「車輪の再発明」は必要ない
SDKと聞いて何を思い浮かべるでしょうか。少しITに詳しいマーケターの方は「SDK? 自分は開発までしないからあまり関係ないな」と思われるかもしれません。
しかし、デジタルのツールやデバイスが普及しマーケティングの幅が広がった今、企業やブランドのマーケティングに関わる全ての人にとって、SDKの理解は必須になったといえます。Webやモバイルアプリを使って、カスタマーへのエンゲージメントを高めていく上で、SDKの最新の動向を知ることはこれからのマーケティングの競争優位性につながるからです。順を追って説明しましょう。
SDKとは、ソフトウェア開発キットの略。アプリケーションの開発のためのプログラムやAPI、サンプルコードを組み合わせたツールのパッケージです。たとえば、家を建てることを想像してみてください。新たに家を作る場合、間取りやデザイン、自分のニーズに合った機能を検討し、建材の調達から組み立てまでをイチから行うとしたら大変です。相当な予算や時間が必要になるでしょう。通常は、窓やドア、天井など必要な生活機能を満たす資材や工法を導入します。リフォームであっても、キッチンや浴室などの資材は既存のものを導入すると思います。
ソフトウェアの場合も同じです。たとえば、モバイルアプリに支払い決済機能やソーシャルへの連携、カレンダーへの投稿機能を追加する時、それぞれのシステムを最初から開発する必要はありません。たとえば、Facebook iOS SDKのようなソーシャルメディアに連携するコードはすでに存在しており、そのコードを組み込むためのSDKを導入すればよく、「車輪の再発明」をおこなう必要はないのです。共通サービスの開発はSDKを活用し、エンジニアはよりコアな競争力になる部分の開発に注力できます。
SDK・APIについて詳しく知る
SDKは様々なプラットフォームのものがサードパーティから提供されています。ここまでは、一般的なSDKについてでしたが、それではBrazeは何が違うのでしょうか?
顧客のモーメントを捉える3つの機能
Braze SDKの特長は、「カスタマーエンゲージメントを高めるための機能を提供する」ことです。マーケターがデジタルによるキャンペーンでユーザーを購買に導き、LTV(顧客生涯価値)を高めるためには、「必要なメッセージが、適切なタイミングで届くこと」が必要です。そのために、BrazeのSDKは以下の3つの機能を提供しています。
1)リアルタイムな顧客行動の捕捉と分析
2)顧客のモーメントを捉えたメッセージの配信
3)顧客の反応状況の把握とフィードバックによる顧客理解の深化
1)はSDKをモバイルアプリやWebサイトに組み込んで、ユーザーの行動を捕捉するデータ処理の機能です。モバイルアプリやWebサイト上での行動情報は、SDKによって瞬時に捕捉され Brazeのプラットフォーム(CEP)のサーバー側に瞬時に送られます。プラットフォーム上に取り込まれたユーザーのデータは、リアルタイムに解析がおこなわれます。そして分析によりパーソナライズされたプロファイルに基づいて、メッセージがユーザーに送られます。
2)のメッセージの配信は、プッシュ通知、コンテンツカード、アプリ内メッセージ(In-AppMessage)の3種類があります。
プッシュ通知、コンテンツカードは、1)で分析されたプロファイルに基づいてサーバー側から配信されます。
Brazeの特長はこのデータの取得からメッセージの配信までのサイクルの高速性にあります。サーバーがデータを取得し、分析とパーソナライズを行い、メッセージを送るまでにかかる時間は、平均するとわずか1.1秒です。このスピードが「顧客のモーメント」を捉えるための生命線ともいえます。
アプリ内メッセージは、アプリ内でのポップアップを指しています。たとえば、ユーザーが特定のページを見た時や、あるレベルに到達した時など、あらかじめ想定される表示メッセージをBrazeのダッシュボードで設定しておくことで、たとえば地下鉄の中などオフラインの状況でも、リアルタイムにメッセージが表示されます。
3)では、発信されたメッセージでユーザーがどのような反応をしたかを把握し、その結果をさらにBrazeの顧客プロファイルにフィードバックするというサイクルを回します。メッセージへの反応の有無、チャネルの選好、クリック状況などを捕捉します。さらに、モバイルアプリやWebなどユーザーがどのチャネルやデバイスで反応してもSDKによって、顧客のプロファイルは一元化されます。
このように、「顧客行動の把握」、「メッセージの配信/表示」、「反応の把握」といったサイクルを回すことで、カスタマーエンゲージメントを向上させていくことがSDKの基本機能です。
アジャイルな導入と全世界で実証された信頼性
もうひとつの特長は、導入の速さです。Braze SDKの導入は非常に簡単であり、特別の開発スキルを必要とせず、開発期間も短納期ですみます。また導入も必要なモジュールを段階的に導入するため、アプリ全体の大掛かりな改修は必要なく、アジャイルなプロセスで開発を行うことができます。またSDKの容量も軽量なためアップデートによる影響も最小限で済み、開発コストを低減します。
既存アプリの機能を犠牲にせず追加できることも大きな特長です。たとえば、ソーシャル経済メディアの「NewsPicks」はBrazeを採用し、SDKの実装も含めて導入を2ヶ月で完了しました。数百万人のユーザーに適したメッセージを届けるアプリケーションのアップデートを成功させました。
また、スケーラビリティの柔軟性とセキュリティ面の堅牢性を兼ね備えていることもBraze SDKの特長です。全世界で50億以上のデバイスへの導入実績を持ち、膨大なデータ量を日々処理しています。世界1,000社以上のブランド企業による急激な拡大の中にあっても、安定的に稼働しており、日本でも楽天やメルカリといったMAUが膨大なサービスの運用を支えています。セキュリティの観点からも入念なテストを行っており、BrazeのSDKの利用によりユーザーデータが流出することはありません。
Brazeは設立当初よりIDFAに依存しないファーストパーティデータの取得の方法を採用しており、最近のAppleのプライバシー重視のポリシーやGoogleの脱Cookieの流れに呼応する、プラットフォームの変化にも迅速にキャッチアップしています。iOS / Androidについては、Braze本社には専任開発者を抱えたチームがあり、常に最新のOSのアップデートに対応しています。
以上、述べてきた BrazeのSDKの目的は、顧客体験の向上だけでなく、マーケター自身の顧客理解(顧客プロファイル)をより一層深めることになります。マーケターの方にも、ぜひBraze SDKを理解いただき、できれば触れていただければと思います。マーケターがSDKを知ることで、エンジニアとのコミュニケーションも円滑になり、より良いカスタマーエンゲージメントを生み出せるからです。
Atsushi Yoshinaga
Braze Japanのグロースエンジニア。Brazeをより身近で親しみやすい製品にし、より多くの人に活用してもらうことをミッションに日々活動中。