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マーケティングオートメーション(MA)とカスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP )の違い・実現可能なこととは
マーケティングというと、マーケティングオートメーション(MA)が思い浮かぶ方も多いと思いますが、「カスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP )」というツールはご存知でしょうか?
よりカスタマイズされた、顧客ごとのパーソナライズデータを活用できるのが、カスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP )です。
この記事では、マーケティングオートメーション(MA)とカスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP )の違いや、それぞれの導入メリット、カスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP )で実現できることについて解説していきます。
1. MAとカスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)の違い
まずはじめに、マーケティングオートメーション(MA)とカスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)の違いについて解説します。
1.1 マーケティングオートメーション(MA)とは
マーケティングオートメーション(MA)は、「Marketing Automation」の略で、マーケティング施策を可視化・自動化するツールや概念のことを指します。マーケティング視点のツールであり、いかに施策を効率的に実行するかを考えて作られています。
1.2 カスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)とは
カスタマーエンゲージメント(Customer Engagement)とは、企業と顧客の信頼関係を指します。カスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)は、顧客を中心としたツールで、顧客の行動やリアルタイムな状況を把握し、心地よいと思えるコミュニケーションを実行するための基盤として機能します。また、マーケターの生産性を高める機能も有しています。
2. MAとCEPが求められている背景とは
コロナ禍を経験したことで、インターネットでの情報収集や購買行動も増加し、顧客の購買行動は大きく変わってきています。それにより、営業手法にも変化が起きています。なお、コロナ収束の兆しが見えている中でオフラインでの購買行動は戻りつつあります。
オンライン、オフラインの両方での環境の変化により、顧客の購買プロセスで取ることのできる選択肢が増えている状況です。そのため、オンラインとオフラインの顧客の行動を統合する事が必要となってきており、1つの購買に限らずに様々な状況下のコミュニケーションが求められています。
3. MAとCEPで共通している機能
マーケティングオートメーション(MA)とカスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)のそれぞれに共通して使える機能を解説します。
3.1 顧客情報の一元管理
マーケティングオートメーション(MA)とカスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)には、さまざまなルートから企業や商品を知った、購入してくれた顧客の情報をまとめて管理する機能があります。
例えば、名刺の交換をした相手やHPから資料請求を行った際のフォームに入力する情報、セミナーの参加状況、店舗のPOSでの購入履歴などが管理できます。
そのため、オンラインで資料請求をしたあとにオフラインで購入に繋がったなどといった分析が可能になります。
3.2 コミュニケーションシナリオの作成
コミュニケーションシナリオとは、顧客が商品やサービスに興味や関心を持つところから、関心を深め、比較検討し、購入に至るまでの流れのことを言います。
例えば、資料請求した顧客に対して、メルマガを配信し、7通目でセミナーの案内を送り、参加した人に対して対面でセールスをかけるなどの方法があります。
3.3 メールの一斉配信・セグメント配信
資料請求などにより得られた顧客のメールアドレスを対象にして、メールの一斉送信をする機能があります。この機能により、企業側からのアクションが取れることに意味があります。配信は全員に一斉に送ることも、性別や年代などの属性や行動履歴に応じてセグメントを分けて配信することも可能です。
4. その他のマーケティングオートメーションツール(MA)の主な機能
前述の機能の他にも、マーケティングオートメーション(MA)にはさまざまな機能が組み込まれています。見込み顧客へアプローチして、購買意欲を高めてもらう機能としては、Webページやフォームの作成、アクセス分析、セミナー管理、プッシュ通知などがあります。
