データドリブンなマーケティングの実現には広告効果の分析が必要ですが、その際に利用できる指標が「ROAS」です。
この記事では、ROASの意味や計算式、ROIやCPAとの違い、メリットやデメリット、改善のポイントなどをご紹介します。
1. ROASとは
ROASとは「ある広告が、かけた広告費に対してどの程度の売上を生み出しているのか」をパーセントで算出する指標です。Return On Advertising Spendの略称であり、日本語では広告費用対効果と訳されます。読み方は「ロアス」です。
広告費と売上が同額の状態を100%として、広告の費用対効果が良くなるほど数値が大きくなります。
ROASは一目で広告の費用対効果を把握できる点で優れています。マーケティングにおいては、ROASが高い広告にはさらなる予算をつぎ込み、低い広告は一度停止して改善をするなど、施策の舵取りに活用されています。
2. ROIやCPAとの違い
ROASと同じ「投資金額とその成果」に関するマーケティング指標にはROIやCPAがありますが、それぞれ定義も取り扱いも異なります。具体的な違いを見ていきましょう。
2.1. ROIとの違い
ROI(Return On Investment:投資収益率、投資利益率)とは「投資金額に対してどれだけの利益を得られたか」をパーセントで算出する指標です。ROASと同じく数値が高いほど優れており、「ROI = 利益 ÷ 投資金額 × 100%」の計算式で求められます。
ROIの計算式) ROI = 利益 ÷ 投資金額 × 100% |
例えば、50万円の投資で100万円の利益があれば、ROIは200%です。
ROASとROIは似ていますが、成果の対象とされる要素に違いがあります。ROASは算出に売上を用いますが、ROIは利益から計算されます。投資の実態を把握する観点ではROIのほうが優れた指標です。
ただし、ROIは経費を算出する必要がある関係上、ROASよりも計算が複雑です。単純な広告同士の比較ではROASが採用される機会も多く、目的に応じた使い分けが肝要です。
2.2. CPAとの違い
CPA(Cost Per Acquisition, Cost Per Action:顧客獲得単価)とは、「コンバージョン1件あたりに費やした費用」を表す指標です。ROASやROIとは反対に数値が低いほど優れており、「CPA(円)=広告費用額÷コンバージョン数」で計算されます。
CPAの計算式) CPA(円)=広告費用額÷コンバージョン数 |
例えば、資料請求をコンバージョンと定め、50万円の広告費で500件の請求を実現した場合、請求1件当たりの費用すなわちCPAは1,000円です。
CPAとROASは、コンバージョンを成果としている点に違いがあります。CPAは資料請求などの金銭的な成果以外についても広告効果を算出できます。
ROAS、ROI、CPAの違いを表にまとめてみました。
【ROAS、ROI、CPAの違い】
用語 | 特徴 |
ROAS:広告費用対効果 (Return On Advertising Spend) |
|
ROI:投資収益率、投資利益率 (Return On Investment) |
|
CPA:顧客獲得単価 (Cost Per Acquisition, Cost Per Action) |
|
3者はどれか一つが優れているのではなく、目的に応じた使い分けが求められます。
3. ROASの計算方法
ROASの計算式は「広告経由で生まれた売上÷広告費×100%」です。前述の通り数値が大きいほど優れており、例えば50万円の広告費で100万円の売上ならROASは200%、同じく150万円の売上ならROASは300%となります。
ROASの計算式) ROAS=広告経由で生まれた売上÷広告費×100% |
ROASは単純に売上の数値を広告費で割れば良いため、ROIよりも計算が簡単です。ROIの場合は、先に各種経費を集計し、売上から引いて利益を算出しなければいけません。
4. ROASのメリット・デメリット
ROIやCPAとの違いを踏まえたうえで、ここではROASのメリットとデメリットをご紹介します。
4.1. メリット
ROASのメリットには、計算が簡単でコストがかかりにくいことと、広告媒体同士の費用対効果の比較が手軽にできることの2点が挙げられます。
ROASは、売上を広告費で単純に割る形でパーセンテージを算出します。経費の把握や利益の計算が不要であり、当該広告の売上と広告費のデータさえあればすぐに算出できます。追加のコストをかけることなく広告の費用対効果を把握しやすいのが魅力です。
また、広告媒体ごとの費用対効果についても数値の大きさを見比べるだけで比較ができます。注力すべき広告媒体の把握も簡単で、将来の売上予測にも重宝します。
4.2. デメリット
