本コンテンツは、2022年12月1日にMarkezineに掲載済みの記事の転載となります。
タカハシ コウキ[著] / 関口 達朗[写] / MarkeZine編集部[編]
2022年11月、Brazeと博報堂がパートナーシップを締結した。同時に博報堂は、コロナ禍を経て生活者がオンライン上で企業とどのようなコミュニケーションを望むようになったのかを調査したレポートを公開した。レポートからはコロナ禍後の生活者が望む企業とのコミュニケーション方法が考察できたという。本記事ではBrazeの代表取締役の菊地真之氏と、博報堂のマーケティングシステムコンサルティング局局長の横山陽史氏に両社のパートナーシップの狙い、今後のCRMについて話を聞いた。
■2社が結ぶパートナーシップの鍵は“顧客起点”
——今回両社がパートナーシップを締結した背景について教えてください。
菊地:私たちBrazeは、デジタルで消費者とブランドとの関係構築を支援するカスタマーエンゲージメントフォームを提供しています。日本には2020年に進出したのですが、それにはある理由がありました。
私たちは2019年に、リサーチ会社と合同で生活者のブランドに対する心象を調査した「Braze ブランドヒューマニティインデックス」を発表したのですが、評定値で先進国が軒並み60%以上を記録する中、日本だけが50%台にとどまってしまったんです。
私たちはこの結果を不思議に思うと同時に、ビジネスのチャンスがあると判断し、日本に進出したのです。しかし、我々の力だけでは日本のブランドと生活者のエンゲージメントを高めるのには限界があります。そこで協力していただけるパートナーさんを考えた結果、日本で長く生活者発想を掲げてマーケティング領域での知見やコンサルティングにも強みを持つ博報堂とパートナーシップを結ばせていただくことになりました。
――博報堂の横山さんはいかがでしょうか?
横山:Brazeが今後の企業と生活者のコミュニケーションをより良いものにできると考えたためです。
私たち博報堂は、フィロソフィーである生活者発想のもと企業が生活者に対しどういったコミュニケーションを取っていけば幸せになれるのかを考え、様々な手段を用いてクライアントを支援してきました。そして、コロナ禍を経てコミュニケーションのオンライン化が加速しました。
この変化に対応するには、最適なタイミング・内容でメッセージを送る必要があり、それに対応しているのがBrazeでした。Brazeはリアルタイム性が高く、生活者が関心を持ったタイミングでメッセージを送ることができるため、より良いコミュニケーションが可能になると考えました。
コロナ禍を経て望まれるようになったコミュニケーションとは?
――パートナーシップにあわせて、博報堂は調査結果も発表していましたね。
横山:調査では、コロナ禍における企業と生活者のコミュニケーションのあり方について、生活者へアンケートしていきました。コロナ禍ではオンラインを中心に様々なコミュニケーション手段が増えました。
一方で調査を行った2022年9月頃は、新型コロナウイルスの感染拡大が一時的に落ち着いた時期でもあり、生活者がオンライン・オフライン問わず、それぞれにとって最適な購買行動を考えられるタイミングでした。
今回20代から50代の生活者の方々を対象に調査したのですが、調査結果としては多くの方が、数年前に比べて企業とのオンラインコミュニケーションが増えたと回答しました。また9割近くの方が、コミュニケーションのオンライン化を望ましいと捉えています。
アンケートではさらに、オンラインコミュニケーションのポイントを調査しました。一番に挙がったのは「わかりやすさ」、その後「気軽さ」「適切な情報」「最適なタイミング」と続きました。
そして8割以上の方が、企業がコミュニケーションを生活者の望む形に変えていった場合、継続意向が高まるとも回答しています。
つまり、企業が一人ひとりに合わせた最適なコミュニケーションを交わしていけば、信頼関係を築ける結果が得られました。
菊地:近年、生活者は自分を中心としたエンゲージメントを求めている傾向が見られます。一方で現代に存在する多くのCRMは、「企業が生活者に何を買わせたいか?」を念頭に置いた企業起点のCRMになっています。
今後は、「生活者が企業からどんな情報を受け取りたいか?」を探り、自身が体験したいものを提案する顧客起点のCRMが重視されていくと考えています。
顧客起点のCRM実現に必要なこととは?
