Cookie規制が強まるなか、ポストCookie時代への備えを進めることはマーケターの喫緊の課題となりつつあります。
この記事では、ポストCookie時代にはどのようなマーケティングの世界が広がるのか、今から行うべき対策やポイントとともにご紹介します。
1. Cookieとは?その種類と特徴について
Cookie(クッキー)とは、ユーザーがWebサイトを訪れた際に、その閲覧履歴やログイン情報などをブラウザに記録する仕組みのことです。発行者や共有の形により、以下の3種類に分かれています。
【Cookieの種類と特徴】
種類 | 特徴 |
1st Party Cookie (ファーストパーティークッキー) | 訪問したサイトが直接発行するCookie。原則的にそのサイト内でのみ機能する。 |
2nd Party Cookie (セカンドパーティークッキー) | 他社サイトで発行された1st Party Cookieのこと。他社の1st Party Cookieを自社が受け取って活用する場合に2nd Party Cookieと呼ぶ。 |
3rd Party Cookie (サードパーティークッキー) | 訪問したサイト以外の第三者が発行するCookie。訪問先以外のサイトでも機能する(ユーザーを特定&追跡できる)ため、広告施策に活用されている。 |
上記のうち、昨今のCookie規制やポストCookie時代のテーマで主に話題とされているのは、他サイトでも機能する3rd Party Cookieです。
1.1. Cookieの必要性
Cookieはこれまで、企業とユーザーの双方に利益をもたらす仕組みとして必要とされてきました。企業視点では顧客行動を詳細に把握しながらマーケティング施策を検討でき、ユーザー視点ではサイトの訪問時に毎回ログイン情報を入力しなくてもよいなどの利便性があります。
しかし近年、企業側のメリットである顧客行動の追跡が、ユーザーのプライバシーを侵害していると問題視されるようになりました。結果、Googleなどの大手ブラウザベンダーが3rd Party Cookieの廃止に向けて舵を取り、マーケターはCookieに頼らない広告手法を見つける必要性に迫られています。
2. ポストCookie時代とは
ポストCookie時代とは、Cookieが規制されたあとの時代のこと。転じて、Cookie以外の手段で顧客行動の分析やマーケティング施策を進めなければならない時代を指します。ポスト(post)は、「○○の次の」や「○○のあとの」という意味です。
マーケター視点では、ポストCookie時代は大きく以下の3点に特徴があります。
Cookieに依存しないマーケティング施策の準備が必須
ユーザーのプライバシーについて、より真剣に考える必要がある
1st Party データ(ユーザーが同意を得て直接取得したデータ)の価値が高まる
特に重要となるのは、ユーザーのプライバシーです。ポストCookie時代には、単にCookieの代わりを探すのではなく、ユーザーも納得できる形での個人情報の活用策を見つける必要があります。
3. Cookie規制の背景や強化による影響
なぜポストCookie時代にはユーザーのプライバシー保護が重要となるのか、ここでは、Cookie規制が強まる背景やその影響を深掘りしていきましょう。
3.1. Cookie規制の背景
Cookie規制が強まる背景には、人々のプライバシー保護意識の高まりと、大手プラットフォーマーの優位的地位濫用への懸念があります。
Cookieの活用により、企業はオンラインでのユーザーの行動を詳細に把握できます。しかし当初、多くの人々はそのことを理解していませんでした。しかし、Cookieの役割が知れ渡るにつれ、企業によるプライバシーの無断侵害であるとの非難の声が増えてきました。
また、GAFAMなどの大手プラットフォーマーの存在も規制の背景の一つです。大手プラットフォーマーは自社サービスのなかで莫大な個人情報を収集し、その情報を活かして市場での存在感をますます増加させています。このサイクルは優位的地位の濫用にあたると考えられており、Cookie規制により歯止めがかかることが期待されています。
3.2. Cookie規制による影響
マーケティング分野におけるCookie規制の影響としては、大きく以下の3点が挙げられます。
Cookie を利用したリターゲティング広告が制限される
Cookieを利用したWebサイト訪問者の計測が制限される
ユーザーがCookie取得の許可・拒否を選択できる必要がある
これまで、オンライン広告分野では、広告配信にも効果測定にも3rd Party Cookieが活用されていました。ポストCookie時代には新たな試みが必須であり、特にリターゲティング広告が機能しにくくなることは実務において大きなポイントとなります。