ROASのデメリットは、計算に売上の原価や経費が考慮されておらず、「ROASが大きい=利益が出ている」とは限らないことです。
例えば、価格が1万円で各種原価+経費が3,000円の商品を売る場合、広告費に70万円を費やし、100個販売できた(100万円の売上があり、30万円の原価&経費がかかった)とすると、ROASは「100万円÷70万円×100%=142.85%」となります。140%を超えて魅力的に見えますが、実際の利益は「100万円(売上)−30万円(原価&経費)−70万円(広告費)=0円」です。
ROASは広告媒体同士の費用対効果の比較には有用ですが、ROIなどの利益を確認できる指標と適切に組み合わせて用いる必要があります。
5. ROASを改善する方法やポイント
ROASは広告の費用対効果の判定に用いるだけでなく、取り組み次第で改善を目指すこともできます。その方法とポイントを見ていきましょう。
5.1. CVRを高める
CVR(Conversion Rate:コンバージョン率)とは、ユーザーがどれだけの割合でコンバージョンまで辿り着いているかを表す指標です。「Webページの訪問者のうちコンバージョンした人の割合」を指してよく使われますが、ここでは「広告をクリックしたユーザーのうちコンバージョンした人の割合」を指します。
クリック時に費用が発生する広告の場合、ユーザーのCVRが高くなるほど費用当たりの売上は増加し、あわせてROASも上昇します。CVRはROASを高める際に最初に確認したい指標です。
5.2. ターゲットを再設定する
広告のコンバージョンが不調な時には、自社製品の購買を期待できる層に適切にアプローチできていないことがよくあります。確認したCVRが想定を下回っていた場合は、ターゲットの再設定を行いましょう。
ターゲットの再設定には、現在のROASが活用できます。ほかと比べてROASが高い広告の想定ターゲット、コンバージョンしたユーザーの属性、広告表示の時間帯、地域などを分析し、自社が狙うべき層を明確にしましょう。
5.3. キーワードやテキストを見直す
ターゲットと共に見直しを進めたいのが、広告出稿を設定している検索キーワードです。検索キーワードに連動して表示される広告の場合、想定ターゲットが調べるであろう言葉を丁寧に推測し、設定する必要があります。
また、コンバージョン以前の広告のクリック率自体が低い場合、訴求文を変更するだけでROASが改善するケースもあります。
5.4. 掲載している媒体を見直す
ターゲットやキーワードの再設定後は、あらためて各広告のROASを測定し、掲載媒体の厳選も進めましょう。同じ広告を複数の媒体に出稿し、ROASを見比べれば、自社に適した媒体が見つかります。
例えば「A社のリスティング広告ではROASが低いが、B社では十分にROASが確保できている」となれば、予算をB社に注力でき、当該広告のROASをさらに高められます。
5.5. キャンペーンの目的を再検討する
ここまでの対策を行ってもROASが改善できない場合、広告キャンペーンの目的、すなわちコンバージョンの再検討が必要かもしれません。
商品やサービスの中には、広告からの即時の購買が期待しにくいものもあります。例えば、車や家のような高額な品物を、広告を見てその場で購入する人は少ないはず。そのようなサービスの広告のゴールには「資料請求」や「お問い合わせ」が適しており、効果の測定指標もCPAが良いでしょう。
ROASは、ROIやCPAなどの関連指標との使い分けが重要な指標です。ROASの改善のみに固執するのではなく、多角的な視点で活用を進めることが求められます。
6. ビジネス指標の向上にはBrazeの活用がおすすめ
多角的な視点でビジネス指標の使い分けや向上を実現するためには、広告データの的確な集計と分析が求められます。その手段として、Brazeの活用をぜひご検討ください。
Brazeは、マーケターが直感的な操作で広告キャンペーンを実施できるよう設計された、顧客エンゲージメント支援ツールです。TikTokやSnapchatなどの人気の広告ネットワークと連携し、広告配信の最適化をお手伝いします。
例えば、最大限のROIを期待できるターゲットを絞り込んで広告を表示したり、コンバージョン済みの顧客への広告表示を速やかに停止して出稿費用を削減したり、広告に関する「こうできたら良いのに」の実現全般をサポートします。まずは、現在の広告に関するお悩みを以下のフォームよりお聞かせください。
7. まとめ
ROASとは、売上と広告費から広告の費用対効果を算出する指標です。計算の手軽さに強みを持ちますが、原価や経費を考慮しないため、実利の把握には向いていません。
投資が生み出す利益を把握できるROIや、広告の金銭以外のコンバージョンも測定できるCPAとの使い分けをしながら、費用対効果を的確に把握し、データドリブンなマーケティングを実現しましょう。