また、購買意欲が高い顧客を見つけるための機能としては顧客の行動を分析して点数をつけるスコアリングやアプローチ管理、アクセス企業リスト機能などがあります。その他にもセールスへのスムーズな移行のため、SFA連携を備えたMAツールもあります。
5. カスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)でしか実現できないこと
次にマーケティングオートメーションツール(MA)にはない、カスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)だけで活用できる機能を解説します。
5.1 リアルタイムなトリガー配信
顧客はWeb上で、問い合わせや購買以外にもさまざまな行動を取ります。
例えば、カートのかごに商品を入れたが、購入せずにやめてしまう「カゴ落ち」、初回購入後、サイトへのアクセスをしないなどがあります。
BtoBでは主なアクションはトリガーメールになりますが、BtoCの場合は専用アプリのプッシュ通知もトリガーの役割を果たします。
5.2 配信頻度・配信チャネルの最適化
商品やサービスの購入という行動一つを取っても、購入頻度や購入金額といった違いが生まれてきます。メールやコンテンツの情報提供を行っても、興味を持ってもらえる度合いが変わります。
そのため、熱量や関心の高い顧客や購入頻度の高さなどによってチャネルを分けて、チャネルごとにメール配信などを行うと効率よく購買に繋がることになります。
5.3 外部データを活用した高度なパーソナライズ
顧客のアクションは商品やサービス、企業と直接関わる以外にも間接的なデータが存在します。例えば、実店舗での購入履歴、対面販売の情報、デジタル広告のクリックなどです。これらの情報を踏まえて個人の趣味趣向、興味の度合いなどをパーソナライズすることができます。
5.4 一貫性のあるコミュニケーション
さまざまなチャネルが存在するマーケティングの上で、どのチャネルに対しても一貫したコミュニケーションを取ることのできる機能があります。
前述のリアルタイムトリガーやパーソナライズ情報などを活用することで有効なコミュニケーションを実現しています。
6. マーケティングオートメーションツール(MA)の導入メリット・デメリット
6.1 メリット
マーケティングオートメーションツール(MA)を導入することで、まずは顧客リストの一元化や情報の分析が可能になります。顧客の悩みや興味、関心を分析することはアプローチ方法の検討だけでなく、新しい商品の開発などビジネス全般に必要な情報です。
次に、ヒューマンエラーの減少に繋がることです。メールアドレスや電話番号、セミナーの参加状況などの管理を人の手で行うと煩雑になってしまい、少なからずミスが発生します。ツールでまとめて管理することにより、ヒューマンエラーが減ります。
顧客情報の一元管理により、見込み顧客を把握し、状況に合わせたアプローチが可能です。また、マーケティング施策にかかる工数・費用の削減にも繋がります。
6.2 デメリット
ツールを導入するため、避けて通れないのが導入の手間、費用や運用のコストがかかることです。これらは必須の費用となってしまうため、費用対効果を考え、ツールを使うことによる販売数増やコスト削減を比べて、比較する必要があります。
また、ツールを使うための人材やノウハウが必要になることも挙げられます。自社にマーケティング専任の人材がいれば、ツール事業者のセミナーや説明会に参加するだけですぐに活用できるかもしれません。しかし、詳しい人材がいない場合は外部人材を選定して委託したり、ツールの販売事業者に運用の代行を依頼したりする必要があります。
7. カスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)を導入するメリット
次にカスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)を導入することで得られるメリットを解説します。
7.1 行動変容に即応したビジネスへの変革
求められている背景でも触れましたが、コロナ禍によって消費者の行動は変わってきました。巣ごもり需要などによってオンラインで商品やサービスを調べ、購入まで行うことが増えたため、このような行動の変化をカスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)でキャッチすることで適切なプロモーションを打つなどの施策を実施できます。
7.2 非効率な業務負荷を解消でき、生産性の向上も測れる
事業の拡大によっては、業務負担が大きくなる部門などが発生し、その負担がボトルネックになって生産性が悪くなってしまうことがあります。カスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)を導入すれば、非効率的な業務の負担が解消され、生産性が向上します。
7.3 ビジネス環境の変化に即応でき、システムの柔軟性が高い
従来のシステムでは柔軟性がなく、顧客や市場の変化に対応しきれないものが多くありました。カスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)であれば、ビジネスの変化にすぐに対応できるROIと柔軟性の高いシステムが実現できます。
8. カスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)の導入事例を紹介
カスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)の導入を検討しても、自社にも有効なツールかどうかがわからないと不安に感じるかもしれません。
ここでは、カスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)であるBrazeを導入した企業がどのような課題をもって導入を決め、どのような効果があったのかを紹介します。
事例1:誰もがパパッと仮説検証、上位有料プランへの移行率約5倍を実現したNewsPicksの戦術
NewsPicks様は新規会員の獲得、有料会員移行数の増加と課金後の解約減少のため、さまざまな部署でBrazeを活用しています。
有料プランには月額プランと年割プランの2つがあり、年割プランの方が解約率が低い傾向にあります。そこにBrazeを活用して、月額プランユーザーに向けて更新日の約10日前に年割プランをアナウンスしたところ、年割プランに移行してくれるユーザーが3~5倍に増加しました。
Braze導入前まではユーザーごとに更新タイミングが異なるため、通知が困難で、数ヶ月に一度全体へ一斉にアプリ内ダイアログを出すだけだったところ、導入後はユーザーの契約開始のデータを連携するだけで自動的に設定できるようになったことで実現しました。
事例2:トリビューが、新規獲得中心から顧客に寄り添うCRM開始でリピーター数が半年で280%増加
株式会社トリビューはアプリやWebから外科・皮膚科・審美歯科の分野で美容医療を提供しているクリニックの口コミや症例写真の閲覧やクリニックや美容医療施術探しや予約をする上でのサポートサービスを展開している企業です。医療における法的なレギュレーションがあり、従来の手法として、SNS広告や検索エンジン広告、SEO対策が主流です。
トリビューでは顧客とのきっかけとしてSNS広告を使用していますが、顧客との継続的なコミュニケーションを取るため、CRMを重視しています。しかし、これまでの体制では顧客に合わせたコミュニケーションを取っていくことが難しいと感じ、Braze導入を決めました。
Brazeを導入すると決めた理由は3つあり、マルチチャネルを一元管理できること、シナリオに合わせたコミュニケーション施策の打ちやすさ、リアルタイムのアクションをトリガーにしたコミュニケーションをとれることが挙げられます。これらの理由からBrazeを利用すると、リピーターの数は280%増加しました。
事例3:Braze導入3ヶ月で昨対MAU1.5倍!@cosmeの多様な入口をアプリで繋ぐアイスタイルの挑戦
クチコミ・情報メディアやEC、実店舗など、コスメ・美容に関わる様々なサービスを展開する@cosme。ECサイトや実店舗、フラッグシップショップなどオンラインやオフラインを問わず活躍する日本最大のコスメ・美容プラットフォームを運営しています。
様々なシーンでお客様とブランドや商品を繋げることで、お客様がコスメや美容についての情報を得る機会を多く提供すること、その最大化をしていきたいと考えられています。
また、お客様ごとに利用しているサービス範囲が異なり、それらを繋ぐハブとしての役割はアプリが担っています。
Brazeについてはセグメントはもちろん、早期にシナリオを組んだ施策を始めたいというニーズを満たしてくれると感じて導入に至りました。Brazeで「今、お客様がどういった行動をしているのか」という情報を受けて、アプリで商品情報を見ているタイミングでプッシュすることで、より効果的なアプローチが進んでいます。
その結果、導入から3ヶ月でアプリMAU1.5倍、DL数3倍、その上ページへの送客も従来の約2倍という実績が出ています。
9. ツール選定のポイントや注意点
カスタマーエンゲージメントプラットフォーム(CEP)ツールを選ぶうえでの注意点やポイントを解説します。
9.1 自社のシステムとの連携は可能か
まずは自社で現在使用しているシステムとの連携ができるのかどうかを確認する必要があります。連携ができない場合、既存顧客や既存施策のデータを有効活用することができない、もしくは有効活用するまでに手入力などのコストが発生してしまうことになります。
なお、ツールの公式サイトに連携できるツール情報内に自社で使用しているツールがない場合でも、記載していないだけという可能性がありますので、直接担当者に確認するとよいでしょう。
9.2 求めている機能が備わっているか
導入を検討した段階でツールを入れて解決したい課題は明確になっているのではないでしょうか。まずはその課題を解決できる機能のあるツールかどうかをチェックする必要があります。
顧客へのリアルタイムトリガー配信で課題が解決する、外部連携機能で課題が解決するなど状況に合わせて必要な機能が変わります。
9.3 導入した際の効果を理解しておく
導入した際の効果はビジネスモデルや顧客の状況によって変わってしまう部分ではありますが、導入事例や担当者からの説明でどの程度期待した効果が出るかを理解しておくとよいでしょう。
導入した後に思っていたよりも、うまくいかなかったということになってしまいかねません。