また、企業による個人情報の無断活用が問題となった背景とその後の法規制から、今後はCookie取得の許可・拒否をユーザーが自分で選択できる仕組みも必要です。詳細は以下の記事も併せてご確認ください。
>>Cookie規制とは?起こる影響や対策・注意すべきことを解説
4. ポストCookie時代に向けた対策やポイント
Cookie規制の背景や影響を踏まえたうえで、ポストCookie時代のマーケターに求められる対策を考えていきます。
4.1. マーケティング戦略全体の見直しが重要
ポストCookie時代を迎えるにあたり、マーケターにはマーケティング戦略全体の見直しが求められています。
Cookieの制限は、オンラインマーケティング分野における一つの転換点です。制限の背景には企業による個人情報の身勝手な利活用があり、Cookieを何かに置き換えるだけではユーザーの信頼に応えられません。
Cookieと直接関連しないマーケティング施策についても、それがユーザーの反感につながるものであるなら、今のうちにプライバシーに配慮した形へ見直しを進めたいところです。
4.2. サードパーティCookie以外の集客方法を見つける必要がある
現実的に直ちに取り組むべき課題として、マーケターは3rd Party Cookieに依存しない集客方法を見つける必要があります。ポストCookie時代にも有効だと注目されている集客策には以下が挙げられます。
【ポストCookie時代にも機能する集客方法】
集客策 | 概要 |
1st Party データの取得と活用 | 自社サイトやSNSなどでユーザーの同意を得ながら個人情報を集め、集客施策に利用する。(例:お得なクーポンをお知らせするメルマガやプッシュ通知の配信許可を得る) |
コンテキストターゲティング | サイト内の文章や画像に基づき、文脈に沿った広告が自動的に表示される仕組み。個人情報ではなくサイトの内容によって広告配信されるのが特徴。 |
共通IDソリューション | ユーザーに3rd Party Cookieの代わりに機能するIDを付与する仕組み。 |
上記のうち、特に話題を集めているのが次の共通IDソリューションです。
4.3. 共通IDソリューションの活用がポイントになる
共通IDソリューションでは、ユーザーに3rd Party Cookieの代わりとなるIDを付与することで、これまでに近い形でパーソナライズされた広告を配信できます。
付与されるIDには、メールアドレスなどの固定の情報から付与する「確定ID」と、IPアドレスのような変動する情報から付与する「推定ID」の2種類がありますが、精度が高いといわれているのは前者です。
ただし、IDによるターゲティングはそのIDの利用に参加している事業者のサイト間でしか行えないなど、完全に3rd Party Cookieの代替として機能するわけではありません。今のうちから、どの程度実務に影響が出るのか予測を進めておく必要があります。
また、Cookie規制の背景を考慮すると、ID付与に際して本人同意を得るなどユーザーのプライバシーへの配慮は欠かさずに行うことが大切です。
4.4. ユーザーのプライバシーを尊重したデータ分析が必要になる
ポストCookie時代には、データの収集はもちろん、分析にあたってもユーザーのプライバシーを尊重することが求められます。具体的な対策として注目されているのが、データクリーンルームです。
データクリーンルームとは、Amazonなどのプラットフォーマーが提供する、個人のプライバシーに配慮しつつ顧客や消費者のデータ分析ができるクラウド環境を指します。ユーザーデータは個人特定ができない形で取り扱われるため、ポストCookie時代にも安心して利用できます。
データクリーンルームの仕組みや活用メリットの詳細は、以下の記事で解説しております。
>>データクリーンルームとは?その仕組みや活用メリット、CDPとの違いについて
4.5. リテールメディアの活用を検討する
その他、リテールメディアの活用もポストCookie時代に検討を進めたい施策です。リテールメディアとは、小売企業が所有する顧客情報と媒体を用いて広告を出す仕組みを指します。小売企業は広告主から広告料を獲得でき、広告主は小売企業の持つ1st Party データをもとにマーケティングを行える(Cookieを必要としない)のが特徴です。
詳細は、以下の記事で解説しております。
>>リテールメディアが注目される理由とは?求められる背景や活用事例を紹介
5. まとめ
この記事では、ポストCookie時代とは何か、前提となるCookie規制の背景や影響、マーケターが取るべき対策やポイントまでご紹介しました。
消費者のプライバシーを保護すべきだとする気運は世界中で高まっており、今後もCookieの規制が緩まることはないと予想されます。マーケターとして継続的に活躍を続けるためには、いち早く新時代に向けた対策を進めておくことが大切です。