――顧客起点のCRMが重要とのことですが、実現にはどういった取り組みが必要なのでしょうか?
菊地:企業が取り組まなければならないのは、生活者をコミュニケーションの起点に置き、欲しい情報をタイミング良く送るカスタマージャーニーを作ることです。生活者が何を提供されたいか、天気や株価など瞬間で変動してく外部要因も考慮したモーメントを探ることが求められます。そうすることで、生活者の欲しい情報を提供できる企業となっていくのだと考えています。
横山:これまでのCRMというのは、打てる施策が限られており、生活者のモーメントにおける気持ちや状況に答えきれるところまで至っていませんでした。
たとえば「雨の日に宅配ピザを買った人」がいた場合、外出をしたくないから買ったのか、その日がたまたま記念日で買ったのか、様々な理由が考えられます。理由によって欲しい情報も異なりますが、これまではそこまで顧客の気持ちや状況を捉えることができませんでした。
しかし現在はデジタル技術の発達によって、生活者の細かい情報を捕捉できるようになり、それぞれの生活者へタイムリーに情報を送れるようになりました。
この状況で企業に求められてくるのは、情報発信だけでなく、生活者のリアクションを正しく理解し、施策を改善するPDCAサイクルを回すことです。
菊地:生活者が「欲しくない」ときには情報発信しない視点も重要です。生活者のエモーショナルな部分に着目しエンゲージを高めていく企業が、今後生活者とのLTVを伸ばしていくのだと思います。
顧客起点のCRMに必要な組織、スキルセット、ナレッジをサポート
──両社はパートナーシップを通じてどのような支援を行っていくのでしょうか。
横山:Brazeのカスタマーエンゲージメントプラットフォームの導入・活用支援を博報堂のクライアントに対して行っていきます。
博報堂とBrazeは顧客起点のマーケティング、次世代のマーケティングシステムのあり方を追求している共通点があります。両社がパートナーシップを結ぶことで、企業が生活者のことをより深く理解できる支援をしていきたいと思います。
菊地:顧客視点のCRMを実現するには、組織やスキルセット、ナレッジそれぞれの改善が必要になります。これらの改善を支援できるよう、博報堂の持つ生活者起点のデータ、コンサルティング実績、そしてBrazeのカスタマーエンゲージメントプラットフォームを融合させて新しい顧客体験を実現したいです。その共同ソリューションの第一弾として、「HAKUHODO Marsys Onboarding(博報堂マーシス・オンボーディング)」のBraze版を開発し、2023年3月よりサービス提供を開始する予定です。
日本ならではのマーケティングDXを実現 両者が見据えるこれからとは?
――最後に今後の展望について教えてください。
菊地:先ほど調査結果で紹介したように、日本の企業と生活者のブランドエンゲージメントは低いのが現状です。これは日本でリアルに行われていたサービスのレベルが高く、デジタルで行われるサービスに人間味がなくギャップを感じてしまっていることに由来していると予想しています。
また現代のマーケティングはデジタルの活用が当たり前となり、非常に複雑化しています。そのためマーケターはマーケティングの知識だけでなく、エンジニアリングへの理解が求められるのです。
そのため両者で協力しながら、日本ならではのマーケティングDXを実現し、生活者の体験価値向上に貢献できればと思っています。
――横山さんはいかがでしょうか?
横山:現在、企業のマーケティングシステムはコロナ禍以前の状況を前提としたものがほとんどではないかと思います。一方で、コロナ禍で生活者から求められているコミュニケーションは大きな変化を遂げてきました。
こういった状況を踏まえ今後は、生活者にとって最適なプラットフォームを作っていく必要があると思っています。今回のパートナーシップを通じて、企業のコミュニケーションに新しい価値を生み出していける支援を行っていきたいです。
本記事のプレスリリース記事はこちら:
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