMはプロダクトの立ち上げから成功までを統括するリーダーです。自社ビジネスの成功を保証する存在であり、その重要性は計り知れません。
近年は、IT技術の発展やビジネスのグローバル化により、市場環境の移り変わりが高速化しているといわれています。市場ニーズを素早く分析し、価値のあるプロダクトの立案から提供までを実現できるPdMの需要は、今後ますます増加していくことでしょう。
7. まとめ
この記事ではPdM(プロダクトマネージャー)について、役割と必要性、PMやPMMとの違い、業務内容や必要とされる知識・スキルなどをご紹介しました。
PdMは製品・サービスの開発からビジネスとしての成功までを牽引する高度な役職です。企画立て、スケジュール管理、適切なツールの手配にリソースの配分など、その職務は多岐に渡ります。